いまの時期では、小学校受験の本番11月に向けて、全身紺色の服装に身を包んだ親子を目にすることが特に多い東京都の受験激戦区である港区。港区の苛烈な教育事情について公的データをもとに、FPオフィスライフ&キャリアデザイン代表の山内真由美氏が解説します。
壮絶な受験戦争は幼稚園選びから始まる…「東京港区」の苛烈な教育事情 (※写真はイメージです/PIXTA)

幼稚園から始まる「港区」の受験戦争

港区は全国でも有数の受験戦争が苛烈な地区です。港区における受験の詳細を調査するため、区のHPより「年齢別人口」をみてみます。生まれ月等で該当年齢ではない方もいますが、便宜上、暦の年齢でみることにします。中学校1年生にあたる年齢13歳の人口は「1,991名」です。

 

一方、「港区立幼稚園・小・中学校園児・児童・生徒数一覧表」より、港区立中学校の1年生に在籍する生徒数は「722名」(ともに令和4年9月1日時点)であることから、公立中学校の在籍率は約36.3%、私立等の中学校には「約6割以上」の生徒が在籍しています。公立小学校6年生の卒業後の進路調査からみた、港区の私立中学校等への進学割合は39.5%と「約4割」になっています。その差は「小学校から継続して私立」に在籍している児童であると推定されます。

 

続いて小学校1年生にあたる年齢である7歳の状況も確認してみます。人口は「2,622名」、港区立小学校1年の児童数は「1,866名」(どちらも令和4年9月1日時点)ですから、公立小学校在籍率は約71.2%となり、残る約3割は私立等の小学校に在籍していると想定され、港区では「小学校受験」という選択をするご家庭も少なくなく、幼稚園からお受験が始まるといっても過言ではないでしょう。

港区内の特徴的なエリアの受験状況

次に港区のなかでも特徴的なエリアにおける受験状況を確認していきます。

 

子育て世代が集中する「港南」

まずは子育て世代が集中している「港南」の特徴は公立小学校の児童数の多さです。エリア内の公立小学校である「港南小学校」および「芝浦小学校」の2校は都内有数のマンモス校で、東京都公立小学校の学生数1位は1,362名の港南小学校、2位が1,279名の芝浦小学校でした。なお、令和4年度に芝浦小学校から芝浜小学校が分校となっています。

※令和3年度「公立学校統計調査報告書」(東京都教育委員会)第3表:最大最小規模在学者数より

 

地区合計の在籍児童数2,641名を6学年で割ると、1学年平均は約440名。一方、通学区域の公立中学校は「港南中学校」1校で、こちらの在籍学生数は342名、3学年で割ると、1学年あたり114名となります。小学校は1学年平均440名が、中学校は1学年平均114名となり、概算で公立進学率は約26%、7割以上の公立小学生が私立等に進学するという中学受験の激戦地区といえるでしょう。

 

港区の中心地「白金エリア」

次に「白金エリア」をみていきます。「高輪台小」「白金小学校」を擁する地域における公立中学は「高松中学校」1校です。小学校児童数は「高輪台小」708名、「白金小学校」716名の合計1,424名、1学年平均は約240名。

 

一方、公立中学「高松中」の生徒数は282人、1学年平均は約90名ですので、公立中進学率は概算で約37.5%となります。港南と比較すると地域の公立中への進学率は10%ほど高くなっています。「枝光会附属幼稚園」など、有名私立幼稚園も近隣に複数あり、すでに小学校受験されたご家庭も多くいる地域です。

 

また「港区立高松中学校」のHPでは歴代の高校進学情報が掲載されており、日比谷、開成、筑波大学附属駒場、青山、慶應義塾女子といった有名進学高校への進学実績があり、公立中学からでも難関高校が目指せる地域といえます。さらに港区内公立中学全体の学力の高さを示すデータがあります。

※進路報告:港区立高松中学校より

 

港区の公立中学3年生は学力テストにおいて国語・数学・英語ともに全国および東京都の平均正答率を上回っています。地元公立中学にも優秀な受験仲間が存在しており、切磋琢磨することも可能な地域であり、地元を選ぶことも有力な選択肢のひとつです。

※「平成31年度全国学力・学習状況調査の結果」より