付加年金制度を使ったが、それでも足りない…
付加保険料を払うことで年金受給額を増やすことはできますが、それでも保険料をすべて納めても、
月額7万3,000円弱。夫婦2人分で14万6,000円弱です。これでは、まだまだ老後の生活は厳しいといえるでしょう。
さて、自営業者等には定年がありませんので、身体の続く限り働いて、年金の受給をできるだけ遅らせようと考える方もいるでしょう(自営業者である私自身も、同じ考えを持っています)。
現行の年金制度では、75歳まで支給開始を遅らせる(=繰り下げる)ことができます。
この場合、年金受給額はいくらになるのでしょうか? 老齢年金は、原則の支給開始年齢である65歳から1ヵ月支給を遅らせるごとに0.7%増額されるため、75歳まで遅らせると年金支給額が84%(=0.7%×120か月)増額されます。
このように、国民年金保険料や付加保険料をすべて納め、さらに年金の支給開始を75歳まで遅らせた場合、支給額は、
月額13万4000円弱。夫婦2人分では月額26万8000円弱です。ようやく、上述した「家計調査」の65歳以上の夫婦のみの無職世帯における平均支出額をクリアしました。しかし、これでも「ゆとりある老後生活」には厳しそうです。
そして、この話でさらに考えておかないといけないのは、
・そもそも、75歳まで働くことができるか分からない
ということです。
とはいえ国民年金だけでは、頑張ってもここまでが限界です。やはり国民年金以外の方法による「自助努力」が必要ではないかと考えます。
国民年金以外で老後資金を用意する方法
それでは、どのような方法で老後資金を確保すればいいのでしょうか。
自営業者等は、事業が軌道に乗っている時期も、うまくいかない時期もあるでしょう。
これは私自身、身をもって感じています。これを踏まえたうえで、自営業者等が老後資金確保のため大事なことは、
・そして、事業が軌道に乗っている時期に、可能な限り老後資金を確保すること
ではないでしょうか。
事業が軌道に乗っている時は、一般に所得税も高率かつ多額になります。そのため、老後資金を積立てるときは、掛金に税制上の優遇措置のある制度を活用して「節税メリット」を最大限活かしながら老後資金を確保することが合理的と考えます。
そして、次の3つの制度は自営業者等が加入でき、かつ掛金が全額所得控除の対象になります。
2.国民年金基金
3.小規模企業共済
1の「iDeCo」と2の「国民年金基金」は、合計で月額68,000円まで積立できます。付加年金に加入している場合は国民年金基金と併用できないため、iDeCoのみ月額67,000円まで積立できます(付加保険料月額400円分の枠が減るが、iDeCoの掛金月額は1,000円単位のため)。最近は、掛金の所得控除のみならず運用益も非課税で、かつ受給時にも税制優遇のあるiDeCoが注目されている印象もありますが、国民年金基金は亡くなるまで一生涯受取れる「終身年金」が基本で、長生きリスクに対応できるメリットがあります。
また、3の「小規模企業共済」は、これらとは別枠で積立できます。月額1,000円から70,000円までの範囲(500円刻み)で積立でき、廃業などの場合に共済金を一時金や年金形式で受け取れます。また、老後資金の確保という点ではお勧めできませんが、事業が苦しいときなどは資金の貸付けを受けることもできます。
上述したとおり、自営業者が老後資金を確保するためには、国民年金以外の「自助努力」が必要ではないかと考えます。事業が軌道に乗っている時期には、これらの制度を上手に活用して「節税メリット」を活かしながら老後資金を確保しましょう。
辰田光司
サンモールFP事務所
代表