(※画像はイメージです/PIXTA)

建設前または建設途中段階からローン支払いをスタートすることができる「先行販売ローン」。中国では一般的な販売形態ですが、いまこの“支払いボイコット”を巡り中国経済全体の危機に発展しているようです。その背景と今後の展開について詳しくみていきましょう。

中国不動産業界では一般的な“先行販売ローン”

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住宅の“先行販売ローン”という販売形態をご存じでしょうか? 先行販売ローンは、物件の完成・引き渡しに先んじて組まれる住宅ローンのこと。日本では建物が完成してから住宅ローンを組むことが一般的ですが、先行販売ローンでは建設前または建設途中段階からローン支払いをスタートすることができます。

 

この先行販売ローン、日本人には馴染みが薄いため違和感を持つ人も多いかもしれませんが、実は中国では主流の販売形態。国内住宅販売額の実に85%以上が先行販売ローンによるものだといわれています(2019年時点)。

 

このように中国では非常に一般的な先行販売ローンですが、ここ最近、多くの住宅購入者たちによる先行販売ローンの支払いボイコットが発生していることが大きな問題になっています。

支払いボイコットの原因は「売り手」

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“ローン支払いのボイコット”と聞くと、一見、借り手である支払い者側に非があるようにも思えます。しかし、ボイコットの責任を重く問われているのは物件を販売した不動産会社側です。

 

というのも、ボイコットが発生している建設プロジェクトは、当初の計画から大幅な遅延が発生したり、建設途中でストップしてしまったりしているものが多数で、支払者側が「大事な物件が本当に完成するのだろうか?」と不安を募らせている状況があるからです。

 

物件が完成するかどうかすら不確かな状況で、ローンだけ支払うように言われても納得できない……というのも心情的に無理もないことかもしれません。

 

このような事態を招いた原因に、中国の不動産業界内で常態化している強引な資金調達手法が挙げられます。

 

中国の不動産業界は開発資金における自己資本金の割合が他国に比べて際立って低いという特徴があり、銀行からの借り入れや社債の発行、さらには今回問題となっている先行販売ローンの前受金から調達した資金を開発資金に充てることが一般的でした。

 

しかし、近年の不動産価格の高騰の影響で融資が受けにくくなり、資金繰りが急速に悪化。その結果が、2021年に大きな話題となった不動産開発大手・恒大集団の経営危機であり、その他の不動産企業の建設遅延にもつながっているわけです。

損失額は「最大3500億ドル」規模

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今回の支払いボイコット騒動は当初はごく一部の購入者から始まったものでしたが、いまや中国全土に急速に広がっており、2022年7月下旬時点ではボイコットが発生している建設プロジェクトは300件以上ともみられています。

 

また、一連のボイコット運動で大きな影響を被るのは銀行です。最大3500億ドル規模の住宅ローンが未払いになるリスクに加え、物件が未完成のため担保を処分して債権回収することも難しい状況に陥っているからです。

 

さらなる懸念として、銀行が不良債権を抱えることで不動産会社への融資がますます厳しくなることも考えられるでしょう。不動産会社のキャッシュフローが枯渇していけば、より多くのプロジェクトの中断にもつながり、ローン支払いをボイコットする購入者はますます増えていくことが予想されます。

 

そのような状況に陥ってしまえば不動産業界、ひいては中国経済全体を取り巻く負のスパイラルは加速の一途をたどってしまうかもしれません。

中国経済の危機…政府による“救済措置”の可能性も

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このような危機的な状況下では、不動産会社の倒産が相次ぐことは避けられないように思えますが、そうした事態を防ぐために、中国政府は是が非でも救済策を講じなければならない理由があります。

 

なぜなら、不動産産業は中国GDPの約30%を占める最大の産業であり、不動産産業への致命的ダメージは中国経済全体にも大きな影響を及ぼすからです。

 

そのため、ローン支払いボイコットを原因とした開発頓挫に対しても、自治体主導で救済基金が立ち上げられたり、銀行監視機関から「不動産デベロッパーへの融資を増やすように」と各銀行に通達を行ったりと打開策に躍起になっています。

 

もし、こうした対策が実を結ばなかった場合、中国政府は負債を抱えた不動産企業を国有化するなどのドラスティックな手段を取る可能性すら考えられます。そうした場合、住宅購入者や債権者の権利がどのように処理されるかは不明ですが、住宅購入者・債権者側がなんらかの損失を被る可能性は高いといえるでしょう。

 

現在の市況を考えると、中国不動産への投資を考える方はそう多くはいないかもしれません。仮に価格暴落後の回収を狙っているような場合でも、投資家の方々は、交渉相手が民間企業から中国政府になってしまう可能性が今後あることも念頭に置いておく必要がありそうです。

 

本記事は、富裕層のためのウェブマガジン「賢者の投資術」(Powerd by OPEN HOUSE)にて公開されたコラムを、GGO編集部にて再編集したものです。