仮想通貨の話題でよく耳にする「DEX」の内容についてご存じですか? 本記事ではDEXについて、その内容をわかりやすく解説します。今後、仮想通貨におけるDEXについて知識を深めたい方はぜひ参考にしてください。
仮想通貨の「DEX」についてわかりやすく解説【図解あり】 (※画像はイメージです/PIXTA)

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DEXとは、ブロックチェーンの技術を用いた新しい仮想通貨取引所をいいます。仮想通貨取引所といっても、コインチェックやビットフライヤーなどとは別物です。本記事ではDEXとは何か、DEXを使うメリットやデメリットについてご説明していきます。

1. 仮想通貨のDEXとは?
1.1.「DEX」とは日本語で「分散型取引所」という意味
1.2. DEXとCEX(従来型取引所)の違いとは?
1.3. DEXの仕組みを支える「スマートコントラクト」
1.4. DEXとDeFiの違い|DEXはDeFiの一種
2. DEXは大きく2種類に分類できる
2.1. リレイヤーが管理する「オーダーブック形式」
2.2. オーダーブックを介さない「AMM形式」
3. DEXで取引するメリット4つ
3.1. 取引所の破綻やハッキングリスクに左右されない
3.2. 本人確認が不要なので個人情報の漏洩リスクが低い
3.3. 手数料が安く取引の手続きが簡単
3.4. 取り扱っている銘柄が多い
4. DEXで取引するデメリット4つ
4.1. 金融庁の認可がないため安全性の保証がない
4.2. サポートがないため初心者が利用するにはハードルが高い
4.3. 流動性が低く処理速度が遅い
4.4. フロントランニングを仕掛けられる可能性がある
5. DEXに関するよくある質問
Q1. DEXはスマホでも利用可能?
Q2. DEXとウォレットの接続方法とは?
Q3. おすすめのDEXは「PancakeSwap(パンケーキスワップ)」
6. まとめ

1. 仮想通貨のDEXとは?

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

仮想通貨のDEXとは簡単にいえば「ブロックチェーン技術を用いた新しい取引所」のことを指します。まずはDEXとは何かや、市場規模などを詳しく見ていきましょう。

 

1.1.「DEX」とは日本語で「分散型取引所」という意味

DEXとは「Decentralized Exchange(分散型取引所)」の略称です。通常の取引所と違い、運営する企業や団体はありません。DeFiと呼ばれる金融システムの一種で、ブロックチェーン技術を上手く活用して投資家どうしで直接取引されます。

 

数年前までDEXはまだ課題の多い取引所だという世論が多数を占めており、盛り上がりに欠けていましたが、2020年のなかごろから注目を浴び始め、2021年には取引総高1兆ドルを突破しました。現在ではDeFi市場の半分を占めており、フィンテックの視点からも注目されている技術の1つとなっています。

 

1.2. DEXとCEX(従来型取引所)の違いとは?

[図解1]DEX・CEXにおける取引の特徴

 

DEXとCEXの大きな違いは以下の7つです。

 

  1. 運営母体の有無
  2. 仮想通貨の管理方法
  3. 手数料の決まり方
  4. 運営方針の決まり方
  5. 流動性の確保の仕方
  6. 利用者サポート提供の有無
  7. 法令保護

 

1.2.1. 運営母体の有無

CEXにはサービスを運営する企業や団体が必ずあります。コインチェックやビットフライヤーといった取引所はCEXの一種です。一方、DEXには運営母体にあたる組織はなく、民主的なのが特徴です。

 

1.2.2. 仮想通貨の管理方法

CEXでは自分のウォレットではなく、取引所の口座で仮想通貨を管理します。これはユーザーの秘密鍵や情報を預かり、ウォレットを企業が管理している状態です。

 

DEXでは秘密鍵や情報を使い、ウォレットで直接ユーザーが仮想通貨を管理します。個人で管理するのは大変ですが、秘密鍵さえ知られなければハッキングで資金が流出する危険性もありません。

 

1.2.3. 手数料の決まり方

CEXの取引手数料は運営している企業が決めます。しかしDEXでは手数料は需給のバランスによって決まるので、一定ではありません。DEXの手数料は民主的で平等ですが、需給のバランスが崩れれば手数料も大きく変わってしまいます。

 

1.2.4. 運営方針の決まり方

CEXの運営方針は企業の幹部や株主などが決めます。一方、DEXは運営方針を投票によって決めます。「DEXはみんなで所有する」という考え方があり多数決で決まるので、誰かが独断で決めるということはありません。

 

1.2.5. 流動性の確保の仕方

CEXは売りと買いをマッチングさせ、流動性(市場に出回る数の多さを表すもの)を確保するのに対し、DEXではユーザーが仮想通貨を提供することによって流動性を確保しています。

 

流動性を提供したユーザーには報酬が与えられるため、この報酬のためにユーザーは仮想通貨を用いて流動性を提供します。そのため人口の少ないDEXでは、流動性が低く注文価格と約定価格が大きく開いてしまうこともあります。

 

1.2.6. 利用者サポート提供の有無

CEXは顧客サポートの窓口を設置し、ユーザーの疑問や障害を解決してくれます。パスワードを忘れても本人認証ができれば再設定も可能です。

 

しかしDEXは民主的であるがゆえに、このようなサポート窓口はありません。掲示板やチャットを通してユーザー間で解決するのが一般的です。パスワードを忘れたら再設定なども困難でしょう。

 

1.2.7. ユーザー保護や上場の難しさ

CEXが国内で業務をするためには国の認証が必要です。そのため運営母体はユーザー保護に努め、法令を遵守する義務を負います。上場に関しても、厳しい基準が設けられ悪質なプロジェクトが上場できないような仕組みになっています。

 

DEXにはユーザーを保護する義務を負う運営母体が存在しません。上場もCEXよりも簡単なので、最初からお金を騙し取る目的などで悪質なプロジェクトが上場してしまう可能性があります。

 

1.3. DEXの仕組みを支える「スマートコントラクト」

そもそも中央に管理する母体がいないのに、どうやって取引が成立するのでしょうか?

 

DEXでは「スマートコントラクト」という機能によって取引を成立させています。DEXは当初流動性に問題を抱え、なかなか取引が成立しませんでした。しかしスマートコントラクトを利用し、ユーザーが「流動性という環境を提供する」ことで問題を解決しました。

 

その流動性を提供する場所を「Pool(プール)」と呼びます。ユーザーはプールにイーサリアムなどの仮想通貨を預け、見返りとして利息を受け取ることが可能です。これを「流動性マイニング」と呼ぶこともあります。

 

1.4. DEXとDeFiの違い|DEXはDeFiの一種

DeFiとは「Decentralized Finance(分散型金融)」の略です。中央に管理する母体がなく、ユーザーどうしで直接取引を行える金融のシステムやアプリのことをいいます。

 

逆に非分散型金融の代表には銀行や証券会社、保険会社などがあります。預金や投資、保険加入といったことをしたければ、必ずこれらの機関を利用しなければなりません。しかし、DeFiではそのような機関が存在せず、スマートコントラクトを利用した仲介が行われます。

2. DEXは大きく2種類に分類できる

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

DEXは売買形式によって大きく分けると2種類あります。

 

  1. オーダーブック形式(取引所形式)
  2. AMM形式(販売所形式)

 

それぞれどんな違いがあるのかを解説していきます。

 

2.1. リレイヤーが管理する「オーダーブック形式」

オーダーブック形式は売買のマッチングそのものはブロックチェーンの外で行い、決済をブロックチェーン内で行う方式です。

 

メイカーはスマートコントラクトを通してオーダーブック上に売り注文を出し、取引に応じるテイカーがオーダーブックを確認して対応する買い注文を出します。それぞれがマッチングしたらブロックチェーン上で決済し、取引が終わります。

 

オーダーブックはブロックチェーン上にないため、オーダーブックの管理はリレイヤーと呼ばれる第三者が行います。オーダーブック形式の取引インターフェースはCEXのものに引けを取らないほど使いやすくなっているのも特徴です。

 

2.2. オーダーブックを介さない「AMM形式」

AMM形式はAMM(自動マーケットメイカー)というプロトコルを用いたDEXで、「流動性プール」を利用した取引の方法が特徴的です。

 

トークンの取引を行いたいユーザーは、流動性プールに自身が保有するトークンを提供することで流動性プール内のトークンを引き出せます。こうすることで、オーダーブックを介さずともユーザー間でトークンの交換ができるようになっています。

 

手数料はプール内にあるトークンの供給量によって決まります。それらは全額、流動性を提供する投資家たちに還元され、運営事業に充てられることはありません。

3. DEXで取引するメリット4つ

(※画像はイメージです/PIXTA)
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ここまで主にDEXの仕組みについて見てきましたので、次は具体的なメリットについて見ていきましょう。DEXで取引をする具体的なメリットは以下の4つです。

 

  1. 取引所の破綻やハッキングリスクに左右されない
  2. 本人確認が不要なので個人情報の漏洩リスクが低い
  3. 手数料が安く取引の手続きが簡単
  4. 取り扱っている銘柄が多い

 

3.1. 取引所の破綻やハッキングリスクに左右されない

DEXには取引所の破綻自体が存在せず、ハッキングのリスクもCEXに比べて極めて低いです。取引所の破綻や、ハッキングの事件は過去にも実際に起こっています。

 

2014年にはアメリカの大手仮想通貨取引所マウントゴックスが経営破綻しています。この際におよそ75万BTCが消え去りました。国内でも2018年に、大手仮想通貨取引所コインチェックがハッキングされ、およそ580億円分の仮想通貨ネムが流出する被害がありました。

 

これらは仮想通貨の問題ではなく取引所の問題です。DEXはブロックチェーンで動くシステムなので経営破綻は起き得ないうえ、ブロックチェーンをハッキングすることは現実的に不可能です。

 

3.2. 本人確認が不要なので個人情報の漏洩リスクが低い

CEXは法律の制限により、顧客に身分証やマイナンバーなどを提出させる義務があります。確かに投資家保護になりますが、取引所の管理がずさんであれば個人情報が漏洩してしまう可能性もあります。

 

DEXでは直接ユーザーがウォレットで管理をするため、口座を作る必要がないため個人情報も不要です

 

仮想通貨の取引記録はブロックチェーン上に永久に残り続けるため、その点では公然性があるといえますが、それらと個人情報は無関係です。そのため、DEXを利用して仮想通貨取引をしただけでは個人情報は漏れません。

 

3.3. 手数料が安く取引の手続きが簡単

CEXは管理者が事業として仮想通貨取引所を運営しています。そのため、サーバー代や人件費、自社の利益や事務所の賃料などさまざまなコストを回収しなければなりません。

 

DEXにはそのような管理者が存在せず、サーバーに相当するものもユーザーどうしが繋がり合う完全分散型なので、回収しなければならないコストもほとんどないのです。その結果、手数料はCEXに比べ極めて安く済みます。

 

またCEXは取引所内に口座を持たなければならない分、自分のウォレットと取引所の口座の間で資金の行き来が発生する場合があります。しかしDEXでは自分のウォレットで直接取引が行えるため、煩わしい手続きもありません。

 

3.4. 取り扱っている銘柄が多い

DEXはCEXに比べ取引できる銘柄数が圧倒的に多いです。

 

国内最大手CEXのコインチェックの取扱銘柄数は17銘柄であるのに対し、大手DEX「PancakeSwap(パンケーキスワップ)」の取扱銘柄数は3,500種類以上に及びます。

 

DEXの銘柄数が多い理由は誰でも通貨を上場できるためです。将来値上がりが期待できる優良なトークンもある一方で、ほとんど価値のないトークンもあります。なかには最初から投資家を騙す目的の詐欺コインもあるので注意しましょう。

 

初心者が軽い気持ちで草コインに手を出すのはおすすめできませんが、選択肢が多いのはメリットです。

4. DEXで取引するデメリット4つ

(※画像はイメージです/PIXTA)
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DEXを利用した取引にはデメリットもあります。

 

  1. 金融庁の認可がないため安全性の保証がない
  2. サポートがないため初心者が利用するにはハードルが高い
  3. 流動性が低く処理速度が遅い
  4. フロントランニングを仕掛けられる可能性がある

 

4.1. 金融庁の認可がないため安全性の保証がない

現状のDEXは金融庁に認可されていません。だからこそ個人情報を提出する義務がなく、匿名性が高いといえますが、認可されていないものを利用する場合はすべて自己責任になります。

 

DEXには管理者がいないので民主的です。しかし責任を負う母体もないので万が一のときは自力解決が必要です。そして、ウォレットやブロックチェーンのハッキングは困難ですが、自分のPCやスマホをハッキングされ、保存しておいた秘密鍵がバレるリスクはあります。

 

トラブルを自分で解決するのが難しいならDEXを使うのは困難でしょう。

 

4.2. サポートがないため初心者が利用するにはハードルが高い

DEXには管理母体が存在しないため、相談窓口やサポートセンターはありません。取引はすべてブロックチェーン上のスマートコントラクトで行われます。ホワイトペーパーを見れば、ある程度自己解決ができる場合もありますが、詳細な解説や回答は載っていないことがほとんどです。

 

どうしても疑問が払拭されない場合はコミュニティの掲示板やチャットで答えてくれる可能性もあります。しかし、絶対正しい方法を教えてくれるとも限りません。ブロックチェーンやセキュリティに対する一定の理解がなければ利用するのは難しく、初心者にはハードルが高いといえます。

 

4.3. 流動性が低く処理速度が遅い

DEXには仲介業者がおらずCEXのような運営母体がないので、流動性を確保するために誰かが介入することはありません。流動性や取引価格は、コインの需要や流動性を提供してくれるユーザーの人数などで決まります。

 

さらに、DEXはスマートコントラクトを利用して取引をするため、ブロックチェーンの処理スピードに影響を受けます。そのため、希望通りの価格で約定しなかったり、価格によっては取引が成立しなかったりすることも起こり得るのです。

 

4.4. フロントランニングを仕掛けられる可能性がある

フロントランニングとは、証券会社やその職員などの顧客の注文を知り得る立場にある者が、顧客の注文の前に自身の注文を割り込ませ、顧客の注文よりも有利な価格で有価証券の売買を成立させる行為をいいます。

 

簡単にいえば、「お客さんの注文を見られる人が、絶対に勝てるように自分や会社のために株や債券を売買する行為」です。一般的な有価証券では法律で禁止されています。

 

CEXでフロントランニングを仕掛けるとなれば、運営会社の職員でないとまず不可能です。DEXは透明性が高いがゆえに、まったく無関係の第三者がフロントランニングを仕掛けることも容易なうえ、法律による規制も難しいです。

5. DEXに関するよくある質問

(※画像はイメージです/PIXTA)
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最後に、DEXに関してよくある質問3つに回答します。

 

Q1. DEXはスマホでも利用可能?

多くのDEXはスマホでも利用することができます。しかしDEXのAndroidやiPhoneの専用アプリがあるわけではなく、基本的にブラウザを使うことになります。仮想通貨を管理しているウォレットのアプリがあればそこから取引も可能です。

 

大まかな取引の流れは、以下の通りです。

 

  1. CEXでイーサリアムやビットコインなどの仮想通貨を購入
  2. 購入した仮想通貨をDEXと同期したウェブウォレットに移動
  3. ウェブウォレットに移動した仮想通貨でDEXのトークンを購入

 

Q2. DEXとウォレットの接続方法とは?

DEXとウォレットを接続する方法は簡単です。ここでは、後述するDEX「PancakeSwap(パンケーキスワップ)」と国内でも人気のウェブウォレット「MetaMask(メタマスク)」の接続方法を紹介します。

 

  1. パンケーキスワップの公式サイトにアクセス
  2. サイト内にある「ウォレットを接続」をクリック
  3. 複数のウェブウォレットが表示されるので、「メタマスク」をクリック
  4. 該当のアカウントを選択して「接続」をクリック

 

以上で接続完了です。あとは好きなコインを選んで購入できます。なお、公式サイトにアクセスする際はDEXを装ったフィッシング詐欺なども多いため、URLをしっかりご確認ください。

 

Q3. おすすめのDEXは「PancakeSwap(パンケーキスワップ)」

最後に、おすすめのDEX「PancakeSwap(パンケーキスワップ)」を紹介します。

 

パンケーキスワップはDEXのなかでも1位2位を争うほどの大手DEXです。プールに資金を預けると独自トークン「CAKE」をもらえ、ここから利息も得られます。パンケーキスワップはバイナンスのブロックチェーン「BSCネットワーク」上で運営されているため、ウェブウォレットにネットワークを追加する必要があります。

 

メタマスクの場合、「設定→ネットワーク追加」をクリックし以下の情報を入力しましょう。

 

■概要

  • ネットワーク名:BSC Mainnet
  • 新規 RPC URL:https://bsc-dataseed.binance.org/
  • チェーンID:56
  • 通貨記号(オプション):BNB
  • ブロックエクスプローラーのURL(オプション):https://bscscan.com

6. まとめ

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

DEXとはDeFiの一種で、運営母体のいない仮想通貨取引所のことをいいます。そのためハッキングのリスクが低く、取引手数料も安いのが魅力です。

 

しかし責任を持つ会社も存在しないので、サポート窓口がないことや詐欺コインが上場されている可能性があるなどの問題点もあり、初心者が使う難易度は高いです。

 

だからといってDEXが危険なものというわけではありません。DEXはすべて自己責任ですが、その分自由な取引所です。法定通貨に対して仮想通貨が新時代のお金だとすれば、DEXは新時代の取引所といえます。