中国で仮想通貨が全面禁止になった理由や、今後の仮想通貨業界への影響などをわかりやすく解説します。中国の仮想通貨市場の動向を知りたい人はぜひ参考にしてください。
中国で仮想通貨が全面禁止になった理由…影響や再開の可能性は? (※画像はイメージです/PIXTA)

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現在、仮想通貨やブロックチェーンを利用した技術が全世界へ広く普及しつつあり、各国の政府は仮想通貨に関連する法整備を進めています。しかし、その流れに逆らうように中国は2021年に仮想通貨関連活動を全面禁止し、市場に大きな影響を与えました。

 

本記事では中国が仮想通貨を全面禁止にした理由と、中国政府の目的や規制の背景などを解説していきます。

1. 仮想通貨の取引が中国で全面禁止に|いつから?規制の内容は?
1.1. 2021年9月24日中国人民銀行が通知を出したことにより全面禁止
1.2. 仮想通貨取引の全面禁止|規制内容を解説
2. なぜ?中国で仮想通貨の禁止規制が通知された5つの理由
2.1. 仮想通貨は法定通貨と同じ地位ではないとの見方
2.2. デジタル人民元(CBDC)を発行するため
2.3. 国が仮想通貨を管理できず資本流出の危険性があるため
2.4. 中国の投資家が暴落により大損しないようにするため
2.5. マネーロンダリングなど秩序を乱すと考えているから
3. 中国の仮想通貨の取引禁止までの流れ
2013年:中国国内の銀行が仮想通貨の取引を禁止
2017年:ICOを禁止し、取引所は海外移転や閉鎖に追い込まれる
2019年:ビットコインマイニングが有害な業界のリスト入り
2020年:国内における仮想通貨取引所の活動の取り締まりを強化
2021年:マイニング・仮想通貨取引の全面禁止を順次発表
4. 中国での仮想通貨の取引禁止|世界への影響は?
5. 中国で仮想通貨の取引は今後どうなる?再開する可能性は?
5.1. 仮想通貨に関する取り締まりは強化されている
5.2. 現在もマイニングが継続していることも
5.3. 中国関連の仮想通貨銘柄はある?
6. まとめ

1. 仮想通貨の取引が中国で全面禁止に|いつから?規制の内容は?

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

中国では2021年から仮想通貨の取引が全面禁止となりました。なぜこのようなことになったのでしょうか? まずは規制された時期、規制の範囲や内容を確認します。

 

1.1. 2021年9月24日中国人民銀行が通知を出したことにより全面禁止

2021年9月24日に中国の中央銀行である「中国人民銀行」は仮想通貨に関連する取引を全面的に禁止にすると発表しました。これにより仮想通貨の主要通貨であるビットコインは一時9%も価格が下落しました。

 

また、仮想通貨関連の活動も「違法な経済活動」と位置づけられ、場合によっては刑事罰もありえます。海外の取引所が中国国内でサービスを提供することも禁止され、この時期から当局による取り締まりも強化されました。

 

1.2. 仮想通貨取引の全面禁止|規制内容を解説

ここでは規制範囲や規制内容を押さえていきましょう。

 

規制範囲は「仮想通貨が関わるものすべて」といっても差し支えないほど多岐にわたり、規制の内容も全面禁止と厳しいものになっています。

 

1.2.1. 仮想通貨で禁止される取引の範囲

先ほども説明したように禁止される範囲は「仮想通貨関連すべて」といえます。具体的には以下のような行為が禁止されています。

 

  1. 仮想通貨の流通・使用
  2. 法定通貨との両替
  3. 仮想通貨の情報提供
  4. 仮想通貨の金融商品及び金融関連商品の取引
  5. 仮想通貨のマイニング(取引データを承認する作業)
  6. 国外の取引所によるインターネットを通じた仮想通貨サービスの提供

 

取引以外にも情報提供までもが刑事罰の対象です。さらに国内だけでなく、海外の取引所によるサービス提供まで禁止であり、抜け道も完全に封鎖する形になっています。

 

1.2.2. 仮想通貨のマイニングも規制対象

もっとも影響が大きいのは「仮想通貨のマイニング禁止」です。中国はかつてビットコインマイニングの中心地であり、2019年にはビットコインマイニングの世界シェアの75%を中国が占めていました。

 

その後、中国のマイニングは規制により一時ゼロとなり、ビットコインマイニングのシェアはアメリカが首位となりました。しかし、2019年の9月から中国のマイニングが突如として復活し、2022年8月時点では世界シェアの20%前後で推移しています。

 

1.2.3. 禁止行為が発覚すると刑事責任に問われる

中国では仮想通貨関連の事件の摘発に力を入れています。

 

2021年12月にはラグプル詐欺を働き、複数の投資家から5,000万元(約10億円)をだまし取ったとして8人が逮捕されました。

※ ラグプル詐欺…暗号通貨詐欺の一種で、あるチームがプロジェクトのトークンを売り上げる前に資金を持ち逃げし、投資家に無価値な資産を残すこと

 

また、2021年6月にも仮想通貨を利用して資金洗浄をしたとして1,100人あまりが逮捕されています。いまは詐欺や資金洗浄といった悪質なものが摘発されていますが、今後悪質性の低いものも摘発されていく可能性があります。

2. なぜ?中国で仮想通貨の禁止規制が通知された5つの理由

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

本項では、仮想通貨が規制された理由を5つ見ていきましょう。

 

  1. 仮想通貨は法定通貨と同じ地位ではないとの見方
  2. デジタル人民元(CBDC)を発行するため
  3. 国が仮想通貨を管理できず資本流出の危険性があるため
  4. 中国の投資家が暴落により大損しないようにするため
  5. マネーロンダリングなど秩序を乱すと考えているから

 

2.1. 仮想通貨は法定通貨と同じ地位ではないとの見方

中国は仮想通貨を「法定通貨と同等の地位を有しておらず、通貨として使用させることはできない」としています。仮想通貨は権力に管理されず、参加者全員で承認し合う民主的な通貨です。中国政府は「国家管理経済」のビジョンを掲げており、管理できない仮想通貨はそのビジョンに反します。

 

だからこそ仮想通貨は中国の管理下にある法定通貨、人民元と同等の地位を有しておらず、仮想通貨を通貨として流通させるわけにはいかないのです。

 

2.2. デジタル人民元(CBDC)を発行するため

中国では2022年からデジタル人民元(CBDC)が発行されており、国内28都市で総取引高は6,200億元にのぼっています。CBDCの狙いは主に2つあるといわれています。

 

1つはデジタル通貨の先駆者となり、「人民元の地位を向上させること」です。米ドルはデジタル通貨を発行しておらず、先にCBDCが世界中で使われるようになればデジタルの世界では人民元が基軸通貨になる可能性があります。

 

もう1つが「取引や資産を中国政府が管理可能にすること」です。政府はCBDCが「いつ・どこで・どのように」利用されたかを監視する権限を有しています。印刷物よりデジタル通貨のほうが管理しやすいでしょう。仮想通貨はデジタル通貨という点でCBDCと競合する可能性があり、規制する必要がありました

 

2.3. 国が仮想通貨を管理できず資本流出の危険性があるため

中国では国内の資本が海外に流出しないように金融に対する厳格な制限をしています。

 

しかし、ビットコインなどの仮想通貨は中国政府が管理できないため、以前は制限をすり抜けることができました。管理されている人民元よりも匿名性の高い仮想通貨を国民が使用してしまう可能性があり、中国の資本統制ができなくなることを警戒したといわれています。

 

もし仮想通貨が普及すれば、人民元の価値を維持することは難しいでしょう。

 

2.4. 中国の投資家が暴落により大損しないようにするため

投資対象として見たときのビットコインは、株や外国為替などに比べて資産が変動しやすく、暴落による損失のリスクが高いです。だからこそ価格が大きく上がる可能性もあり、そこに期待する投資家も数多くいます。

 

中国政府には、国内で仮想通貨投資が流行してしまうと、巨額の損失を抱えた投資家が急増する懸念がありました。また、中国では仮想通貨関連の詐欺が横行しており、投資家が被害を受けないようにする目的もありました。金融統制だけでなく投資家保護の一面もあります

 

2.5. マネーロンダリングなど秩序を乱すと考えているから

中国政府は仮想通貨を「秩序を乱すもの」と考えているようです。先ほども紹介したとおり、2021年6月に仮想通貨を利用し資金洗浄をしたとして1,100人あまりが逮捕されました。公安省の発表によると170を超える犯罪集団を摘発したそうです。

 

確かに、仮想通貨は匿名性から資金洗浄などの犯罪に使われてしまうデメリットがあります。中国政府はこのデメリットを重く受け止め、仮想通貨を強く規制したのだと考えられます。

3. 中国の仮想通貨の取引禁止までの流れ

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

ここでは、中国が仮想通貨を完全規制するまでの流れを見ていきましょう。

 

  • 2013年:中国国内の銀行が仮想通貨の取引を行うことを禁止
  • 2017年:ICOを禁止し、取引所は海外移転や閉鎖に追い込まれる
  • 2019年:ビットコインマイニングが有害な業界のリスト入り
  • 2020年:国内における仮想通貨取引所の活動の取り締まりを強化
  • 2021年:マイニング・仮想通貨取引の全面禁止を順次発表

 

詳しい内容は下記で説明していきます。

 

2013年:中国国内の銀行が仮想通貨の取引を禁止

この年の12月5日に中国人民銀行をはじめとする複数の金融機関は共同で、銀行がビットコイン関連の取引を行うことを禁止する声明を出しました。そのなかでビットコインを特に警戒すべき金融商品「特別仮想コモディティ」とみなしています。

 

この時点では個人の仮想通貨取引は禁止されていませんでしたが、ビットコインは資金洗浄の手段となる可能性を指摘しており、取引する場合はリスクに注意するように勧告が出されています。

 

また、同月16日に中国人民銀行は決済会社に対してビットコイン取引所との取引をやめるように命令し、当時中国最大手の取引所「BTCチャイナ」は人民元の預け入れを停止しました。

 

2017年:ICOを禁止し、取引所は海外移転や閉鎖に追い込まれる

2017年9月に中国はICO(企業などがコインを発行し資金を調達する方法)を禁止しました。また、中国人民銀行はICOを「認可されていない違法な資金調達」とし、ICOで集めた資金を返すように命令しました。

 

同行は「ICOは事業失敗のリスクが高く、中国の経済を脅かす」と指摘しており、銀行以外の金融機関や決済会社もトークンで資金調達を行うサービスの提供を規制しています。また、当局は仮想通貨取引所に投資家が資金を引き上げられる仕組みを導入して段階的に事業を縮小し、自主的な廃業をするように命令を出しています。

 

これらの影響で国内の取引所は海外に移転し、なかには閉鎖を余儀なくされた取引所もありました。

 

2019年:ビットコインマイニングが有害な業界のリスト入り

2019年4月、国家発展改革委員会によってビットコインマイニングは非常に有害とされる業界のリストに入ります

 

当時ビットコインマイニングの世界シェアは、電気代が安価な中国が多くを占めていました。また、マイニング機器であるグラフィックボード(GPU)の製造のほとんどは中国で行われており、委員会の決定は世界的なパニックを引き起こしました。

 

最終的にビットコインマイニングはこのリストから除外されました。この事態はビットコインマイニングが中国で将来的に規制される予測の材料として十分です。

 

2020年:国内における仮想通貨取引所の活動の取り締まりを強化

ここから仮想通貨取引所への締め付けを本格化していきます。

 

2020年、当局は仮想通貨取引所の規制を強化し、中国国内での仮想通貨取引所の運営は事実上できなくなりました。さらに海外に拠点を置く100以上の仮想通貨取引所へのインターネットからのアクセスをブロックするという発表をしました。

 

しかしこのときはまだ、海外に拠点を置きブロッキングを回避して運営している仮想通貨取引所もあります。

 

2021年:マイニング・仮想通貨取引の全面禁止を順次発表

ついにこの年、中国はマイニング・仮想通貨取引の全面禁止を発表しました。2021年5月に国務院がマイニングや仮想通貨取引を規制する政策を強化する声明を発表しました

 

これを受けた地方政府は、環境負荷の高さを理由にビットコインマイニングを根絶やしにする施策を行います。ビットコインの採掘を行っていた企業と個人はマイニング施設の閉鎖や移転を余儀なくされました。当時ビットコインマイニングのシェアの半分は中国が担っていたため、ビットコインは大打撃を受けました。

 

そして、2021年9月、規制の波はビットコインにとどまらず仮想通貨全体に及び、仮想通貨関連取引は中国で全面禁止されることになります。

4. 中国での仮想通貨の取引禁止|世界への影響は?

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

中国の仮想通貨全面禁止の報道を受けて「仮想通貨は終わりだ!」と悲観的な意見を見かけることも少なくありません。実際に世界的な影響はどの程度のものなのでしょうか?

 

結論からいえば「世界的影響は少ない」といえます。大きな理由は2つ挙げられます。

 

1つは「マイニング量は変わっていない点」です。ビットコインマイニング禁止後もハッシュレート(1秒あたりの採掘速度)は概ね右肩上がりになっています。これはマイナーたちが中国から拠点を移し、マイニングを続けている証拠です。

 

もう1つが「仮想通貨の価格が戻った点」です。中国の規制を受け、ビットコインは大きく値下がりしましたが、2022年8月現在、1BTCはおよそ300万円。一時期の過熱感もなく、相場は落ち着いています。

 

この2点以外にも、DeFiやNFTなどブロックチェーンを利用した技術は日々進歩を続け、生活に溶け込みつつあります。これは世間が仮想通貨へ期待をしている表れといえるでしょう。

5. 中国で仮想通貨の取引は今後どうなる?再開する可能性は?

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

中国では仮想通貨に関する取り締まりは強化され続けており、取引が再開される可能性は低いでしょう。しかし、ビットコインマイニングのシェアは上がり続けており、水面下での活動は続けられています。

 

5.1. 仮想通貨に関する取り締まりは強化されている

中国の仮想通貨関連の取り締まりは、より一層強化されています。

 

2021年の10月には数百件の違法マイニングファームが摘発されています。なかには国営企業や大学、政府機関といった公的な機関も無断で使用されていました。発表によると使用電力は1日数十万kWにものぼるとのこと。

 

この他にも先ほど紹介したような、仮想通貨関連の詐欺や仮想通貨を利用した資金洗浄が当局によって何件も摘発されています。

 

世界各地で仮想通貨を利用した違法行為が起きており、各国は対応や取り締まりに追われていますが、仮想通貨そのものを絶対的に違法と位置づけている国は中国を含め9ヵ国のみです。

 

5.2. 現在もマイニングが継続していることも

一時ゼロとなった中国でのビットコイン採掘ですが、現在では1位のアメリカに次ぐ世界シェア2位に返り咲いています。これはなぜでしょうか?

 

まず、一時ゼロとなった理由を理解する必要があります。これは中国でマイニングがなくなったわけではなく、取り締まりを逃れた中小のマイニング業者がVPNなどを利用し海外を経由してマイニングを続けていたに過ぎません

 

大手の取り締まりが落ち着いた現在では、そのような中小事業者が海外のサーバーを介さずに中国から直接アクセスをし、採掘を行っているので中国からの採掘が増えているのです。

 

5.3. 中国関連の仮想通貨銘柄はある?

中国関連の仮想通貨には「クアンタム」があります。中国発の仮想通貨であり開発したパトリック・ダイ氏は中国のIT企業アリババの元社員であり、仮想通貨研究の第一人者です。

 

中国発の仮想通貨はこの他に「バイトム」や「トロン」などが挙げられます。これらの仮想通貨は現在海外に拠点を移して活動を続けており、当局の手が及ばないようにしています。

6. まとめ

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

中国では2013年から仮想通貨の規制が始まりました。規制は徐々に強くなり、ついに2021年に仮想通貨関連の取引や事業が全面禁止となってしまいました。

 

この仮想通貨規制には国家統制や治安維持、またデジタル人民元の普及など中国政府のさまざまな狙いがあります。しかし、ビットコインのマイニングはいまだに続いており、現在では世界シェアの2位を誇る採掘量です。

 

中央集権的な法定通貨に対して、仮想通貨は民主的な通貨です。細部まで政府統制が取れている中国でさえ、仮想通貨を完全に規制できていないのは仮想通貨の民主性を証明しているといえます。