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ビットコイン相場の分析や予測では、しばしば「ドミナンス」という言葉が登場します。
株式市場や外国為替市場では使われない言葉なので、ビットコイン投資で初めて知ったという人も多いのではないでしょうか。
ドミナンスが何を表しているのか、またドミナンスを投資にどのように活用すればよいかを知ると、ビットコイン以外の銘柄への投資にも役立てることができます。
1. ビットコイン(BTC)のドミナンスの意味や目的を解説
まずはドミナンスの概要を解説します。
ドミナンスは市場全体を俯瞰で把握できる数値なので、分散投資や中長期的な投資をする際に有用です。
1.1. ドミナンスとはシェア占有率
ドミナンスとは、任意の銘柄の時価総額が仮想通貨(暗号資産)全体の時価総額に対してどのくらいの割合を占めているかを示す率のことです。
たとえば、仮想通貨全体の時価総額が1,000億円でビットコインの時価総額が600億円であれば、ビットコインのドミナンスは60%(=600億円÷1,000億円)となります。
なおドミナンスは全体を100%としたときの比率なので、その銘柄だけでなく他の銘柄の値動きによっても変動します。そのため、ビットコインが値上がりしたからといって、ドミナンスも上がるとは限りません。
ビットコイン以外の銘柄(アルトコイン)の時価総額がビットコインと同じくらい増えれば、占有率は変わらないのでドミナンスも一定です。もしアルトコインがビットコイン以上に伸長すれば、ビットコインの価格は上昇してもドミナンスは低下するということもあり得ます。
1.2. ドミナンスは市場分析に役立つ
前述の通り、ドミナンスは必ずしも価格と連動しているわけではありません。
しかしドミナンスの分析は、投資資金の流れを判断する目安になります。
たとえば、値上がりしていてもビットコインのドミナンスに変動がないときは、法定通貨や株式などほかの金融資産から暗号資産全体へ資金流入が起こっているときです。
逆に価格に変動がないにもかかわらずドミナンスが下がっていれば、ビットコインよりもパフォーマンスが期待できる銘柄が他にあり、そちらに資金が流れていることが予想できます。
資金が流入している銘柄は値上がりの見込みがあるため、投資のタイミングや対象を選ぶ材料として使えます。
2.「Dominance」の英語直訳は優越や支配!対義語も紹介
「ドミナンス(Dominance)」の英単語自体には「優越」「支配」といった意味があります。
支配力という意味が転じて、市場の支配力、つまり暗号通貨市場での占有率という意味になったのではないでしょうか。また動詞「dominate」になると「圧勝する」という意味になり、スポーツの記事でよく使われます。
反意語としては「inferiority(劣勢)」、「yielding(従順な)」、遺伝学の分野であれば「Recessive(潜性)」などがあります。
3.「ドミナンス理論」とは?フェーズ別に解説
ドミナンス理論とは、ドミナンスによって相場を予測する手法です。ドミナンスの水準や変動の状況に応じて「50%」「徐々に上昇」「徐々に下落」の3つのフェーズに分け、フェーズごとに相場との関連性を分析します。
3.1. 下落期間:ドミナンスが50%の時期
上記は、2018年5月から翌年9月までのドミナンスを示したチャートです。2018年8月から約半年の間、ドミナンスは50%付近で横ばいとなっています。
以下は同じ時期のビットコインの価格チャートです。
ビットコインは2018年初頭の急落が落ち着き、70万円から90万円の水準で推移していました。2018年12月には40万円を割り込んだものの、半年で価格は回復しています。
3.2. 暴騰期間:ドミナンスが徐々に上昇する時期
次に、ドミナンスが徐々に上昇するフェーズを見てみましょう。以下は2018年11月から2019年12月にかけてのドミナンスチャートです。
2019年4月から同年9月にかけて、ビットコインのドミナンスは約20%上昇し、70%に達しました。同じ時期、価格は3ヵ月間で40万円付近から140万円に上昇しています。
3.3. 暴落時期:ドミナンスが下がる時期
ある程度価格が上がりきると、利益確定の売りが入ります。また他の銘柄で急激な価格の変動があった場合など、他の銘柄の状況がビットコインのドミナンスに影響することもあります。
■2017年3月
2017年3月から6月にかけて、ビットコインのドミナンスは40%に急落しました。
この下落の要因は、イーサリアム価格の急騰です。イーサリアム企業連合(EEA)の発足をきっかけにイーサリアムの価格は20倍以上になりました。
次に大きな下落が発生したのは、2017年12月です。
■2017年12月
ビットコインは当時最高値となる200万円を突破したあと、1ヵ月で100万円まで暴落しました。それに伴い時価総額が減少し、ドミナンスも下がっています。
■2021年1月
3回目は2021年1月で、ドミナンスは4ヵ月間で30%下落しています。NFTへの注目度の高まりからイーサリアムなど関連銘柄が値上がりしたことが要因です。
4. ビットコインのドミナンスの確認方法は2つ
ドミナンスは誰でも簡単に確認できます。代表的な以下の2つのサイトで、確認手順を紹介します。
- CoinMarketCap
- TradingView
4.1. CoinMarketCapのサイトを利用する
まずは「CoinMarketCap」での確認手順です。
CoinMarketCapではトップページ上部の「Dominance」というリンクからドミナンスのチャートを確認できます。
時価総額上位10銘柄のドミナンスが同じチャートに表示されるため、どの銘柄が上昇してどの銘柄が下落しているのかがわかりやすくなっています。11位以下はその他(Others)としてまとめられています。
4.2. TradingViewのチャートを利用する
もう1つの方法は「TradingView」です。
TradingViewでは銘柄を検索するときと同じ手順で検索窓に「BTC.D」と入力すると、ビットコインのドミナンスチャートが表示されます。
なお、画面下部の棒グラフは出来高のグラフです。TradingViewでは、ドミナンスチャートに対して移動平均線やトレンドラインなどのテクニカル分析ツールを使うこともできます。
5. ビットコインのドミナンスを見るときに必要な用語
ドミナンスのチャートを見るときに知っておいたほうがよい知識があります。なかでも基本となるのが「サポートライン」と「アルト・シーズン」です。
5.1. サポートライン(別名:支持線)とは
サポートラインはトレンドの動きを把握するためのトレンドラインの一種で、過去の価格の下値と下値を結んだものです。
このラインより下には下落しないという思惑が働きやすく、価格が反発するため「支持線」とも呼ばれます。
以下は2017年以降の日足ドミナンスチャートです。
50〜60%の水準で何度か反発しているものの、2021年前半に一気に40%まで下落しました。長期的には40%付近がサポートラインとして働いていることが伺えます。
5.2.「アルト・シーズン」と呼ばれる時期について
暗号資産市場においては、ビットコインの価格変動にアルトコインが追随することがあります。
ビットコインが上昇すれば市場全体が強気相場になり、逆のケースもあります。2017年末のバブルと、その後の低迷などは典型といえるでしょう。
しかし、アルトコインの複数の銘柄でビットコイン以上のパフォーマンスが上がり、市場全体のトレンドをアルトコインが主導していくことがあります。このような時期をアルト・シーズンと呼びます。
ただし、アルト・シーズンは比較的短期で終了する傾向があります。2020年にアルトコインが伸長したときも8月ごろには上げ止まりとなり、合わせてビットコインのドミナンスも65%を回復しました。
6. 過去のビットコインのドミナンスの推移は?
2017年から2022年7月まで、ビットコインのドミナンスがどのように変化してきたかを見てみましょう。アルトコインの存在感が増すほどにドミナンスも変動していることがわかります。
6.1. 2017年を起点に暴落傾向に
上記は2016年から2018年初めにかけての週足ドミナンスチャートです。
ビットコインは誕生以来ほぼ市場を独占しており、ドミナンスは95%と高い水準を維持していました。しかし2017年の3月に下落が始まり、2017年末には35%まで下落します。
2017年はICO(新規発行予定の暗号資産の「プレセール」による資金調達)に注目が集まり始めた時期で、他の銘柄にも投資資金が流れた時期でした。
ICOでリリースされた暗号資産のなかには、後に100倍以上に値上がりするものもあり投資が加熱します。さらに後半にはビットコインの急騰に追随する形でアルトコインも大きく価格が上昇したためにビットコインのドミナンスは低下しました。
6.2. 2019年までに回復、2021年前半までは安定
続いて2018年から2021年までのチャートです。
2018年冒頭に暴落したドミナンスは、その後2年間で70%台まで回復します。アルトコインのなかには急落から価格が戻らなかった銘柄も多く、その一方で徐々にではあるものの価格を戻したビットコインがドミナンスを回復することとなりました。
6.3. 2021年後半から急落
ドミナンスが70%台まで上昇したあとは2021年5月ごろまで安定した動きを続けていましたが、2021年6月に再び急落します。
これはDeFi(分散型金融。中央管理者がいない金融システム)やNFT(非代替性トークン。ブロックチェーンによりデータの偽造や複製を不可能にする技術)へ注目が集まったことで、イーサリアムを中心とした関連銘柄に資金が集中して価格が高騰したためです。
そのあとは現在まで引き続き40〜50%を推移しており、落ち着いた状況が続いています。
7. ビットコインのドミナンスが下がるとどうなる?
ビットコインのドミナンスが下がるということは、法定通貨ではなく他のアルトコインへ資金が移動しているということです。そのため、短期的にはビットコイン価格が下落する可能性があります。
ただビットコインは時価総額1位をキープし続けており、ドミナンスも40%付近が底となっています。ある程度下がると反発して資金流入が始まるため、ドミナンスは価格トレンドの転換を測る目安にもなるでしょう。
8. ビットコインのドミナンスが低くなる理由は通貨の魅力が他に移ったため
ドミナンスは相対的なものです。ビットコインのドミナンスが下がるときは必ず、他の銘柄の時価総額が上がっています。
ある銘柄の時価総額が上昇するとき、その主な原因は通貨の投資的な魅力です。
たとえば、上図の2017年1月にドミナンスが低下したのは、DeFiへの注目度の高さが投資家を惹きつけたためと考えられます。
9. ビットコインのドミナンスを確認するときのポイント
ビットコインのドミナンスを見る際の着眼点は2つあります。
- 大きな変動があるか
- アルトコインはどのように動いているか
9.1. 大きな変動があるか
1つ目はドミナンス自体の変動の大きさです。
価格が変動していても、ドミナンスはほとんど変動していないことがあります。これは暗号資産が全体的に上昇傾向、もしくは下落傾向にある状態です。
逆に大きな変動がある場合は、ビットコインからアルトコインへ、もしくはアルトコインからビットコインへ資金が移動している状態です。DeFiなど新しい投資先が注目されているときはそちらに資金も集中しやすく、ビットコインのドミナンス低下につながります。
また短期的に変動していても長期的にはほぼ一定ということもあるので、投資期間などに応じて確認することが重要です。
9.2. アルトコインの変動も確認
次にアルトコインの変動を確認してみましょう。アルトコインのボラティリティ(価格変動)はビットコイン以上に大きく、時価総額順位が1年で入れ替わることも珍しくありません。
また個別銘柄だけでなく、ドミナンスが変動している複数の銘柄でユースケースや技術基盤など共通項が見つかることもあります。
たとえばNFT関連であればイーサリアムだけでなくイーサリアムを基にした銘柄で同じような値動きが見られます。
ドミナンスの上昇は資金の流入を示唆しているので、その共通項に関する情報を集めることで次の投資先を探ることも可能です。
10. ビットコインのドミナンスにはサイクルがある
ビットコインのドミナンスには、上下の変動を繰り返しながら緩やかに下降していく「循環期」と継続的に上昇する「拡大期」が交互に訪れています。
循環期では価格もレンジ相場になることが多く、短期的なトレンドは発生するものの中期的にはほぼ横ばいです。
11. さらに低下する?ビットコインのドミナンスの今後
ドミナンスの変動を長期的に見てみると、現在は「循環期」に該当しています。
これまで同様に40%がサポートラインとして機能した場合、短期的には40〜50%の間で推移するでしょう。もし反発してそのまま拡大期へ移行することになれば価格の上昇が見込まれ、過去の拡大期の傾向から3倍程度の高騰になる可能性もあります。
しかし、サポートラインを下回った場合は一気に下落する危険があり、その場合は2018年1月の35%の水準がターゲットになると考えられます。
12. まとめ
ドミナンスとは、任意の銘柄の時価総額が仮想通貨市場に占める比率です。相場変動の指標となり得ますが、単独で価格予測をすることは困難です。
ドミナンスの動きから投資家心理やほかのアルトコインの状況を確認し、広い視野で情報収集をしていくことが大切です。