仮想通貨(暗号資産)で稼いでいる方のなかには、「できるだけ節税したい」という方も多いはずです。
本記事では、仮想通貨の税金に関する基礎知識や節税対策について解説します。税金に苦手意識がある方に向けて、課税されるタイミングや税金の計算方法についても具体例を交えて解説しているので、気になる方は最後までご覧ください。
1. 仮想通貨の節税対策6選
本章では、仮想通貨の節税方法を6つご紹介します。
- 仮想通貨の運用に必要なコストを経費として計上する
- 含み損となっているアルトコインと相殺する
- 海外FXで生じた損失と相殺する
- 利益獲得せずに保有し続ける
- 法人化や個人事業主として開業する
- ふるさと納税を行う
それぞれ解説します。
1.1. 仮想通貨の運用に必要なコストを経費として計上する
仮想通貨を運用するために必要なコストは経費になるため、利益から差し引いて計算できます。経費とは、事業を行うにあたって必要となる費用のことです。たとえば、以下の費用は経費として申請できる可能性があります。
- 通貨の購入費用
- 取引手数料
- 取引に必要な端末代
- 書籍やセミナーにかかる費用
- 利益の計算ツール代
利益から経費を差し引くことで実質の所得額が減り、その分税金を安くできます。ただし、経費かどうかの判断は難しいため、税務調査の際にはっきりと必要性を説明できるようにしておくことが重要です。
1.2. 含み損となっているアルトコインと相殺する
仮想通貨で得た利益は、含み損となっているアルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨の総称)との相殺が可能です。
たとえば、ビットコインで50万円の利益が確定しているとき、20万円の含み損となっているアルトコインを売却します。その場合、「利益50万円−損失20万円=30万円の利益」となり、含み損と相殺することで課税対象を減らすことができるのです。
ただし、相殺できるのは年内の取引分のみ有効であるため、昨年以前の損失と相殺することはできないので注意しましょう。
1.3. 海外FXで生じた損失と相殺する
仮想通貨の利益は「雑所得」に分類されるため、基本的に他の所得との合算はできません。ただし海外FXで生じた損失であれば、仮想通貨の利益と相殺できます。なぜなら、海外FXは「総合課税」に分類されるからです。
課税種類 |
内容 |
|
国内FX |
分離課税 |
他の所得との合算は不可能 |
海外FX |
総合課税 |
他の雑所得と合算して計算 |
上記の通り、海外FXは他の雑所得と合算して計算ができます。ちなみに計算方法は、前述したアルトコインと相殺する方法と同じです。
1.4. 利益獲得せずに保有し続ける
仮想通貨を売却せず、保有し続けるのも節税対策になります。なぜなら、保有しているだけでは税金がかからないからです。仮想通貨の所得は、あくまで売却して得た利益に対して生じます。そのため、通貨を購入したときより値段が上がっていても、売却して利益を獲得しなければ税金はかかりません。
ただし、売却以外でも税金がかかるケースがあるので、こちらは後ほど解説します。
1.5. 法人化や個人事業主として開業する
法人化や個人事業主として開業することは、節税に大きな効果があります。なぜなら所得税から法人税に変わることで税率が低くなるからです。実際に国税庁は2019年4月以降の法人税は最大で「23.20%※」であると述べています。
※ 参考:国税庁|No.5759 法人税の税率
所得税率は最大で45%であることから、法人化することで税率を20%以上軽減できることがわかります。法人化はハードルが高いと思うかもしれませんが、できるだけ損をしないためにも利益が出ている人は法人化の検討をおすすめします。
1.6. ふるさと納税を行う
直接の節税効果はありませんが、ふるさと納税も利益を無駄にしないための制度です。ふるさと納税とは、自分が住んでいない地域の自治体に寄附を行うことで、翌年の住民税控除や所得税の還付が受けられる制度です。あくまで実質的な税金の前払いであるため、税金が安くなるわけではありません。
しかし、ふるさと納税では納税のお礼として、納税した地域の特産品やサービスを受け取ることができます。自己負担として2,000円が必要ですが、2,000円払って10,000円の特産品を買えたらお得ですよね。
ふるさと納税で日用品や食料品をもらうことで生活費を削減できるため、利益を無駄にしない対策のひとつだといえます。
2. 個人で節税対策を行うためには税金の理解が重要
節税対策を行う前に、そもそも仮想通貨にかかる税金について理解しておく必要があります。本章では、仮想通貨にかかる税金の基本的な知識について詳しく解説します。
2.1. 仮想通貨の利益は課税対象となる
仮想通貨で生じた利益は、課税対象となります。これから仮想通貨投資をする方は、得られた利益は「すべて自由に使える」というわけではないことを理解しましょう。
2.2. 仮想通貨の所得や損失は「雑所得」に分類
仮想通貨の所得や損失は、すべて「雑所得」に分類されます。なかでも「総合課税」に分類されるため、サラリーマンの場合は会社の「給与所得」と合算します※。
※ 自営業の方は「事業所得」
課税される所得金額は、以下の通りです。
課税される所得金額 |
税率 |
控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで |
5% |
0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで |
10% |
97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで |
20% |
427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで |
23% |
636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで |
33% |
1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで |
40% |
2,796,000円 |
40,000,000円 以上 |
45% |
4,796,000円 |
所得によって税率が異なるため、副業で仮想通貨運用を始める方は給与所得との合算について理解が必要です。
2.3. 年間20万円を超える利益獲得で確定申告が必要
仮想通貨で年間20万円を超える利益が確定すると、サラリーマンでも確定申告の必要があります。ただし、サラリーマンは会社が確定申告をしているため、利益が20万円以下であれば確定申告は不要です。
2.4. 仮想通貨の税金計算方法
仮想通貨の税金は、前述した「課税される所得金額」の表を参考に計算します。
ここでは仮想通貨所得のみを想定しましたが、そのほかに給与所得や総合課税に分類される雑所得などの収益があれば合算する必要があります。
3. 仮想通貨所得の計算方法は2種類
仮想通貨にかかる税金の計算方法は、以下の2種類です。
- 総平均法
- 移動平均法
実際に税金を計算する場合、それぞれ国税局で計算用紙をダウンロードできるので活用しましょう。詳しい計算方法について、それぞれ解説します。
3.1. 総平均法:1年間の購入金額すべてを足して計算
総平均法の計算は、以下の手順で行います。
- 年間で仮想通貨を購入した金額をすべて足す
- 購入時の単価を平均する(合計額÷購入数)
- 売却額から平均額(×売却数量)を差し引く
たとえば「1BTCの単価が300万円のときと200万円のときにそれぞれ1BTC購入、350万円のときに1BTCを売却した場合」の計算手順は、以下の通りです。
- 購入額300万円+購入額200万円=合計額500万円
- 合計額500万円÷2BTC=平均額250万円
- 売却額350万円−平均額250万円(×1BTC)=利益100万円
3.2. 移動平均法:仮想通貨を購入するたびに計算
移動平均法の計算は、以下の手順で行います。
- 仮想通貨を購入したときの金額を記録
- 追加で購入した際、前回までの購入額と合算し、単価を割り出す
- 売却額から、2で計算した平均額(×売却数量)を差し引く
たとえば「1BTCの単価が300万円のときと200万円のときにそれぞれ1BTC購入、350万円のときに1BTCを売却した場合」の計算手順は、以下の通りです。
- 購入額300万円
- (300万円+200万円)÷(1BTC+1BTC)=平均額250万円
- 売却額350万円−平均額250万円=利益100万円
3.3.【注意点】原則として総平均法に統一されている
所得の計算方法を2つご紹介しましたが、2022年7月時点では原則として総平均法に統一されています。これは令和元年から規定されており、移動平均法を利用する場合はその評価方法を税務署に提出する必要があります。
4. 仮想通貨で課税されるタイミングは?
仮想通貨で課税されるタイミングは、利益が確定したときだけではありません。そのため、気づかないところで課税対象となることもあるでしょう。そこで本章では、仮想通貨で課税されるタイミングを4パターンご紹介します。
4.1. 仮想通貨で得た利益を円に換金したタイミング
仮想通貨を日本円に換金し、利益を得ると課税対象になります。そもそも「安く買い、高く売る」ことで得られた報酬は利益です。販売店でも仕入れ値50円の商品を100円で売った場合、差額の50円が利益になり、課税対象になります。利益が大きいと課税額も大きくなるため、利益を日本円に換金する際には注意が必要です。
4.2. 他の仮想通貨に交換したタイミング
仮想通貨で利益が出ていなくても、通貨どうしを交換することで課税対象になります。たとえば、ビットコインをイーサリアムに交換した場合、イーサリアムのほうが日本円換算で価格が高ければ収益となり課税されます。そのため、通貨交換も課税対象になることを理解しておきましょう。
4.3. 仮想通貨で商品を購入したタイミング
仮想通貨で商品やサービスなどを購入したタイミングでも、課税対象になることがあります。なぜなら、実質的な利益となるからです。たとえば、1BTCを300万円で購入し、1BTC=350万円のときに1BTC分の決済をしたとします。この場合、300万円で購入した通貨で350万円の決済をしているため、実質50万円の利益になりますよね。
このように、通貨の価格が購入時より高騰しているタイミングで決済をした場合、その差額が課税対象となります。
4.4. マイニングで利益を出したタイミング
マイニングで得た利益も課税対象となります。マイニングとは、新たな取引データを書き込んだブロックをブロックチェーン上に追加する作業のことです。複雑かつ膨大な計算作業となるため、マイニングに協力してくれたユーザーは報酬として仮想通貨がもらえます。
マイニングが課税対象となるケースは以下の2つです。
- マイニング報酬を受け取ったタイミング
- マイニング報酬でもらった仮想通貨を売却したタイミング
売却しなくても、マイニングで報酬をもらったタイミングで課税されることに注意が必要です。
5. 仮想通貨の節税に関するよくある質問
税金はなかなか難しいイメージがあり、実際に正しく納税できるか不安ですよね。そこで、本項では仮想通貨の節税に関するよくある質問にお答えします。
Q1. 海外取引所(海外口座)での運用にも税金はかかる?
海外の取引所で仮想通貨を運用する場合でも、利益が出れば税金がかかります。なぜなら、運用拠点が日本にあるからです。所得税法では、日本を拠点(住所)としている場合、海外を通しての取引も課税対象になることが定められています。つまり、日本に拠点のある私たちは、たとえ海外の取引所であっても利益が出れば納税しなければなりません。
正しく申請しないとペナルティ(延滞税や無申告加算税)が課せられる場合もあるので、利益が出た場合は海外取引所であっても必ず納税しましょう。
Q2. 不動産で仮想通貨の節税を行うことはできる?
不動産を運用する場合、購入した不動産の価値が経年劣化により下がることで、減価償却が発生します。減価償却は、その他の所得と相殺(損益通算)できますが、仮想通貨の利益と相殺して節税することはできません。なぜなら、所得の種類が違うからです。
不動産で得た所得は「不動産所得」に分類されますが、仮想通貨の利益は「雑所得」に分類されます。そのため、不動産での減価償却額は仮想通貨での利益と相殺して節税を行うことはできません。
Q3. 少額であれば仮想通貨の税金を無申告でもばれない?
仮想通貨で得た利益を申告しなかった場合は、少額であってもばれる可能性が高いです。なぜなら、税務署が取引所に税務調査を行うからです。
仮想通貨は、基本的に取引所を介して取引をします。そして取引所には、購入・売却のタイミングや利益が記録されています。利益の無申告はばれる可能性が高いので、ペナルティとならないように少額でも必ず申告しましょう。
6.【2022年】仮想通貨の税制改正に前向きとのニュースも
仮想通貨で得られた収益は「雑所得」として、高額の税金を納付する必要があります。決済や交換でも税金がかかることから、なかなか手を出しにくいのが現状です。そのようななか、岸田総理が仮想通貨の税制改正に前向きとのニュースがありました。
2022年5月、国民民主党代表の玉木雄一郎氏が岸田総理に対して、仮想通貨に関する以下の提案をしました。
- 雑所得ではなく、20%の申告分離課税にすべき
- 実際の利益が発生したときに課税対象にすべき
実際に玉木氏のTwitterでは、岸田首相に対して減税を求める会話をした際、「日本にとってチャンス。やりましょう。」と前向きな返答があったことが述べられています。そのため、今後は仮想通貨の税制が改正されることがあるかもしれません。
7. まとめ
本記事では、仮想通貨の節税について詳しく解説しました。仮想通貨での所得は、最大で45%と税率の高い「雑所得」に分類されるため、所得から多くの税金が引かれてしまいます。
仮想通貨はまだ比較的歴史の浅い分野であるため、法制度が整っていません。そのため計算や分類が難しく、意外なところ(決済、通貨交換、マイニングなど)で課税対象となることもあります。
まずは税金について理解し、本記事でご紹介した方法を参考にできるだけ節税をしましょう。