(※画像はイメージです/PIXTA)

米連邦準備制度理事会(FRB)は1994年11月以来約27年半ぶりとなる、大幅な利上げ(政策金利引き上げ)を決めました。利上げは世界的な流れですが、それに対して日銀は静観をしています。その影響とリスクについて見ていきましょう。

世界と真逆の方針を取る日銀の低金利方針

2022年6月17日、日銀が現在の大規模な金融緩和策を維持していく方針を発表。急激な円安や物価上昇の兆しが見られる中、今後の方針転換を予測する声も上がっていたものの、従来の超低金利方針を依然キープしていく形となりました。

 

各国の中央銀行が世界規模のインフレに対応するため次々と利上げに踏み切る中、真逆の方針を取る日銀の対応は、世界でも異質といえるかもしれません。このような日銀の金融緩和方針が今後の世界経済にもたらすリスクや影響として、どのようなことが考えられるのでしょうか?

 

まず大きな懸念として考えられるのが、円安の深刻化です。日銀は低金利を維持するために、大規模な国債買い入れを行っており、そのために日本円を大量に発行しています。アメリカをはじめとする各国の中央銀行が金融引き締めへ舵を切る中、日本円は流通量が増加しているということでもあり、それによって円の価値が希薄化。少し前までは、多くの国が金融緩和方針をとっていたため為替も維持できていましたが、各国が金融引き締め方針に転じた今、日本円だけが希釈され続ける形となっています。

 

また、政策金利と国債利回りや預金金利は連動しているため、金利が高い国の資産を持っているほうが利回りも良くなります。この先、日本国債を売って米国債を買う、あるいはより直接的に日本円の預金を米ドルに変えるなど、円を手放す資産家が増えることも予想されるでしょう。

 

このように日本と他国間で大きな金利差がある限り、円安はさらに進行していくものと考えられます。

中央銀行が国債保有率約50%という前例なき状況

先述したように、日銀が金利維持のために買い入れている国債の量は莫大なものとなっています。2022年6月13日週には1週間で810億ドルを購入。欧州中央銀行が年初から5月までに購入したEU加盟国国債の月額平均額が約270億ドルだったことと比較すると、日銀の買い入れ額の大きさが分かります。

 

2022年6月現在、日銀が保有する日本国債は526兆円となっており、これは発行残高の50%にも達しようとする額です。中央銀行がこれほどまでに自国債を保有している状況は歴史的にも例がなく、この先どのような事態が起こるのか予測ができかねる部分も懸念のひとつです。

 

そもそも、中央銀行が国債を持ちすぎることには、さまざまな弊害があるとされています。そのため日本をはじめとする先進国の多くでは、中央銀行が政府から直接的に国債を引き受けることを法律で禁止しています。日銀は一般市場から国債を買うという体裁を取ってはいるものの、市場に流通する国債の半分近くを保有している以上、市場に多大な影響力を持っていることは明らかで、実質的な健全性には疑問が残る部分もあります。

金融緩和をやめることにもリスクあり?

ここまで、日本の金融緩和方針がもたらすリスク面に目を向けてきましたが、一方で金融緩和を取りやめてしまうことで発生するリスクも存在します。

 

というのも、世界各国が金利を引き上がる中、先進国で唯一、低金利での資金調達が可能な日本は海外諸国から重宝されている面もあり、ある意味、日本円が国際経済のバランサーとなっている側面も否めないからです。もし日銀が一転して、金融緩和方針を取りやめれば、世界的な借入コストが大幅に上昇し、国際経済に混乱と停滞を招く恐れも考えられます。

 

また歪な金利差にはチャンスも潜んでおり、キャリートレード(金利の安い通貨で借り入れ調達し、金利の高い通貨で運用することで、利ざやを得る手法)を行うには絶好の機会であるとも言えます。日本円を借り、利上げを主導する米ドル資産で運用することで、運用益+金利差益が狙える可能性もあるのです。

 

世界経済にとっては爆弾でありながら、投資家個人にとってはチャンスにもつながり得る日本の金利動向。注意深く見守りたいものです。

本記事は、富裕層のためのウェブマガジン「賢者の投資術」(Powerd by OPEN HOUSE)にて公開されたコラムを、GGO編集部にて再編集したものです。

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