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仮想通貨などの金融商品を扱ううえで知っておきたいことは、「税金対策」です。仮想通貨の取引でも節税を怠ると、想像以上の納税額に達する可能性があります。
この記事では、節税対策のひとつである損益通算が仮想通貨の取引でも利用できるかどうかについて解説します。仮想通貨の取引で利益を得たい人は知っておきたい情報ばかりなので、ぜひ参考にしてください。
1. 仮想通貨(暗号資産)は損益通算ができない理由を解説
損益通算とは、同一年分の利益の合計と損失の合計を相殺することです。一般的な節税対策として用いられています。まずは、仮想通貨(暗号通貨)が損益通算できない理由を詳しく解説していきます。
1.1. そもそも「損益通算」とは?
損益通算について、もう少し掘り下げて説明しましょう。日本では合計で10種類の所得があり、それぞれ異なる方法で所得税を求めます。このなかで、損益通算ができる所得は下記の4つです。
- 不動産所得
- 事業所得
- 山林所得
- 譲渡所得
仮想通貨は「雑所得」に該当するため、ほかの所得とは損益通算ができません。すなわち仮想通貨で大きな損失が発生しても、給与所得からの控除は不可能です。
1.2. 株式や不動産との損益通算はできない
万が一、仮想通貨で利益や損失が発生しても、株式や不動産との損益通算はできません。なぜなら、仮想通貨で得た利益はすべて雑所得に該当するからです。株式の売買で得た利益は譲渡所得、配当金の額は配当所得にあたります。
不動産所得の場合は貸出して収益を得た場合は「不動産所得」、売却時でもらった金額は「譲渡所得」の対象です。このように、損益通算ができる投資対象が極めて少ないです。
たとえ仮想通貨で大きな損失が発生しても、株式や不動産で利益を出していれば税金を納めなければなりません。
1.3. 雑所得内の損益通算なら可能
同一年分の雑所得同士であれば、損益通算ができます。
たとえば、数種類の仮想通貨を保有している投資家は、それぞれの通貨において損益通算が可能です。ビットコインでは収益を得たものの、イーサリアムで損失が発生した場合は損益通算ができます。
同一年で発生した損益でなければ対象外となるため、入念にチェックしておくことが大切です。
2. 仮想通貨を損益通算するメリットは?
投資家のなかには、わざわざ確定申告で損益通算をするのが面倒だと感じる人もいるかもしれません。本項では、仮想通貨で損益通算をするメリットを2つご紹介します。
2.1. 節税対策になる
損益通算は、節税につながるところがメリットです。
雑所得の計算方法は「収入−必要経費」です。控除がほとんどないため、税金も基本的に高くなります。
たとえば、ビットコインで100万円分の利益が発生したとしましょう。同年内にイーサリアムで60万円分を損した場合、損益通算をして合計40万円の所得として計上することが可能です。
このように、損益通算をすると大幅な節税に繋がる可能性があります。少しでも納税額を抑えたい人は、損益通算を活用しましょう。
2.2. 個人の収入を把握しやすくなる
損益通算をすると、個人の収入が把握しやすくなります。大多数の人は収入の管理に関しては比較的得意ですが、損失を見落としてしまうものです。
両者に目を向けていかなければ、正確な所得額を把握できなくなるでしょう。
損益通算を行うと、収入と損失の双方を細かく計算する機会が生まれます。収支の状態が把握できれば、今後の投資活動にも活用できるはずです。正しい所得額を明らかにするためにも、損益通算が必要です。
3. 仮想通貨の損益通算の方法は3つ
ここからは、損益通算の主な計算方法を3つご紹介します。自分自身に合ったスタイルを選びましょう。
3.1. 国税庁の計算書を使って計算する
国税庁では計算書式をサイトに掲載しており、エクセルシートを使って損益通算の金額をまとめることが可能です。ちなみに、計算方法にも2種類あります。
- 総平均法:すべての時期の購入金額と数量をまとめて平均値を出す方法
- 移動平均法:購入したタイミングごとに分けて平均値を出す方法
双方で計算式も異なるため、国税庁はあらかじめシートを分けています。勉強を兼ねて、ひと通りシートを使ってみてもいいかもしれません。
3.2. 損益計算ツールやアプリを使用する
インターネットが発達した現代において、損益通算ができるツールやアプリは数多く存在します。自分で計算することは面倒と感じつつも、費用を最小限に抑えたい人は自動計算ソフトを使ってみましょう。
なかには、無料でインストールできるアプリもあります。ただし、難しい計算には対応できない可能性があります。性能を求めるのであれば、数万円がかかるソフトの購入も検討すべきです。まずは、入念に情報収集しましょう。
3.3. 税理士に計算を依頼する
ソフトやアプリを利用しても、自分のみでは計算ミスが生じる恐れもあります。最も確実な納税額を求められる方法は、税理士への相談です。仮想通貨による雑所得のほか、株式や不動産で投資している人は別途計算してもらうことができます。
税理士のおおよその依頼料は10万円以上です。3つの方法のなかでは最も高額です。しかし、正しい確定申告書を作成できる点が強みです。申告漏れを防ぐためにも、優先的に検討しましょう。
4. 仮想通貨の損益通算について知っておきたいポイント
損益通算の簡単な仕組みを解説しましたが、まだ押さえるべきポイントがいくつかあります。正確かつ有益に確定申告を済ませるためにも、細かい内容も含めて理解しておかなければなりません。
4.1. 必ず正確な所得額を計算してみて損益通算の方法を選択する
損益通算する際には、正確な所得額を計上しなければなりません。前述したとおり、計算方法は総平均法と移動平均法の2つがあります。総平均法の場合はまず「全体の購入金額÷全体の購入数量」で平均単価を求めます。平均単価を売却数量と乗じ、売却金額から差し引くことで利益額を算出します。
総平均法を計算するタイミングは期末です。仮想通貨が激しい値動きをすると、正確な数字と乖離してしまいます。移動平均法は、購入したタイミングごとに「購入金額÷購入数量」で算出する手法です。計算は面倒であるものの、正しい所得額を求めやすくなります。
4.2. 仮想通貨と海外FXの損益通算は可能
仮想通貨は、雑所得であればほかの収入と損益通算が可能です。主な代表例として海外FXが挙げられます。海外FXは、為替レートを利用して外貨で収益を得る投資スタイルです。仮想通貨と同様にハイリスク・ハイリターンの手法として位置づけられます。
仮想通貨と海外FXの両方で投資をしている人は、どちらかで大きな損失を招きかねません。一方で、高額の収入を得るケースも考えられます。これらを損益計算でまとめることが賢い節税方法です。
4.3. 実現損益を0に近づけておくと税金対策になる
仮想通貨の税金対策では、実現損益をなるべく0に近づけることも重要です。たとえば、80万円で購入した銘柄Aを30万円で売却したとします。この場合は、50万円分の損失です。
上記の例に加え、まだ売却していない銘柄Bが50万円の含み益を出したとしましょう。損失分は翌年度に持ち越せないため、あえて銘柄Bの利益を確定させます。利益と損失が相殺され、雑所得は0円です。
このように、損益を0円に近づける工夫をすると節税対策につながります。
5. 仮想通貨における損益通算以外の節税対策法を紹介
仮想通貨で得た利益における節税方法は、損益通算のみではありません。ほかにも、さまざまな手段を使えば効率よく税負担を軽減できます。ここからは、損益通算以外の節税の手段を取り上げます。
5.1. 法人化して繰越控除を利用する
節税方法のひとつとして、法人化が挙げられます。法人の場合は、個人とは異なり繰越控除※が利用可能です。
※ 繰越控除…赤字が出た場合に翌年以降へ繰り越して利益と差し引くこと
個人では損失を出しても、翌年以降に繰越ができません。雑所得上のルールであり、ほかの銘柄と相殺する際には年内中に利益を確定する必要があります。
一方で、法人は9年間(2018年4月1日以後に事業を開始して発生した損失については10年間)にわたって損失を繰り越せます。期間内であれば、黒字になった年で相殺できる点が強みです。
5.2. 年間の利益が20万円以下の時点で利確する
年間の利益が20万円以下の場合は、雑所得で確定申告が不要です。つまり、年間の利益を非課税のラインまで抑えると節税ができます。しかし、雑所得は必ずしも全員に20万円以下の壁が適用されるわけではありません。
たとえば、給与所得とは別に雑所得がある場合は、その所得額も合わせて20万円を下回ることが条件となります。
5.3. ふるさと納税を活用する
納税額を減らしたいのであれば、ふるさと納税を活用するのもひとつの方法です。ふるさと納税とは自分で選んだ自治体に寄付をして、所得税や住民税の負担額を減らす制度です。たとえば、出身地に40,000円を寄付したとします。
控除額は最大で2,000円を差し引いた38,000円です。控除された金額分を寄付しているため、実際は負担していることには変わりません。
しかし、ふるさと納税は返礼品をもらえるため、物品を考慮するといくらか得をできる制度です。
5.4. 仮想通貨の必要経費を計上しておく
雑所得上で節税するには、必要経費の取り扱いに注意する必要があります。確定申告では、仮想通貨の購入でかかった費用を正確に計上しなければなりません。想像以上に利益を出したとしても、出費が大きくなる分だけ所得額も大きく削減できます。
とはいえ、費用が発生すれば必ずしも必要経費に認められるわけではありません。計上できるものを事前に確認しておくことが大切です。必要経費に該当できる種類を分類しながら解説します。
5.4.1. 必要経費として認められるのは売上に必要なもの
仮想通貨の取引の必要経費となる基準は、仮想通貨取引に必要となる支出だと証明できるかどうかです。仮想通貨の取引で経費として認められる一例としては、下記が挙げられます。
- 出金手数料
- 取引手数料
- 会計ソフトの購入費
- 仮想通貨に関するコンサルティング、セミナー費用
この他にも、仮想通貨取引専用のスマートフォンやパソコンを購入した場合は必要経費として計上できます。ただし、10万円を超える場合は減価償却費として計上しなければならない場合があるので、注意が必要です。
5.4.2. 光熱費やカフェ代などは必要経費としては認められない
仮想通貨の取引に関与していない部屋の電気代やガス代などは、一般的に必要経費として認められません。カフェで通貨の勉強をする際に支払う飲食代も、基本的には必要経費の対象外となります。
ただし、仮想通貨の売買をするうえで発生した電気代などは按分できる場合もあります。マイニングで利益を得るにはパソコンやスマホなどのツールが必要だからです。全額を経費にはできないため、一定の割合で按分しましょう。
6. 損益通算で仮想通貨の所得がマイナスでも確定申告は必要?
損益通算をすると、最終的に所得がマイナスになるケースも少なくありません。では、このような場合に確定申告は必要となるのでしょうか。
6.1. そもそも「確定申告」とは何か?おさらいしよう
利益を計上するにあたって、確定申告をする目的は何かを押さえておく必要があります。
一般的に所得税は申告納税方式を採用しており、自ら税務署に税として納めるべき金額を申告しなければなりません。給与所得の場合は、あらかじめ会社が納税部分を差し引いて納めます。
6.2. 損失が出ている場合は確定申告は不要
目的から考えれば、損失が発生した場合には確定申告は必要ありません。前述でも解説しましたが、一般的に雑所得は20万円の壁が適用されます。それぞれの所得もまた、利益より損失が多い場合は確定申告が不要です。
日本の所得税では、応能負担の原則が働いています。当該原則を具体的に体現した仕組みが、所得額に比例して税率が変わる累進課税制度です。損失が大きく、わずかな所得しか残らない場合は非課税扱いになるため、申告義務も免除されます。
6.3. 雑所得が少なくても確定申告が必要なケース
所得税の応能負担の原則について説明したものの、なかには例外も存在します。最も危険なパターンは、ほかに所得があるときです。
上述でも解説しましたが、雑所得はほかの所得とは損益通算ができません。たとえば、仮想通貨以外の事業所得などで稼ぎを得たら確定申告が必要です。
また、年間の医療費の支払い額が一定条件を満たした場合は、確定申告をすると医療費控除を受けることができます。家を購入して住宅ローン控除を受けるときも初年度は必ず確定申告しましょう。
7. まとめ
この記事では、仮想通貨と損益通算の関係性について説明しました。雑所得となる仮想通貨は、市場の動向によって価格が大きく上下します。場合によっては、多額の税金を納めるケースもゼロではありません。
節税を心がけるためには、雑所得のなかで損益通算をしっかりと行って不要な納税を避けるようにしましょう。具体的な所得額を求める場合の計算方法は複雑ですので、計算ソフトや税理士に頼ることも考えたほうが賢明です。