マイニングとはパソコンなどを使い、仮想通貨の計算作業をサポートすることで報酬を得る方法です。工夫次第では多く稼げるものの、一定の金額を超えると納税義務が発生します。負担が大きくなった事例や節税方法を確認し、マイニングに活用しましょう。
仮想通貨の「マイニング(採掘)」と税金の扱いを解説【初心者向け】 (※画像はイメージです/PIXTA)

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仮想通貨(暗号資産)には多種多様な稼ぎ方がありますが、そのひとつとして「マイニング」が挙げられます。専門性の高い方法ですが、ときに膨大な利益を生むこともあります。

 

本記事では、マイニングによって発生する税金の内容と対策について解説していきます。

1. マイニングで得た利益に税金はかかる?そもそもマイニングとは
1.1. 仮想通貨の「マイニング(採掘)」とは
1.2. マイニングする方法は主に3種類
1.3. 年間20万以上の利益がでたら課税対象になる
1.4. 学生や主婦などの扶養対象者は48万以上
2. マイニング利益の取得に関する税金の扱い
2.1. 雑所得か事業所得に分類される
2.2. 経費に計算できるもの一覧
2.3. 所得税・法人税それぞれのメリットデメリット
2.4. マイニングの利益に関する消費税の取り扱いは?
3. マイニングで課税される主な2つのタイミング
3.1. マイニングで発生した報酬を受領したとき
3.2. マイニングしていた仮想通貨を売却したとき
4. マイニングの税金計算方法とおすすめ税金計算ツール
4.1. 所得税の累進課税法を元に所得と雑所得を合わせて計算する
4.2. マイニング収益計算機:NiceHash
5. マイニングで得た利益の確定申告に必要な書類・提出方法
6. 仮想通貨をマイニングして得た収益を確定申告しないとどうなる?ばれないで済む?
6.1. 基本的に申告漏れはばれる
6.2.「延滞税」または「無申告加算税」の支払いが生じる
7. マイニングで税金が大きな負担となるパターンのカラクリとは
8. マイニングの税金対策したい場合の個人・法人それぞれの注意点
8.1. 個人でできる税金対策
8.2. 法人でできる税金対策
8.3. 年内の仮想通貨の売却をして利益を相殺する
9. まとめ

1. マイニングで得た利益に税金はかかる?そもそもマイニングとは

(※画像はイメージです/PIXTA)
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マイニングは、仮想通貨を使った稼ぎ方のひとつです。大きな収入を得ると、多額の税金を納めなければなりません。ここからは、マイニングの方法と納税義務が生じる条件を記述します。

 

1.1. 仮想通貨の「マイニング(採掘)」とは

「マイニング(採掘)」とは、仮想通貨のデータ処理をサポートすることです。仮想通貨はこれまでのデジタル通貨と異なり、全体の管理者が存在しません。たとえば、「PayPay」であればPayPay株式会社が主な管理者です。

 

仮想通貨は「分散型台帳」を搭載しており、ブロックチェーンを用いて自動的に取引データを管理します。マイニングは所有者が自ら複雑な計算作業に取り組み、なおかつ一定数の報酬をもらえる方法です。

※ ブロックチェーン…取引の履歴をブロックにまとめ、それを鎖のように繋げて管理する技術

 

1.2. マイニングする方法は主に3種類

マイニングする方法は以下の3種類が挙げられます。

 

  • ソロマイニング
  • プールマイニング
  • クラウドマイニング

 

ソロマイニングは、個人でマイニングに参加するスタイルです。1人で業務を行うため、報酬が膨らむ可能性があります。しかし、ある程度の知識や技術が必要で、費用の負担も大きくなる点がデメリットです。

 

プールマイニングは、チームを作成しマイニングを実施します。仕事量に応じてもらえ報酬額が変動する仕組みです。クラウドマイニングは企業にマイニングのための投資を行い、利益に応じた報酬が与えられます。

 

1.3. 年間20万以上の利益がでたら課税対象になる

マイニングで得た報酬は、年間20万円を超えたら確定申告をしなければなりません。基本的に仮想通貨の所得は雑所得に分類されますが、詳しい内容は後述します。また、サラリーマンとして働いている場合は、源泉徴収のみでは対応できないため注意が必要です。

 

もし、雑所得に該当するのであれば申告分離課税の対象です。通常の給与所得とは別枠で確定申告が義務となります。そのため、マイニングで得た利益を整理しつつ、正しい方法で申告しましょう。

 

1.4. 学生や主婦などの扶養対象者は48万以上

学生や主婦など扶養対象者となる人は、「48万円以上」の所得を得た場合に税金を納めなければなりません。サラリーマンのケースと同様にバイトなどの給料とは合算されない仕組みです。計算する際には十分気を付けましょう。

 

なお、あくまで48万円の壁を設けているのは所得税の場合です。仮に「45万円」を超えてしまうと住民税が発生し、確定申告が必要となります。必ずあらゆる種類の税金を確認しましょう。

2. マイニング利益の取得に関する税金の扱い

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

マイニングで得た利益は、金額によっては税金の対象になると解説しました。前述では基本的に雑所得へ分類されると説明しましたが、方法次第ではほかの所得として扱えます。実際に具体的な内容を見ていきましょう。

 

2.1. 雑所得か事業所得に分類される

マイニングの利益は、雑所得と事業所得に分類されます。基本的に個人で運用している場合は、雑所得の対象です。税額を求めるときに乗じる税率は、最大45%です。

 

一方で、仮想通貨を法人で運用した場合は、事業所得に該当します。個人と比べて多額の資金を使える分、利益も大きくなると考えられます。税額も高くなるものの、節税対策をしやすい点が特徴です。

 

2.2. 経費に計算できるもの一覧

雑所得と事業所得の双方とも経費に計算できるものは、仮想通貨の運用に関係のある行為です。たとえば、以下のような例が挙げられます。

 

■雑所得

  • 仮想通貨で儲けるために書籍や商材を購入した
  • 仮想通貨がテーマの有料講演会に出席した

 

■事業所得

  • 投資家たちと仮想通貨に関する情報交換会を開催した

 

また、クラウドマイニングで利益を得た場合は、設備の賃貸料や仕事を外注した費用も経費に含まれます。最終的にかかる税金が安くなるため、該当する経費は忘れずに計上しましょう。

 

2.3. 所得税・法人税それぞれのメリットデメリット

仮想通貨のマイニングは、所得税以外にも法人税で納める方法があります。それぞれにメリットやデメリットがあるため、どちらがいいかは双方を見比べて選びましょう。

 

ただし、法人税で申告するためには、当然ながら法人規模で運用しなければなりません。個人でマイニングをする場合は、所得税の対象です。所得税は原則、雑所得に含まれます。給与所得や事業所得と損益通算ができないため、納税額が高くなりやすいところがデメリットです。

 

法人税であれば、益金として計上すると翌年の納税額を減らせます。一方で、法人は法人化するまでの手続きが非常に複雑です。経費もある程度負担しなければなりません。簡単に運用できる点では、所得税の申告のほうがよいといえます。 

※ 損益通算…種類の異なる所得同士を合算して申告すること

 

2.4. マイニングの利益に関する消費税の取り扱いは?

マイニングの報酬には、消費税がかかりません。消費税を納める基本的な要件は「対価の発生」と「資金の譲渡」です。たとえば、コンビニの発注は商品を企業と取引します。取引する相手が明確で、実際に資金の譲渡が行われたときに消費税を納めなければなりません。

 

マイニングは、仮想通貨取引の構築によって報酬を得る手続きです。確かに、金銭のやり取りは行われています。しかし、マイニングには対価を支払う具体的な相手がいません。このことから、消費税の対象外になると考えられています。 

3. マイニングで課税される主な2つのタイミング

(※画像はイメージです/PIXTA)
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マイニングで課税されるタイミングは、大きく分けて2種類あります。

 

  • マイニングで発生した報酬を受けた
  • マイニングしていた仮想通貨を売却した

 

上記の場合は、それぞれの利益をしっかりと計上しなければなりません。運用するときは、必ず申告忘れのないよう利益を記録しましょう。

 

3.1. マイニングで発生した報酬を受領したとき

マイニングで報酬が発生したときは、当然ながら納税義務も生じます。税金の対象となるタイミングは、報酬の受け取り時です。上述したとおり、個人で運用しているのであれば雑所得を支払う必要があります。

 

仮想通貨のマイニングでは、作業時に経費が発生します。パソコンで操作をするだけでも電気代が発生します。機材を借りている人は、賃貸料も計上したほうが得策です。

 

3.2. マイニングしていた仮想通貨を売却したとき

マイニングした仮想通貨を売却した場合も、税金が発生します。たとえば、仮想通貨で管理できるデータ量を増やしたとしましょう。投資家の注目が集まり、より多くの取引が行われる可能性があります。

 

マイニングは、売買時に利益を得やすい稼ぎ方のひとつです。仮想通貨の譲渡による収益ではありますが、同じく雑所得として扱われます。

4. マイニングの税金計算方法とおすすめ税金計算ツール

(※画像はイメージです/PIXTA)
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ここまで、マイニングには税金がかかり、確定申告が必要となる旨を解説しました。とはいえ、納税額の計算は非常に複雑で、素人が簡単にできるものではありません。税理士に頼らず、1人で整理したいときにおすすめの表やツールを紹介します。

 

4.1. 所得税の累進課税法を元に所得と雑所得を合わせて計算する

所得税を算出する際には、累進課税の制度を把握しなければなりません。累進課税とは、所得額に応じて税率が上下する仕組みです。2022年7月時点での累進課税表は、下記のとおりです。

 

課税所得

税率

控除額

1,000円〜194万9,000円

5%

0円

195万円〜329万9,000円

10%

9万7,500円

330万円〜694万9,000円

20%

42万7,500円

695万円〜899万9,000円

23%

63万6,000円

900万円〜1,799万9,000円

33%

153万6,000円

1,800万円〜3,999万9,000円

40%

279万6,000円

4,000万円以上

45%

479万6,000円

出典:国税庁|No.2260 所得税の税率

 

このような表を参考にしながら、確定申告書を作成しましょう。

 

4.2. マイニング収益計算機:NiceHash

確かに計算方法がわかれば自分1人で対応はできるものの、計算ミスが生じる可能性もゼロではありません。正確に申告しなければならないため、納税額を求めるときは注意が必要です。そこで、マイニングの収益を簡単に計算できるNiceHashを紹介します。

 

NiceHashを活用すると、マイニングで得た利益を自動で計算できます。利用者が特別な知識を有する必要もありません。慣れていない人は導入を検討してみましょう。

5. マイニングで得た利益の確定申告に必要な書類・提出方法

(※画像はイメージです/PIXTA)
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マイニングで得た利益分の確定申告をする場合は、基本的に下記の方法で行います。

 

  • 原本の確定申告書を税務署に提出する
  • E-Taxで確定申請書を作成してデータで送る

 

ただし、データで確定申告書を送る際には、あらかじめ税務署で手続きを終わらせなければなりません。さらに、仮想通貨の年間取引報告書の準備も必須です。申告に使った書類は5〜7年間の保管が義務となるため、紛失しないよう徹底して管理しましょう。

6. 仮想通貨をマイニングして得た収益を確定申告しないとどうなる?ばれないで済む?

(※画像はイメージです/PIXTA)
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仮想通貨のマイニングは運用がスムーズに進むと、思いがけない利益を得るケースも起こります。なかには、確定申告をしなくてもいいのではと考えてしまう人もいるでしょう。しかし、このような考え方は非常に危険です。

 

6.1. 基本的に申告漏れはばれる

仮想通貨にかかわらず、申告漏れは基本的にばれると考えたほうが賢明です。国税庁は、仮想通貨取引所から定期的に取引履歴などを受け取っていると考えられます。また、マイナンバーの普及により利用者の情報提出が義務化されました。

 

そのため、国税庁は全員分の情報を一通り把握している可能性も低くはないでしょう。細かいところまでは見られないだろうといった油断が大きなトラブルを招きます。必ず正しい金額で確定申告を済ませてください。

 

6.2.「延滞税」または「無申告加算税」の支払いが生じる

申告漏れが発覚したら延滞税や無申告加算税の支払いが生じます。確定申告の期限を過ぎた場合は、ペナルティとして延滞税を納めなければなりません。

 

そのあとも滞納を続けていると、併せて無申告加算税の支払い義務も発生します。なお、延滞税と無申告加算税の税率は表のとおりです。

 

税の種類

税率

延滞税

  • 2ヵ月まで:「7.3%」と「延滞税特例基準割合+1%」の低いほう
  • 2ヵ月経過した翌日以後:「14.6%」と「延滞税特例基準割合+7.3%」の低いほう

無申告加算税

納付すべき税額

  • 50万円まで(15%)
  • 51万円〜(20%)

出典:国税庁|延滞税の計算方法

 

延滞税と無申告加算税の税率は高いので、申告漏れには十分注意しましょう。

 

※ 延滞税特例基準割合…前々年9月〜前年8月までの短期貸付の平均利率を12で割り(平均値を出し)、年1%を加算した割合のこと。

7. マイニングで税金が大きな負担となるパターンのカラクリとは

(※画像はイメージです/PIXTA)
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マイニングは仮想通貨の価格の推移で、膨大な納税額がかかる恐れもあります。ここでは、税金が支払えなくなった事例を紹介します。問題となったのは、「XEX(ゼックストークン)」のマイニングです。

 

当該通貨は、2019年の価格が16円と極めて安価でした。とある投資家がXEXに対し、1,200万円のマイニング投資を行いました。価格はどんどん上がり、収益額が1,800万円に到達します。

 

しかし、他方で通貨の時価評価額は90万円しか得られませんでした。そのため、1,800万円分のXEXを入手したものの、売っても90万円の利益にしかなりません。つまり、実際の利益に釣り合わない納税額がかかりました。

 

年内で売却すれば相殺(利益と損失を差し引いて帳消しにすること)もできましたが、当該投資家はタイミングを逃してしまい、税金が払えなくなってしまったそうです。

8. マイニングの税金対策したい場合の個人・法人それぞれの注意点

(※画像はイメージです/PIXTA)
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納税額が大きくなってしまう人は、税金対策をしようとするはずです。個人や法人のそれぞれで節税方法があります。主な税金対策の方法と注意点を押さえ、確定申告時に活用しましょう。

 

8.1. 個人でできる税金対策

個人でできる税金対策は、必要経費の活用です。収入から差し引けるものが経費しかないため、工夫してマイニングに着手する必要があります。特におすすめの方法が、マイニングマシンを導入することです。

 

マイニングマシンは減価償却資産に該当し、10万円以内であれば毎年全額を経費として計上できる点が強みです。一方で、ある程度の購入費用は負担しなければなりません。

 

※ マイニングマシン…マイニングをするために使われる機械。24時間続けて稼働できる。

 

8.2. 法人でできる税金対策

法人も同様にマイニングマシンを導入することで、必要経費として確定申告時に計上できる可能性はあります。しかし、企業の目的や事業内容と照らし合わせて審査されることもあるでしょう。そのため、まずは専門家のアドバイスをもらうことにしましょう。

 

一方で、法人は個人と比べると数多くの種類が経費に計上できる点が強みです。工夫次第では、税金対策の効果も十分に発揮されるかもしれません。できる限りの対策に手を打ちつつも、公正な運用を心がけましょう。

 

8.3. 年内の仮想通貨の売却をして利益を相殺する

マイニングで税金対策をしたい場合は、年内で仮想通貨の売却をする方法も検討すべきです。利益が相殺されることで、納税額は大きく変わります。たとえば、マイニングで500万円の利益を出したあと、時価評価額が200万円に落ちると300万円の損失です。 

 

500万円の利益と300万円の損失を差し引くと、所得は200万円しか残りません。その分、課税額も少なくなる仕組みです。ただし、相殺は年内に済ませておく必要があります。期間を過ぎてしまうと繰り越しができなくなるため注意しましょう。

9. まとめ

この記事では、仮想通貨のマイニングと税金について紹介しました。マイニングで利益を獲得すると、比例して納税額も増えます。場合によっては、税金を納められなくなる危険性もゼロではありません。

 

仮想通貨を運用するのであれば、節税方法も含めてしっかり勉強することが重要です。想定外の出来事も当然起こりますが、対策を講じておくだけでも対応しやすくなるでしょう。納税額を計算しつつ、確定申告に備えてください。