仮想通貨(暗号資産)ブームの火付け役となったビットコインですが、誰が作ったものなのでしょうか。創設者の正体が気になっている人は少なくないでしょう。
本記事では、ビットコインの創設者と噂される人物について徹底的に解説していきます。ビットコインが作られた目的や経緯を把握できれば、仮想通貨への理解が一層深められるのでぜひ参考にしてください。
1. ビットコインの創設者の正体は?日本人のような名前の「サトシ・ナカモト」とは
まずは、大きな功績を残した偉人であるサトシ・ナカモトの略歴や人物像を解説していきます。いまだ多くが謎に包まれていますが、仮想通貨の基礎知識としてぜひ覚えておきましょう。
1.1. ビットコインの創設者といわれる人物「サトシ・ナカモト」
サトシ・ナカモトは、仮想通貨の礎を作ったといわれる人物です。世間からも高い評価を受けていますが、なぜか素性は隠されたままです。
さまざまな噂が飛び交っているものの、本人に関する情報は極端に少ないためいずれも推測の域での話となっています。謎多き存在がさらなる話題性を呼び、世界中がその真相と今後の動向に注目しています。
1.2. 天才と呼ばれる理由
サトシ・ナカモトが天才と呼ばれる理由は、ビットコインの創設にあります。データ改ざんを許さない仕組みを作り出し、データに価値を持たせ送信を可能にした点といえるでしょう。「データは改ざんされる」というこれまでの概念を覆す革新的な技術を生み出しました。
その能力と功績は高く評価され、2016年のノーベル経済学賞にもノミネートされるほどですが、素性の知れない人物であるため受賞するまでには至っていません。
1.3. 現在もサトシ・ナカモトの正体は不明なまま
サトシ・ナカモトの正体は、今なおベールに包まれています。個人名なのか、日本人であるのかさえもわかっていません。
論文にイギリス英語が使われているため日本人ではない説もありますが、推測でしか過ぎないのが現状です。
2. サトシ・ナカモトが書いた論文の内容
続いて、サトシ・ナカモトが書いたといわれる論文の解説をしていきます。仮想通貨の根幹となる考え方が記されたものなので、ぜひ参考にしてみてください。
2.1. 金融機関を介さないP2P電子通貨システム
従来の金銭取引は金融機関などを経由するのが当たり前でしたが、特定の場所に情報が集約される中央集権体制が問題視されていました。
そのようななか、サトシ・ナカモトの論文で「P2P電子通貨システム」が提唱されました。ビットコインを利用すると、金融機関を介さなくても個人間で安全に取引ができるという革新的な仕組みです。
2.2.「ビットコイン=ブロックチェーン」ではないことに注意
ブロックチェーンとは、ネットワーク上の端末を接続し、取引記録を分散して管理する技術を指します。ビットコインと同一視されるケースもありますが、まったくの別物です。
データの分散管理によって改ざんのリスクを限りなく排除する「ブロックチェーン」の技術を活用して生み出された通貨が「ビットコイン」です。実際、ブロックチェーンの技術は他のさまざまな仮想通貨にも応用されています。
3. サトシ・ナカモトが保有するとされる資産
サトシ・ナカモトが保有するビットコインの量は、いくらになるのでしょうか。過去のデータを分析することによって、実際に採掘したビットコインの量が割り出されているので、日本円に換算した数字とあわせて紹介します。
3.1. サトシ・ナカモトが保有するとされるビットコインは「112万5,150BTC」
サトシ・ナカモトは、112万5,150BTCを保有すると推計されています。ブロックチェーン上ではすべての取引が閲覧できるのですが、サトシ・ナカモトが保有するビットコインは一度も動いていません。
なお、最初のマイニングは2009年1月に実施されました。マイニング速度を調整するために実施したと考えられており、当時はまだ開発段階にあったといわれています。
3.2. 2022年7月現在:1BTC約290万で計算するといくらになる?
2022年7月現在、1BTCを日本円に換算すると約290万円になります。サトシ・ナカモトが保有する112万5,150BTCを現在の価値に置き換えると、3兆2,629億3,500万円です。
世界の長者番付でも上位に入るほどの莫大な資産ですが、初めからこれほどの価値を有していたわけではありません。革新的な技術が少しづつ世間に広がり、13年の歳月をかけて価値を高めていったのです。
4. 実はビットコインには「Satoshi(サトシ)」という通貨単位も存在する
ビットコインの通貨単位として有名なのは「BTC」と呼ばれるものですが、もうひとつ隠れた「Satoshi」という単位が存在します。ソフトウェアの基本単位としても使用されるほど重要な役割を担っているのですが、意外と知られていない通貨です。
Satoshiはビットコインの最小単位であり、1億分のBTCを1Satoshiに換算できます。今ではBTCが高額になりすぎているため、少額の決済を行う際にSatoshiが使用されるケースも少なくありません。
5. ビットコイン創設者の足跡をたどってみよう
続いては、ビットコイン創設者の足跡を年表形式でたどっていきます。約2年間という短い間に世界を変える革命の礎が築かれたことを、ぜひ頭の片隅に入れておいてください。
5.1. 2008年10月31日:暗号論文のメーリングリストに論文を投稿する
2008年10月31日に暗号関係のメーリングリスト上にサトシ・ナカモトの名前で「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」と題された論文が公開されました。仮想通貨の歴史は、ここからスタートしました。
論文を投稿したメールは現在でもネット上で見られるほか、論文自体も日本語に翻訳されているので、この機会に一度目を通してみてはいかがでしょうか。
5.2. 2009年1月3日:ビットコイン初のマイニングが行われる
2009年1月3日には、ビットコイン史上初のマイニング(取引内容を承認し、成立させる行為)が行われました。開発者として、実験的にブロック生成を実行したと考えられています。
当時のマイニングにより、50BTCが生み出されたようです。現在レートで換算すると1億4,500万円もの大金が、サトシ・ナカモトのもとに送られた履歴が見つかっています。初めての発掘と送金は開発者の手によって行われました。
5.3. 2009年1月8日:ビットコイン用ハードウェアの初期バージョンの実装
2009年1月8日には、ビットコイン用ハードウェアの初期バージョンが実装されました。一般に公開された日でもあるので、ビットコインの運用開始日として扱われるケースも多いです。
同年2月にはP2Pの通信技術に関する掲示板に、サトシ・ナカモトによって初期バージョンの周知が計られた記録が残っています。なお、このときのプロフィールには「日本」という設定がなされていましたが、何を示したものなのかは明らかになっていません。
5.4. 2010年中ごろまで:ビットコイン開発に積極的に参加
サトシ・ナカモトは2010年にいたるまで、ビットコインのブラッシュアップを図るため熱心に作業を進めていました。しかし、詳しい理由はわかっていませんが、少しづつ第一線から退いています。
プロジェクト管理や所有していたサイトのドメイン管理などはギャヴィン・アンドレセンをはじめとした、創設初期メンバーに引き継がれていきました。重要な業務を次々と信頼できる仲間に任せていったようです。
5.5. 2010年12月以降:足取りが途絶える
2010年も終わりに近づいたころ、サトシ・ナカモトの足取りが途絶えました。2010年12月12日に、新バージョンのソフトウェアをフォーラムでPRしたことが最後の行動履歴です。
それ以降も本人の行動だと疑わせる投稿がありましたが、メールの情報が不正に再取得された可能性もあるため真偽を断定することができません。
偉大な功績を残しながらもあまりに情報が少ないため、一層の謎と好奇心を引き寄せる原因になっています。
6. ビットコインの創設者と推測された人たち
ビットコインの創設者と推測された人物は1人だけではありません。これまでにも数多くの人物に創設者としての噂があったため、詳しく紹介していきます。
6.1. 最初に疑われた人物
最初にビットコインの創設者として推測されたのが「ドリアン・ナカモト」という人物です。「ナカモト」という同一の苗字を有しており、日系アメリカ人のエンジニアでもあるため噂されました。幼いころの名前が「サトシ」だったことも、信ぴょう性を一層高めました。
しかし、ドリアン・ナカモト氏は完全否定しています。今でも、一連の騒動を巻き起こした有名人として、サトシ・ナカモトのイメージ画像に使用されることもあります。
6.2. 創設者を自称した人物
自らビットコインの創設者であると主張した人物もいました。クレイグ・ライトと名乗るオーストラリア出身の起業家で、創設者の正体をめぐる論争を終わらせるために名乗りをあげたと公言しています。
クレイグ・ライトはサトシ・ナカモトだけが把握しているはずの暗号を使ったブロックチェーンの操作によって、本人である証拠を見せようとしました。
しかし、数々の疑問が拭えない状態が続き、クレイグ・ライト自身も創設者である主張を暗に撤回するようなブログを公表しています。
6.3. 日本の某大学教授
2013年、またもや日本人に注目が集まりました。京都大学で勤務する「望月新一」教授がビットコインの創設者ではないかと推測され始めたのです。
アメリカ情報工学の有力者であるテッド・ネルソンが望月教授をサトシ・ナカモトの正体と主張した動画がきっかけとなり、噂が広がりました。
望月教授自身は無関係であることを明言しているので、可能性は限りなくゼロに近いでしょう。
6.4. Winnyの製作者
他にも技術者界隈でビットコイン創設者であると騒がれている日本人がいます。ブロックチェーンに近い技術であるWinnyを生み出した情報工学者「金子勇」です。
Winnyは特定の管理者を不要とする革新的な技術でしたが、悪用の危険性があるとして金子勇は逮捕されてしまいました。
40代前半で病に倒れましたが裁判費用を匿名掲示板サイト2ちゃんねるで集め、無罪を獲得したという逸話は今でも語り継がれています。
7. ビットコイン創設者の死亡説について
金子勇がサトシ・ナカモトであると唱える説は現在でも有力です。そして、金子勇が既に亡くなっていることや112万5,150BTCものビットコインが長らく動きをみせていないことなどを含めて、ビットコイン創設者の死亡説も噂されています。
金子勇を創始者と考え莫大な富を持ったまま死亡したストーリーに、ロマンを感じる人々が一定数存在するのも事実です。ただ、死亡説もあくまでひとつの推論であり、その真偽は立証されていません。
8. ビットコイン創設者は冷凍保存されている?噂の真相とは
過去には、ビットコイン創設者が冷凍保存されているとの噂もありました。謎が謎を呼んだ結果生まれてきたエピソードですが、ビットコイン創設者に対する関心の高さが垣間見える出来事なので、これから詳しく解説します。
8.1. 2017年に放送された日本の某TV番組が発端
発端は、2017年12月に放送された「ウソかホントかわからない やりすぎ都市伝説スペシャル 2017」という番組です。「永遠の命」を研究している財団の施設を紹介するなかで、ビットコイン創設に関与したメンバーが冷凍保存されているとの発言がありました。
番組内では、具体的な名前について言及されていません。この発言をきっかけに、サトシ・ナカモトも冷凍保存されているとの噂が急拡大し、大きな話題を生じさせてしまったのです。
8.2. 真実はサトシ・ナカモトではなかった
冷凍保存されているのは本当にサトシ・ナカモトなのでしょうか。詳細が調べられると、保存されている身体は、ビットコイン開発の中心メンバー「ハル・フィニー」氏である事実が判明しました。
ハル・フィニーは人体の冷凍技術を発展させるため、自ら望んで冷凍保存を希望していたようです。確かに、創設に大きく関与した人物が冷凍保存されていたことは衝撃的な事実でしたが、噂自体は真実ではありませんでした。
9. まとめ
ビットコインの創設者については、極端に情報が少ないため、いまだ正体が解明されていません。しかし、好奇心をくすぐるミステリアスな謎に引き込まれた人々が、数々の噂を作り出し、惑わされてきたのも事実です。
今後も仮想通貨を生み出した功績と莫大な資産に近づくために、さまざまな推論が立てられていくことでしょう。正しい情報を取捨選択できるかどうかが重要であり、自らの思考で真実を見出す力は仮想通貨の取引においても必要な力になります。