住宅を購入する際は、「住宅ローン控除」を受けることができます。住宅の購入には多くのお金が必要になるので、ローンを組もうと考える方は少なくないです。
控除には節税というメリットがあり、会社員や個人事業主に関係なく条件に当てはまれば問題なく受けることができます。
しかし、控除には必要な手続きがあり、書類の準備や申請方法に頭を抱える方は数多くいるはずです。
1. マイホームをローン購入した人の節税制度…「住宅ローン控除」とは
マイホームの購入は大きな費用がかかるので、ローンで購入する方がほとんどです。そのため、ローンで購入した際の節税制度や控除について気になる方もいるでしょう。金銭的な負担を減らすためにも、控除の仕組みや条件を把握しておくとよいです。
1.1. 条件を満たす場合に所得税・住民税が減税になる仕組み
新築住宅の購入やリフォームをローンで支払いした場合、控除を受けることができます。毎年年末にローン残高を確認し、その額を基として所得税や住民税の還付金を受け取ることになります。
年末の残高から1%控除される仕組みで、1年の限度額は40万円です。節税につながるので、控除の手続きをする方は多いです。
1.2. 一般的な住居の住宅ローン控除を受ける条件は5つ
控除を受けるためには条件があり、どれにも該当しない場合は控除を受けることができません。
住宅ローン控除を受ける条件は、以下の5点です。
■住宅ローンを受ける条件
- 合計の所得が3000万円以下である
- 住宅の取得後6ヶ月以内に入居し、控除を受ける年の末まで居住する
- 床面積は50平方メートルを超えており、面積の半分を居住スペースとして利用する
- 返済期間が10年以上であり、分割を利用して返済する
- 前後2年以内に特殊な控除を受けていない
上記の条件から明らかであるとおり、住宅ローンの控除はお金に余裕のある富裕層向けではなく、ローンを組まないと私生活に支障が出そうな方々に向けた施策であることがわかります。
1.3. 住宅ローン控除の申請方法は入居の翌年(1年目)に確定申告をすること
住宅ローン控除の申請は、入居の翌年に行う必要があります。控除を受けるためには、初年度での確定申告は必須になります。申告の期間は2月16日から3月15日の間となっていますので、節税のためにも申告のし忘れがないように気をつけましょう。
1.4. 控除の適用が10年と13年で異なるケースがある
控除の適用が年数によって異なるケースがあることに注意が必要です。適用が10年までであれば、年末における住宅ローンの1%にあたる金額が控除額として取り扱われます。
一方、適用が11年目から13年年目である場合、その控除額の計算は「年末における住宅ローンの1%」もしくは「消費税を抜いた建築物の買取価格×2%÷3」のどちらかの計算式で行います。2つのうちどちらかに該当するかは計算後の控除額によって決まり、少ないほうに該当することになります。
2. 1年目に住宅ローン控除を確定申告するときの必要書類は?
住宅ローン控除を確定申告するはじめの年は慣れないことが多いです。申請の不備を防ぐためにも、時間に余裕をもちつつ、必要書類をチェックして準備を進めておく必要があります。確認していきましょう。
2.1. 必ず用意する書類7つ
① 確定申告書
確定申告とは、税金を国におさめる手続きを行うことであり、申告に必要な書類が確定申告書になります。初年度に必ず提出する必要のある書類であり、申告の手続きを忘れてしまった場合はペナルティを科せられます。
確定申告書の書類は、税務署や国税庁より受け取ることが可能です。公式サイトからも入手できるので、書類を取りに足を運ぶ必要はありません。
② 源泉徴収票(会社員の場合)
源泉徴収票とは、1年間の働きで所得税をどのくらい支払ったのか記載されている書類です。所得から発生した税金を具体的な数値で確認することができ、税金をおさめたという証明をするための書類でもあります。
従業員の場合は会社から発行されるので、万が一発行がなかった場合は、企業に問い合わせをしましょう。
③ マイナンバーが記されている書類の写し
マイナンバーとは、住民票を持つ国民1人ひとりに割り当てられた個人を証明する番号です。マイナンバーが記載されている公的書類(マイナンバーカード、通知カード)を紙にコピーします。
用紙に規定はなく、家のコピー機はもちろん、コンビニエンスストアでも取得できます。
④(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
住宅借入金等特別控除額の計算証明書とは、住宅ローン控除の申請書であり、計算した控除額を記載するための書類です。控除額の計算が大変であるため、計算が難しいという方は税務署へ相談することをおすすめします。
国税庁の公式サイトから入手することができるので、簡単に準備することが可能です。
⑤ 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
年末残高等証明書とは、住宅ローンの残高がどれくらいであるのか証明するための書類です。年末の12月31日時点での残高を証明するもので、住宅ローンを組んだ人のみ受け取ることができます。
住宅ローンの契約をしている金融機関より年1回郵送されますが、万が一届かない場合は問い合わせをしましょう。
⑥ 建物・土地の登記事項証明書
建物・土地の登記事項証明書とは、建物や土地といった不動産の所有者に関する証明書です。
書類には所有者の名前や住所、建物の構造などが記載されており、建物や土地が誰のものであるのか確かめることができます。法務局で入手可能です。
⑦ 建物・土地の売買契約書、請負契約書の写し
建物・土地の売買契約書は建物と土地が1つのセットで販売されていることを示す証明書であり、請負契約書は家を建てることを示す証明書です。
売買における契約の際に受け取る書類であるため、捨てずに保管しておく必要があります。写しのみ必要であるため、コピー機で印刷して用意しましょう。
2.2. 条件が合ったときに用意する書類
上記で説明した書類以外で、条件が合った場合に用意する書類も存在します。たとえば、住まいが認定長期優良住宅や低炭素建造物である場合、または特定の中古住宅である場合などです。
認定長期優良住宅や低炭素建造物であればそれらを示す書類が必要になり、中古住宅であれば「耐震基準適合証明書」や「住宅性能評価書」が必要になります。
耐震基準適合証明書は、建物の耐震性が法で定められた基準を満たしているかを証明するものであり、住宅性能評価書は住宅の質が十分に担保されているか証明するものです。
2.3. 住民票は平成28年分から必要なくなった
平成28年1月1日よりマイナンバー制度が導入されました。マイナンバーにより個人情報の合致が簡単になったため、住民票でなくともマイナンバーで氏名や住所を証明できるようになっています。
住民票の代わりにマイナンバーカードの写しの提出が可能であるため、住民票を取りにわざわざ区役所にまで足を運ぶ必要はありません。マイナンバーカードをコピーすれば、必要書類の1枚は揃います。
3. 1年目に確定申告の手続きをする流れ
ローン控除などの仕組み、必要書類などを把握したあとは、確定申告への準備を始めましょう。以下の手順で確定申告の手続きを行います。
3.1. 必要書類を入手・用意する
まずは、必要書類を用意しましょう。先述したように、確定申告書や源泉徴収票、マイナンバーの写しなど必要な書類は最低でも合計7種類あり、入手するべきものが多いので用意には時間がかかります。
確定申告には期限があるため、遅れないように余裕をもって準備する必要があります。期限ギリギリで準備に取り掛かると間に合わないことがあるので、ご注意ください。
3.2.「確定申告書」と「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」を作成する
次に、確定申告書と住宅借入金等特別控除額の計算明細書の作成に取りかかります。確定申告の項目を埋めるためには、控除額の計算をする必要があるため、計算明細書から手を付けましょう。
控除額の計算は難しいので、やり方がわからない場合は税務署に相談することをおすすめします。
3.3.「確定申告書」と「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」および必要書類を揃えて提出する
確定申告書と住宅借入金等特別控除額の計算明細書を記入したあとは、それ以外の添付書類とともに税務署に提出します。
記入漏れやその他書類に不備がある場合、スムーズに手続きが行われないので、注意しましょう。とはいえ、複雑な書類は記入漏れなど起こることも多いため、その際は窓口担当者の指示に従って適宜対応すれば問題ありません。
3.4. 還付金があった場合は振り込みされる
控除額の計算で求めた納税額よりも多く税金を払っていた場合、確定申告をすることで還付金という形でおさめた税金を返してくれます。
還付金があったら、税務署から口座に振り込まれます。問題がなければ、約1ヵ月程度で入金されます。
4. 2年目以降の住宅ローン控除の手続きと必要書類は?
住宅ローン控除の手続きは2年目以降も続きます。控除の手続きに必要な書類を確認しておきましょう。
4.1. 会社員の場合
4.1.1. 手続きは年末調整のときに行う
会社員の方は、2年目以降の確定申告は不要になります。収入が会社から支給される給与所得のみの場合は、年末調整の手続きだけで控除を受けることが可能です。
しかし、一定金額以上の副収入がある場合等には確定申告が必要となるので、注意しましょう。
4.1.2. 年末調整時に提出する書類
年末調整で提出する書類は、次の3枚です。
- 給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書
- 年末調整に向けた住宅借入金等特別控除証明書
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
控除に関する書類は税務署から郵送され、残高に関する証明書は金融機関から受け取れます。毎年提出が必要になるので、忘れないようしましょう。
4.2. 個人事業主の場合
4.2.1. 手続きは確定申告で行う
個人事業主の場合、確定申告をする必要があります。申告に必要な書類は1年目と比べて少ないですが、手続きを忘れた場合は控除が受けられないので、注意が必要です。
4.2.2. 確定申告時に提出する書類
初年度は提出する書類が多いですが、2年目以降に提出する書類は1年目よりも数が少ないです。具体的には、以下の2点です。
- 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
5. 住宅ローン控除で気をつけるべきポイント
住宅ローン控除を受けるのであれば、注意するべき点がいくつかあります。できる限り金銭面の負担を抑えるためにも、ポイントを把握しておきましょう。
5.1. 1年目の住宅ローン控除の確定申告を忘れずに
住宅ローン控除を受けるためには、1年目に確定申告を必ず行う必要があります。申告を忘れると、控除を受けることはできません。
万が一、申告を忘れてしまった場合は、控除が適用される翌年から5年以内であれば「還付申告手続き」を行うことで控除を受けることが可能です。
5.2. ローンを借り換えても控除を受けることが可能
ローンを切り替えたとしても、控除は受けることができます。返済期間が10年以上であり、借り換えの目的がローン返済のためであれば問題ありません。
条件に当てはまっていれば住宅ローン控除を受け続けることができるので、借り換えを検討してみるのも資金面の改善を図る1つの手段です。
5.3. ふるさと納税での節税ができなくなる可能性が大きい
ふるさと納税とは、自身が所属する自治体に寄付を行った場合、寄付額のなかで2,000円を超えた額が、所得税と住民税から控除を受けることができる制度です。
しかし、住宅ローン控除を受けている方がふるさと納税を利用すると、所得税や住民税の控除の重複となってしまう場合があります。すると、ふるさと納税での控除が少なくなったり、節税できなくなったりすることもあるので、注意が必要です。
6. まとめ
住宅ローン控除には確定申告書をはじめ、源泉徴収票や控除額の計算明細書など、必要な書類が数多くあります。入手するのに時間がかかる書類もあるので、確定申告期間に間に合うように準備をしましょう。
また、会社員や個人事業主では申告に異なる点があること、控除の適用条件が年数によって変化することも、節税のためにしっかりと把握しておく必要があります。
本記事で解説したポイントを押さえて、住宅ローン控除の対象の方は確実に手続きをしましょう。