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投資にはさまざまな金融商品がありますが、2017年下半期あたりからビットコインを筆頭に「仮想通貨(暗号資産)」が話題となっています。仮想通貨は、値動きを予測する難易度が高いものの、購入するタイミングがよければ、資産が膨れ上がる可能性も秘めています。
ただし、健全な取引を図るためには定期的なルールの見直しが欠かせません。作業の一環である「ハードフォーク」の特徴をまとめましょう。
1. ハードフォークの意味とは
ハードフォークとは、仮想通貨の内容に関するルールを改めると同時に、新しい種類を生み出す作業です。つまり仮想通貨の種類が新しく増えるということです。投資先の選択肢が増える一方で、大幅な値動きを招く危険性もあります。リスクを下げるためにもハードフォークとは何かを知っておくことが必要です。
1.1. まずはブロックチェーンとは何かを理解しよう
ハードフォークの仕組みを知る前に、まずは仮想通貨の仕組みを知っておかなければなりません。仮想通貨に用いられている技術である「ブロックチェーン」は、売買のデータに関する情報を1つずつ鎖のように繋げ、暗号で管理するシステムです。
たとえ仮想通貨の保有者でも、記録された内容の書き換えは容易ではありません。仮想通貨は、ブロックチェーンによって個人で管理できるようになったデジタル通貨です。1つ1つのブロックに暗号をつくるため、ハッキング※対策にも繋がっています。
※ハッキング…本来は高等技術を用いてコンピューターの分析をする行為を指すが、本記事では悪意を持つ人の不正なサイバーアタックの意味で用いる。(本来は「クラッキング」が正式名称だが、業界でもハッキングと表現されることが少なくない)
1.2. ハードフォークはブロックチェーンの分岐によって発生する
続いて、ハードフォークが発生する一連の流れについて、図を用いながら解説しましょう。
仮想通貨には、オンライン上で投資家が安全に取引できるよう、ルールが細かく定められています。時代の経過とともにアップデートも必要となりますが、単純な上書きは所有者に大きな負担を与えかねません。
ハードフォークが実行されることで、上記の図のように分岐が発生して改正された新バージョンのコインが生成されます。新しく作られた通貨と併せて保有することも可能です。適用ルールおよび仮想通貨が枝分かれする現象から、「ハードフォーク」と名づけられました。
2. ハードフォークの基礎知識
先ほどハードフォークの仕組みについて解説しましたが、なかには似たような制度がいくつかあります。類似した作業を取り上げて見比べていきましょう。
2.1. ハードフォークとソフトフォークの違い
まずは、ハードフォークとソフトフォークの違いについてご紹介します。
ハードフォークと似た言葉の一つとして、「ソフトフォーク」があります。両者の違いは、ルールを改正したあとの種類の数です。それぞれの特徴を以下にわかりやすく整理しています
- ハードフォーク…ルールを変更したあと、新たな仮想通貨が生まれる
- ソフトフォーク…ルールを変更したあと、従来の仮想通貨に適用する
ハードフォークは、1つの仮想通貨を2種類に分けるものだと説明しました。一方で、ソフトフォークは従来の通貨に新ルールが備えられます。つまり、ソフトフォークは新たな仮想通貨が生まれないということです。
2.2. Segwit(セグウィット)との違い
続いて、ハードフォークとSegwit(セグウィット)の違いについて説明します。
記録を保存する空き容量を増やすことも、ハードフォークの目的の一つです。そのほかの容量数を増やす取り組みとして、Segwit(セグウィット)の採用が挙げられます。両者の大きな違いは、データの最大容量を増やす流れです。
Segwitの場合は、ブロックチェーンの機能に変更を加えて履歴そのもののデータ容量を小さくします。当然、仮想通貨の種類が増えることはありません。 ブロックチェーン内の整理整頓と捉えましょう。
3. ハードフォークをするとどうなるのか
ハードフォークを実行したときに起こる最も大きな変化が、仮想通貨種類の増加です。ハードフォークが行われることで、仮想通貨の種類が増えるので、通貨選びの幅が広がります。
ハードフォークによって生み出される通貨は、分岐を経てまったく別の種類になりますが、基本はコピーであるため大体の特徴は同じです。ただし、通貨の価格は両者で異なります。取引をする際には価格の違いに気をつけましょう。
ハードフォークの話題が出ることによって、大幅な価格変動が起こる確率も低くありません。無論、価格の暴落も不安視されるものの、運用上の障壁を取り除くためにはハードフォークは欠かせない作業です。仮想通貨の動きに惑わされず利益を得るには、過去のデータを分析しながら購入時期を決める必要があります。
4. なぜハードフォークが必要なのか
ハードフォークが必要な理由は、「仮想通貨の容量数およびセキュリティ面の見直し」です。仮想通貨はデジタル通貨であるため、データを厳重かつ正確に管理しなければなりません。なぜハードフォークを行う必要があるのか、その理由を2点解説します。
4.1. スケーラビリティ問題を解決するため
1点目の理由は、スケーラビリティ問題を解決するためです。スケーラビリティ問題とは、仮想通貨のブロックにかかる容量制限が原因で、処理が遅れてしまうトラブルを指します。
仮想通貨の最も重要な機能は「データの管理」です。しかし、売買が繰り返されれば容量も限界を迎えてしまいます。結果的にデータを書き換える作業が重くなり、スムーズな取引ができません。そのため、「スケーラビリティ問題」の改善が求められます。
スケーラビリティ問題を解決する糸口として、空き容量を増やす工夫が求められます。容量数増量の改良を加えた結果、容量数を拡張した新たな種類の仮想通貨を数多く生み出しました。仮想通貨がさらに浸透していけば、今後もハードフォークと似たような作業が繰り返されるといえます。
4.2. ハッキング行為を無効化するため
2点目の理由は、ハッキング行為を無効化するためです。
仮想通貨はユーザーがそれぞれで管理していますが、投資家が集まる取引所を狙って不正に通貨や個人情報を盗み取るハッキング行為が発生しています。実際に2018年には、日本の取引所であるコインチェック(Coincheck)でも660億円相当のビットコインがハッカーの手によって流出しました。
ハッキング被害が発生すると、仮想通貨取引所では一定期間取引が停止されるなどの混乱も生じます。ですが、ハードフォークを実行すれば、上手くリスクを分散させて安全に取引することが可能です。2種類の通貨の条件は異なるものの、ハッキングのリスクを避けるためにはハードフォークは欠かせません。
5. 過去に起こったハードフォークの事例
ハードフォークが実行されることは、特に珍しいケースではありません。有名な「ビットコイン」や「イーサリアム」も、以前ハードフォークが実行されています。ハードフォークが実行された要因と作業完了後に起こった変化について、事例を2パターン紹介します。
5.1. ビットコインキャッシュ(BCH)のハードフォーク
まず、1つ目の事例がビットコインのハードフォークです。
2017年8月にビットコインでハードフォークが行われました。実行された理由は、「データの保管にかかる容量が小さいため」でした。ビットコインの容量は「1MB」ですので、多すぎる情報は扱えません。その問題を解決すべく、ビットコインの30倍以上のデータが処理できる「ビットコインキャッシュ」を生みました。
5.2. イーサリアムクラシック(ETC)のハードフォーク
2つ目の事例が、イーサリアムのハードフォークです。
イーサリアム※も2016年7月にハードフォークが行われました。ハードフォークを実行した理由は、2016年6月に起こったハッキング事件です。イーサリアムの開発グループは新通貨を発行して、ハッキングが起こるリスクの分散を目指したものの、当時のイーサリアムの利用者は反対しました。最終的には新ルールの適用を強行し、「イーサリアムクラシック」が完成しました。
※イーサリアム…アルトコイン(ビットコイン以外のコイン)のなかで、最も取引されている仮想通貨
6. ハードフォークへの対策
ハードフォークが起こると、少なからずオリジナルの通貨にも影響を及ぼします。そのため投資家は、ハードフォークに備えて対策が必要です。続いては、ハードフォークへの対策について、誰でも簡単に行える対策を2点紹介していきます。
6.1. 最新の情報を収集する
ハードフォークが行われる際に、必要な行動が「情報収集」です。ハードフォークが実行される前には、公式サイトでもアナウンスされます。ハードフォークに関する情報を逃さないよう、小まめに公式サイトを確認しておくことが大事です。
また、仮想通貨に関わるニュースもチェックしておくことが大切です。ただ、ニュースを確認する際には、正しい情報とデマの情報を混在させないよう気をつけましょう。
6.2. ウォレットで管理する
続いてのハードフォークへの対策は、ウォレットで仮想通貨を管理することです。
ハードフォークに上手く対応するには、ウェブウォレット※にて通貨を管理する必要があります。生成された通貨は特徴が似通っているものの、基本的には別物として扱われます。サーバー上で保有すれば、スムーズに新しい通貨への切り替えが可能です。
※ウェブウォレット…仮想通貨をインターネット上で管理するウォレット。「メタマスク」や「トラストウォレット」など。
7. ハードフォークのメリット
続いて、ハードフォークを行うメリットについてご説明させていただきます。
ハードフォークのやり方次第では、大きなメリットも得られます。ですので、制度が変わることを上手く生かしながら、確実に利益を得られるようにハードフォークへの準備を進めることが必要です。
7.1. 新通貨が付与される(もらえる)可能性
ハードフォークが行われると、新通貨をもらえる可能性があります。かつて、こうしたサービスを提供する義務はあるのかと争いがありました。令和元年12月20日の東京地裁の判決では、「取引所は無理に新しい種類を与える必要はない」と示しました。しかし、各取引所は必ずしも判例どおりに対応を考えているわけではありません。
ビットフライヤーのCEOである加納裕三氏は、「ハードフォークコインを付与する方針の取引所が選ばれる」と新通貨の付与を肯定的に捉える発言をしていました。今後も、積極的に新通貨が付与されることが期待できます。
7.2. 価格が上がる可能性
ハードフォークの実行後は、対象となる通貨の価格が上がる確率も高まります。なぜなら、更新された内容に期待する投資家もいるからです。実際に、ビットコインキャッシュも上場後は、高値で取引されました。価格がどのように変わるかを分析しつつ、大損を出さないよう注意しましょう。
8. ハードフォークのデメリット
ハードフォークは、取引するうえでさまざまな恩恵を受けられます。一方で、実行されるときには、デメリットも把握しておかなければなりません。損失を発生させないようにするためにも、ハードフォークで気をつけるべきポイントをご紹介します。
8.1. リプレイアタックのリスク
ハードフォークで考えられるリスクが、ハッカーによる「リプレイアタック」です。「反射攻撃」とも言い換えられ、簡単にいえば「なりすまし行為」を指します。ハッカーがリプレイアタックを狙うタイミングは新旧の通貨の交換時です。
通常はルールを改正する際にも、仮想通貨の記録の管理に用いるキーを変えずに新通貨を作るため、知らぬ間にデータがコピーされて所有権を奪われてしまいます。
8.2. バグやエラーが生じるリスク
また、ハードフォークが行われると、バグやエラーに悩まされる危険もあります。2020年11月には、イーサリアムで起きた想定外のアップデートによってブロックチェーンが作られました。
一方で、正式に作業が実施されたケースでもバグやエラーが起こっています。2019年5月ビットコインキャッシュのハードフォークでは、ネットワーク障害が発生しました。取引で負担がかかる場合もあるため、実行後は慎重に様子を見ましょう。
8.3. 取引データの信頼性が下がる
続いてのハードフォークのデメリットは、取引データの信頼性が下がる点です。新通貨をスピーディーに浸透させようとして、確認作業が甘くなってしまう可能性があります。価格にも悪影響を及ぼすこともあるため、ハードフォークの実行時は注意が必要です。
9. ハードフォークが起こるときの注意点
ハードフォークが起こるときは、仮想通貨投資においていくつか注意点があります。状況によっては、損失が発生する可能性があります。ハードフォークに関する注意点をあらかじめおさえ、実行時に対処するよう心がけましょう。
それでは、ハードフォークが起こるときの注意点について順番に紹介していきます。
9.1. 大きな値動き
ハードフォークは、仮想通貨の値動きを激しくさせる点が特徴です。ビットコインキャッシュも、1ヵ月単位で大幅な価格のアップダウンを繰り返しました。
ハードフォークを行う際に値動きが大きくなる理由は、新たなシステムが導入されることによって、投資家のあいだで期待と不安が入り混じるからです。ハードフォークによって新しい通貨が誕生したあとは、通常よりも値動きが不安定になることを理解しておきましょう。
9.2. 通貨の一時的な取引停止
ハードフォークを行う際には、トラブルを防ぐために取引を停止するケースがあります。ビットコインキャッシュでは、ハードフォーク後エラーが発生し、一時的に入出金がストップしました。
取引の停止が発生すると、仮想通貨を売買することができません。そのため、投資家にとっては売買のタイミングを逃す問題となります。計画を立てて投資している人は、売買するタイミングを練り直す必要があります。取引ができないときは、取引所の状況を公式サイトなどで把握しておくことが必要です。
10. ハードフォークが起こったとき税金はどうなる
仮想通貨投資で、理解しておくべきポイントが「税金」です。特に、ハードフォークが起こると、サービスで新しい通貨が与えられる可能性もあります。新しく与えられた通貨の価値が上がれば、その分利益は増えます。
その場合は、通貨を売ったときに生じる利益額に応じて、確定申告を行うことが必要です。税金の申告漏れが生じたら、あとの手続きが非常に大変ですので、税金についても理解しておく必要があります。
税理士に依頼すれば対策はできますが、自分自身でもある程度は理解しておきましょう。ここでは、仮想通貨の確定申告について紹介します。
10.1. 確定申告の対象なのか確認
結論からいえば、ハードフォークで新しい通貨をもらうだけでは確定申告の対象にはなりません。なぜなら、通貨が与えられた時点では「所得」として扱われないからです。つまり、収益とは認められず、税金を払う必要はありません。
しかし、新通貨を売買に用いた場合は、利益額が確定申告の対象です。日本円だけではなく、ドルやほかの仮想通貨と交換しても申告をする必要があります。サラリーマンの場合は利益が20万円以上、自営業やフリーランスは利益が出た時点で確定申告が義務となるため注意しましょう。
11. 2022年ハードフォークの予定は?
今後、ハードフォークが行われる注目の仮想通貨は「Cardano(ADA)」です。
取引速度の大幅改善で容量と流動性(市場に出回る数量)を向上させることを目的に、2022年夏ごろハードフォークが予定されています。2022年5月に「Cardano(ADA)」創設者のチャールズ・ホスキンソンは、「順調に開発が進んでいる」と報告しました。今後の動向に注目です。
12. ネム(NEM/XEM)とシンボル(XYM)の関連性
「ネム」と「シンボル」も、2021年のハードフォークで分かれた仮想通貨です。ネムは2022年5月現在「1NEM=約5〜20円」と安価ですが、ビットコインと比べて約10倍の処理スピードを誇ります。
ちなみに、ハードフォークが実行された背景には、「個人用(ネム)」と「法人用(シンボル)」の仮想通貨をつくる目的がありました。ネムは、今後システムを改良して、防犯機能を強化する予定です。
投資家のなかには、ネムがテクノロジーの改革を目指すことで価格を伸ばすのではと予想している人もいます。
13. まとめ
ハードフォークの要点を簡単にまとめます。
- ルールが改正された同じブロックチェーンで新しい仮想通貨をつくる
- 容量オーバーを克服し、不正な攻撃の回避にも使える
- 新通貨へ移行するときに乗っ取られる危険性もある
- エラーが起こって取引に制限がかかる可能性もある
ハードフォークが行われる通貨に投資する際は、価格変動が激しいため余剰資金で無理のない投資をしましょう。