この20年で価格が下落したのは、大量生産できるモノ
[売表]は、アメリカ合衆国労働省労働統計局が発表した1998年1月から2019年12月の商品種別の価格変動グラフです。1998年を0%とすると、おもちゃ、携帯料金、衣類、日用品、新車の価格が下がっていることがわかります。
一見すると、新車や日用品は価格をキープしているようにも見えます。ですが、この期間のアメリカのインフレ率は約60%。それを踏まえると、実質的には値下がりしているに等しいといえます。これらの価格が下落したものに共通するのは、「全く同じものを量産できる」ということです。
最も顕著なのはテレビの価格変動曲線です。2000年代のある時期から傾きが緩やかになっていることがわかります。これはテレビの価格が量産化によって下落し、人々に広く普及しきったことで、下げ止まりに達した結果と考えられます。
さまざまなモノがあふれる現代において、誰もが手に入れられる大量生産の普及品には、なかなか付加価値を付けづらくなっていることがわかります。
価格が上昇したのは「唯一無二」の商品・サービス
量産品の価格が下落し続けている一方、価格が上昇しているのは、医療、大学教育、住宅、食品などです。これらに共通しているのは、まったく同じものが手に入らないサービスや商品だということ。
最も価格が上昇した医療サービスは、個人の症状や状況に合わせて提供する治療をカスタマイズする個人向けサービスの代表格です。
また、その次に価格上昇率が高かった大学教育は、設備や講義内容は同じでも、何を学ぶか選択の自由があるだけでなく、どの研究も年々少しずつ進化し、内容が更新されていくという点でも、量産化のできないサービスといえるでしょう。
「住宅・食品」などは、時代が変わっても上昇が続く
医療・大学教育ほどではありませんが、住宅も価格が上昇した項目の一つに数えられます。一見、似たような物件・類似する物件は多そうにも思えますが、土地までを含めて「住宅」と捉えると、量産化できない商品と考えることもできます。
最後は食品です。農作物などは自然の恵みであるがゆえに個体差があり、同一品を無限に生産し続けられるものではありません。そういった点で、農作物だけでなく肉や魚も含めた食品全般は、急激な価格上昇はないながらも、どの時代でも一定以上の安定した価格を維持し続けられる商品ということがわかります。
ここまでを踏まえて、テレビをはじめとした価格下落商品群が徐々に下げ止まりに陥る傾向があるのに対し、価格上昇商品群は一定のペースで緩やかに上昇し続けている点にも注目です。医療・教育・住宅・食品などの商品が持つ唯一性は、今のところ、テクノロジーなどをもってしても代替できないこと。そのため、時代が変わっても頭打ちになることなく、上昇し続けているのだと考えられます。
統計データを読み解くことが、投資の指針となる
当たり前ではありますが、“安く買って高く売る”が投資の基本。本記事で見てきたように、商品種別の価格変動グラフは、中長期的にどのジャンルに将来性があるのか、大まかな目星をつける時に役立ちます。
価格上昇傾向が強い商品群に狙いをつけ、そこから情報を精査し、目利きする。そうすれば長期的視野に立った投資が可能になり、短期的な上げ下げにも動揺せずに済むはずです。
上昇傾向の業界内においても、どこかで勝ち組と負け組の明暗は分かれてしまいますが、大まかな勝ち組の“あたり”をつけるためにも、こうした統計データは大いに役立ってくれるはずです。