五輪後も高止まり…国内不動産市場の現況
中長期的な資産形成に貢献する不動産投資だが、売り時を見極めるのはなかなか難しい。コロナ禍でのオリンピック・パラリンピック開催を経て、国内の不動産マーケットはどのような現状を迎えているのだろうか。
「東京オリンピック・パラリンピックの開催決定を機に海外投資家の市場参入が加速して、特需がもたらされたのは確かです。しかし閉会後に改めて市場を見渡しても『オリンピックが終わったから冷え込んだ』という印象はありません。外資の流出が激しいということもないですし、都心部は活発に動き続けています。全体の市況としては『高止まり』の状態にあるといって過言ではありません」
不動産の仕入れを行うルーフトップリアルティ―株式会社にとって、高止まりはさほど歓迎すべき状況ではないものの、不動産の売却を考える人にとっての「売り時」は今も続いていると、同社代表の若生氏は指摘する。
「弊社は都心部だけでなく、全国の不動産を扱っているのですが、たとえば九州でひと際魅力的なエリアである福岡でも、高止まりの状況は続いています。またインバウンド需要が関東以上に高かった関西はコロナ禍の悪影響を受けましたが、それでも大阪の不動産を欲しがる人は常に存在しています。このようにマーケットの動きは、全国的に見てもむしろ供給不足で、引き続き活発です」
超高齢化社会が不動産価格に及ぼす甚大な影響
不動産市場と常に向き合っている若生氏が、国内市場の活況を保証してくれるのは何とも頼もしい。しかし少子高齢化が続き、国力の弱体化が懸念される今後の日本について、若生氏はどのように考えているのだろう。
「もちろん長いスパンで見れば、状況は変わっていくでしょう。しかしその変化は緩やかで、急激ではないはずです。また直近の動きでは、国内の株価上昇や仮装通貨への投資で財を成した『新富裕層』の不動産投資参入が目立ちます。そうした方々は手持ちの現金を別の資産に変えたいという意欲が高く、ローンを組まずに不動産をキャッシュで購入しています。こうした動きが活発なうちは『売り時』であるといっていいでしょう」
あくまで楽観的な姿勢を崩さない若生氏。では国内不動産市場の縮小傾向はどのように見極めるべきなのだろうか。
「高齢化社会が進み、亡くなる高齢者の数が増えています。誰かが亡くなれば、その方の所有していた財産は相続されることになり、なかには『遺産のほとんどが不動産で相続税が払えない』とか、『管理の手間が多いので手放したい』という理由から売却される不動産も増えていくでしょう。こうした“物件あまり”の状況は相場価格の低下を招きます。相続物件の場合、売却で多くの利益を得ると納税額が上昇しますので、低価格で売却されるケースが多い傾向にあるからです」
つまり不動産を売却するなら「高止まりが続き、少子高齢化がピークに達していない今のうちに」ということになる。
「不良債権系の物件が、増えているという動きも気になります。金融機関から多くの借り入れを受けて購入したのは良いのですが、経営が順調に進まず『売らざるを得なくなった』という物件が増えている印象です。こうした物件も低価格で取引されますので、数が増加すれば市場全体に影響を及ぼしていくことになるでしょう。やはり『買い』が多い現況のバランスが崩れる前に、『売却』を検討するのがベターだといえるでしょう」
事情ある物件を活かすのが「プロの腕の見せ所」
ここまでの内容に目を通し「やはり売るなら今か!」という思いを新たにした人もいるだろう。「どうせ売るなら、なるべく高く」と誰もが考えるだろうが、業務内で不動産買取りを数多く経験している若生氏はどのようなポイントに注目して購入を検討するのだろうか。
「土地や建物の積算評価はもちろん、立地や利回り、そして築年数などを総合的に評価します。好材料となるポイントがいくつかある物件なら、当然売却は容易ですが、今は、好材料となるポイントが1つあれば売れていますので、まさに売り時といえます。そのためオーナーが『売っても大した額にならないのでは……』と売却を躊躇しているような物件に注目することもあります。現状ではマイナスと捉えられているポイントを検証した結果、プロである我々が手を加えることで解決へ導けるようなら、購入の価値は十分にありますから」
たとえば「外観がボロボロの賃貸物件でも、ある程度の予算でリフォームできれば、十分に賃貸需要を見込める」「単調な運営に留まり利回りの低下を招いている場合、経営戦略の見直しにより収益化を見込める」といった場合、買い取りを検討するのだという。全国の不動産を取り扱い、各エリアの金融機関や管理会社とのネットワークを地道に築き上げてきた同社ならではの手腕と言えるだろう。
「私自身、個人でも物件を所有しており、