「老後の資金が足りません」と耳にしますが、そもそも年金だけで生活するというのは現実的なのでしょうか。年金生活の現実と年金給付額のシミュレーションから考えてみます。
老後くらい悠々自適に暮らしたい…「年金だけで暮らす」は実現できるのか? (※写真はイメージです/PIXTA)

大卒共働き夫婦と片働き夫婦…「年金だけで暮らす」が実現するパターン

厚生労働省『令和元年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、国民年金の平均受給額は5万6,049円。また給付金額の分布をみてみると、「6~7万円未満」が最も多く43.9%となっています(関連記事:『「国民年金・厚生年金」受取額分布表…元会社員「10万円以下」が23.7%』)。

 

一方厚生年金の平均受給額(国民年金と合わせた額)は14万4,268円。給付額の分布をみてみると、「10万円未満」が23.7%と4~5人に1人の割合。一方で20万円以上という人は16.4%います。

 

厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』によると、大卒会社員の平均年収は585万6,600円。男性大卒会社員では613万3,399円、女性大卒会社員では451万0,800円です。

 

そこで夫婦共働きで、現役時代の平均年収が600万円だったとします。夫婦でもらえる年金額は35万6,000円ほど。標準的な老後生活で必要な金額を大きく上回り、「年金だけで暮らす」という生活が叶いそうです。

 

夫婦共働きですが、夫の現役平均年収は600万円、妻の現役平均年収は400万円の場合はどうでしょう。夫の年金額は17万8,000円、妻の年金額は14万1,000円。合計32万円弱で、この場合でも「年金だけで暮らす」という生活は叶いそうです。

 

では片働きの場合はどうでしょう。年収600万円の場合の年金額は17万8,000円、専業主婦(夫)の年金額は6万5,000円。合計24万3,000円。毎月2万円ほどの赤字が出る計算です。

 

夫婦ともに大卒正社員で定年まで勤めあげ、かつ平均的な給与を手にしていたとしたら、標準的な老後生活は年金だけで実現しそうです。しかし片働きでは「年金+預貯金の取り崩し」という老後生活になることは確実のようです。

 

あくまでも平均値からのシミュレーションであり、実際に手にする年金額は個人によって変わります。老後生活も人それぞれですので、一概に「年金だけで生活できる」「年金だけでは生活できない」と線引きはできません。毎年1回手にする年金定期便で将来受け取れる年金額は確認できますので、それをもとに、毎日の生活を見直したり、貯蓄や運用を考えたりすることが大切です。