(※画像はイメージです/PIXTA)

不動産投資を行う人にとって、気になるキーワードの一つである「利回り」。不動産投資における利回りは少し特殊で、「表面利回り」と「実質利回り」の2つの言葉が使い分けられています。本記事では、オープンハウスのウェルス・マネジメント事業部が、「2つの利回り」について解説します。

不動産投資に「2つの利回り」が存在する理由

本来、利回りは投資額に対して収益が妥当かを判断するために使う指標です。そのため精度が高いほうが良いとはいえ、小さな出費もしっかり勘定する実質利回りのほうが、投資指標としては信頼できる数字といえます。実際、アメリカでは実質利回りを提示するのが一般的で、見えないコストがある表面利回りは参考にならないと考える人も多いのです。

 

一方、日本では表面利回りの提示が一般的です。より精度の高い信頼できる指標もあるはずなのに、なぜ表面利回りが多くの場合に用いられているのでしょうか。

 

「利便性」と「(売り手の)打算」が絡みあっているから、というのがその大きな理由といえそうです。

 

「利便性」とは、表面利回りが持つ数字的なわかりやすさのこと。計算式がシンプルであるため、不動産投資初心者でも無理なく理解でき、大まかなリターン期待値を誰でもスピーディーに算出できます。

 

さらに、売り手側からみれば、必要なのは販売額と想定家賃のデータだけであるため、集める情報が少なく済みます。すなわち、売り手にも買い手にも利便性が高く、わかりやすい指標と見ることもできるのです。

 

さらに売り手の「打算」についても知っておかなければいけません。先述したように、表面利回りと実質利回りを比べると、必ず表面利回りのほうが大きな数字になります。つまり、パッとみた時に儲かりそうに見えるということ。

 

投資物件は当然ですが、収益性が高い物件が売れやすくなるため「少しでも利回りを高く見せたい」という売り手側の打算が存在することも、買い手側は認識しておく必要があります。

「表面利回り」「実質利回り」両方に注意を

表面利回りと実質利回りについて説明してきましたが「実質利回りだけを気にしていれば良いのでは?」と思った方も多いはず。

 

ですが、日本の不動産サイトを見ればわかるように、実質利回りはほとんどの物件では一般公開されていないのです。つまり検索時には表面利回りを指標とする他ないのが現状です。この2つの数字はある程度連動するのが一般的なので、実質利回りも理解しているものの、結局は表面利回りだけを指標にしているという方も多いかもしれません。

 

しかし、2つの数字が大きく乖離するケースがあるので注意が必要です。例えば、劣化の激しい中古物件の場合には、購入金額は安いために表面利回りが高く見える一方で、リフォーム費用や毎年のメンテナンス費用が大きく、実質利回りは想定より小さくなってしまったというケースも見られます。

 

特に、不動産投資初心者の時には、投資金額の少ない中古物件を選ぶことが多いでしょう。その際に、この「利回りの落とし穴」に落ちる危険性が高いので、注意が必要なのです。

 

投資物件を検討する際には、公開されている表面利回りで大まかに物件を絞り込み、目星の物件の実質利回りを個別でチェックするやり方が有効だといえます。売り手側の打算に踊らされないように、投資の意思決定をする際には、かならず実質利回りも確認する癖をつけておくことをおすすめします。


 

本記事は、富裕層のためのウェブマガジン「賢者の投資術」(Powerd by OPEN HOUSE)にて公開されたコラムを、GGO編集部にて再編集したものです。