お金を貯められない人には、「モノ」「生活」が整っていないという共通点があります。今回は、一人暮らしで手取り22万円の男性が貯金できなかった事例から、家計の現状を把握することの大切さを紹介します。※本連載は、横山光昭氏の著書『お金が自然と貯まる 超シンプル・ルール』(大和書房)より一部を抜粋・再編集したものです。
家計を改善するのに「写真を撮る」ことが有効なワケ【人気FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

一人暮らしで手取り22万円の男性…面談で判明した「貯金ができない」衝撃理由

先ほど説明した「写真を撮る」という方法ですが、その作業によって独身Aさんが変わった例を紹介しましょう[図表2]。

 

[図表2]

 

2年ほど前、面談に訪れたAさん。一人暮らしで手取りは22万円です。決して低収入ではありません。それなのに、貯金ができないという悩みで来ました。仕事柄、土日も出勤することが多く、非常に多忙なようでした。

 

そんなAさんの楽しみは、平日に取った休日で、一人で買い物に行くことでした。特に、洋服や腕時計、バッグ、靴、ベルトに興味がありました。これらには、「仕事に生きる自分」という価値観があり、趣味と実益を兼ねている意識があるとおっしゃいました。

 

初回の面談当初から、「自分の部屋にはモノが多い」と言っていたので、家計の話のかたわら、モノの多さについても深く話を聞きました。

 

「モノが多すぎて、掃除をする気が起きません。狭くなった家は落ち着かず、平日にのびのび買い物をするのが習慣になっています」

 

そう言うので、

 

「部屋の様子がどんな感じなのか、よかったらケータイで写真に撮って、次回の面談で見せてください」

 

そう伝えました。Aさんは、約束どおり写真を撮ってきました。写真を見せてもらうと、確かにすごい量のモノでした。時計は、カジュアルなものから、シックなもの、高級そうなタイプまで一通りあって、計7個。

 

Aさんはメガネをかけているのですが、時計と同じように、シーン別に使っているようで、サングラスも含めると計11点。靴も仕事用だけでなく、色とりどりのスニーカーやロックな感じのゴツゴツした靴などが、玄関の靴箱に入らない状態でした。靴の合計は、写っているものだけでも20足ほど。

 

ベルトが7本。普段用の数千円のものから、7万円超のボッテガまで。そして大量の洋服です。ベッドに積み重ねられた写真からは、少しわかりにくかったのですが、ジャケットが20着ほどで、ジーンズなどのパンツが30本以上。

 

シャツも50~60枚、ネクタイも相当数……。写真はありませんでしたが、他に下着も相当あるとのことでした。毎日取り替えても、洗濯せずに1ヵ月は軽く過ごせるとのことでした。

 

初めは、「こんなに買っちゃってたんだ」と、軽い感じで私に話していたのですが、途中から「このままではダメですね……」と、私が責めるまでもなく肩を落としていました。

 

「今の洋服って、安くてもしっかりしていますし、長持ちしますよね」

 

と言いつつも、その後は、自分がやってきたこと、それでもまだモノを買い足していこうとしていることに矛盾を感じ、写真を見ながら私に話したことで頭が整理されたようでした。

 

シャツもこれだけあるにもかかわらず、決まったものばかり5~6枚をローテーションで着回していたらしいのです。また、最近は選ぶことが面倒になり、白いワイシャツがあればそれでいいとも思うようになってきたようです。

 

モノが増えていった経緯を振り返ってもらうと、揃えはじめの頃はわくわくしますし、いろいろなバリエーションの着回しもできるのでよかったのでしょう。しかし、モノがありすぎることで、その気も失せてきているというのです。これでは、せっかくのモノが活きません。

 

また、この大量のモノを見て、単純に「これじゃお金が貯まらないはずだ」と認識されたようでした。目の前にあるモノを見て、相当のお金を使ってきたと実感したのです。

 

このように、モノを把握することで、自分の生活スタイルが見えてきます。反省点もハッキリします。「なんとなく」というのをなくすためにも、一度、時間を取って「把握」するのが大事なのです。

 

 

横山 光昭

株式会社マイエフピー代表取締役

家計再生コンサルタント