日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回、老後資金の大きなウェイトを占める「退職金」に焦点を当てていきます。
会社員「退職金がありません」年金受給、14万円生活にどう備えるか?

「退職金に頼れない」なら「自分で作る」しかない

年金と退職金で、老後も安泰と多くの人は思ったことでしょう。しかし前述のとおり、退職金がある企業は8割。残りの2割は退職金制度はありません。どのように老後に備えたらいいのか、といえば、答えはシンプル。その分、自身でなんとかするしかありません。

 

方法は色々ありますが、そのひとつが「私的年金」。公的年金の上乗せの給付を保障する制度です。大きく、加入した期間などに基づいてあらかじめ給付額が決まっている「確定給付年金」と、拠出した掛金額とその運用収益との合計額を基に給付額が決定される「確定拠出年金」の2種類があります。特に確定拠出型は離職・転職にも対応しやすいことなどから、年々その規模を拡大しています。

 

「確定拠出年金」は、企業の拠出によって行う「企業型確定拠出年金」と、個人の拠出によって行う「個人型確定拠出年金」、いわゆるiDeCoがあります。2021年3月末時点、「企業型確定拠出年金」の加入者は約749万人、「個人型確定拠出年金」の加入者は約193万人となっています。

 

「国民年金や厚生年金と組み合わせることで、より豊かな老後生活を送るための一助となる」などという触れ込みで大々的に展開され、税制上の優遇処置から加入者も右肩上がり。一方で注意しなけばいけないのが、元本割れ。元本確保型の商品もありますが、投資信託などの商品は、元本を下回る可能性を視野に入れておかなければなりません。

 

現に「企業型確定拠出年金」では、その約10%が元本割れ。また運用利回り0~1%未満という低実績のものが約4割を占めています(厚生労働省 『第1回社会保障審議会企業年金・個人年金部会』資料より)。「運用でうまくいっている」というものは、半数に満たないといっても過言ではないのです。また「60歳まで引き出せない」、「手数料が高い」など、マイナス面が強調されることも多いようです。

 

お金が増える仕組みの裏には、必ずリスクがあります。このリスクを理解していない、いわゆる「金融リテラシーの弱者」が世界と比べて日本には多いという指摘があります。資産形成を進めていくためにも、まずはリスクとしっかり向き合うことが大切です。