少子高齢化の進展や長引く不況など、将来への不安要素が尽きないところに降りかかった今回のコロナ禍。先進国であり、社会保障や医療制度が整備された日本でも、先行きを悲観する人はあとを絶ちません。しかし、不安に思うだけでは未来は変わりません。できることから不安を軽減する方法を探りましょう。まずは「年金」です。「将来の年金受給額」という現実を直視すれば、やるべき対策が見えてきます。本記事は、ファイナンシャル・プランナーで株式会社Money & You代表の頼藤太希氏が解説します。
年収500万円で月14万円…?直視すべき「将来の年金受給額」 (※写真はイメージです/PIXTA)

プロが見ても、年金制度を正しく理解している人は少数

年金は、公的年金と私的年金の2つの制度に大別することができます。

 

公的年金には、「国民年金」「厚生年金」の2つがあり、私的年金には「国民年金基金」「企業年金」「確定拠出年金」「確定給付年金」などがあります。

 

年金制度は3階建てで構成されています。1階部分となるのは「国民年金」で、全員が加入しますが、2階以降の年金は国民年金の被保険者の種類や、会社の制度の有無などにより、加入できるものが異なります。

 

出所:厚生労働省
[図表1]年金の構成 出所:厚生労働省

 

公的年金は、20代から60代の現役世代が支払ったお金を、高齢者が年金として受け取るしくみ(=賦課方式)となっています。今後さらに少子高齢化が進展すれば、年金原資は一層減少し、高齢者の受給年金額は減額されることになるでしょう。

 

もちろん、国も高齢者の生活を脅かすことがないよう対策を立てています。現在は、年金の給付金の半分を税金で賄うほか、保険料の一部を運用する、年金の給付水準を調整(マクロ経済スライド)するといった方法で対処しています。

 

とはいえ、現状を考えればおそらく、今後の年金額は減額の可能性が高いといえます。ご自分の老後を考えるなら、現在の公的年金について正しく理解しておくとともに、速やかに準備をすすめておくことが大切です。

 

では、年金の種類について、改めて解説しておきましょう。

 

●国民年金(日本在住の20歳以上60歳未満の人すべてが加入)

 

「国民年金」は、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する年金です。原則40年間、毎月国民年金保険料を支払うことで、65歳から満額の年金(老齢基礎年金)を受け取ることになります。国民年金のみの受給者となるのは、自営業、フリーランス、専業主婦などです。

 

国民年金の保険料は毎年度見直しが行われます。令和2年度の場合は月額1万6540円です。国民年金保険料を40年支払って受け取れる年金は、満額で年78万1700円(令和2年度)です。月にすると6万5000円程度。支払いは年6回で、偶数月の15日に2ヵ月分がまとめて払い込まれますが、毎月の生活費としてはかなり厳しいといえます。

 

ご存じの通り、未納期間があれば減額されます。もし5年間未納だったら、年間10万円程度少なくなります。とはいえ、60歳時点で未納期間がある場合、65歳まで国民年金に任意加入すれば年金の受取額を増やすことができます。

 

ちなみに、国民年金保険料は6ヵ月分、1年分、2年分をまとめて前納すると多少の割引が受けられます。

 

●厚生年金(会社員・公務員が加入)

 

「厚生年金」は会社員や公務員が加入する年金です。会社員や公務員の方が毎月の給与明細を見ると、総支給額から厚生年金の保険料が引かれていることが確認できるでしょう。厚生年金には国民年金も含まれていますので、会社員や公務員の場合は国民年金と厚生年金の両方に加入していることになります。

 

毎月支払う厚生年金保険料は、毎月の給与等をもとに算出する「標準報酬月額」「標準賞与額」の18.3%(2017年9月以降)となっています。かなり多く感じるかもしれませんが、実際には厚生年金保険の半分は勤務先が負担しているため(労使折半といいます)、自分の負担は9.15%です。

 

厚生年金保険料は、加入期間が長く、報酬が多いほど納める金額が増えますが、多く納めるほど将来の年金額も多くなります。

 

厚生年金の受給額の平均は、男性が16万3840円、女性が10万2558円(厚生労働省「平成30年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」)。金額にはかなり個人差がありますが、国民年金よりも多く受け取れるケースが一般的です。