少子高齢化の進展や長引く不況など、将来への不安要素が尽きないところに降りかかった今回のコロナ禍。先進国であり、社会保障や医療制度が整備された日本でも、先行きを悲観する人はあとを絶ちません。しかし、不安に思うだけでは未来は変わりません。できることから不安を軽減する方法を探りましょう。まずは「年金」です。「将来の年金受給額」という現実を直視すれば、やるべき対策が見えてきます。本記事は、ファイナンシャル・プランナーで株式会社Money & You代表の頼藤太希氏が解説します。
年収500万円で月14万円…?直視すべき「将来の年金受給額」 (※写真はイメージです/PIXTA)

いま現在だと、あなたの将来の年金額はいくらか?

皆さんが受け取れる年金額は、どの程度でしょうか。おおよその額がわかる一覧表をご用意したので、確認してみてください。

 

※国民年金は78万1700円として計算 Copyright © Money & You Inc. All Rights Reserved.
[図表2] 国民年金満額と厚生年金の合計金額 ※国民年金は78万1700円として計算
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縦軸が平均年収、横軸が厚生年金加入期間(会社員・公務員だった期間)です。みなさんのおおよその平均年収と厚生年金加入期間をたどり、交差した箇所の金額が65歳から受け取れる年金の年額(目安)となります。

 

たとえば、平均年収500万円の方が35年間厚生年金に加入していた場合、受け取れる年金額は年174万8500円です(国民年金の満額78万1700円を含んだ金額)。これを12で割ることで、毎月の年金額がわかります。この例の場合、おおよそ14万5700円となります。

将来の年金額が不安なら「私的年金」で手当てを開始!

老後の収入が年金だけの方の場合、多くは「この年金額では心配」と思われるのではないでしょうか。ならば、公的年金を増やす、私的年金を利用するなど、自分自身でも年金を準備しておく必要があります。

 

国民年金・厚生年金といった公的年期に上乗せする給付を行うのが「私的年金」であり、「確定給付型」と「確定拠出型」の2種類に大別されます。

 

確定給付型は、加入時にすでに将来給付される金額が決まっている年金制度です。将来の予定が立てやすいのがメリットです。自営業等、国民年金第1号被保険者が加入できる「国民年金基金」、会社が導入する「確定給付企業年金(DB)」などがあります。

 

確定拠出型は、毎月の掛金の金額が決まっている年金制度です。自分で運用し、その結果を後から受け取るしくみです。運用がうまくいけば受取額が増やせます。20歳以上60歳未満の方ならほぼ誰でも加入できる「iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)」や、会社で加入する「企業型DC(企業型確定拠出年金)」などがあります。

 

私的年金への加入を検討する場合は、まず勤め先の企業にどういった制度があるのか(あるいは、ないのか)を確認しましょう。もしあるなら、将来どのくらい受け取れそうか確認してください。

 

ほかにも、下記で詳述する「付加年金」「年金の繰り下げ」等を利用すれば、自分で年金を積み増すことができます。

2年で元が取れる!毎月400円上乗せする「付加年金」

付加年金とは、毎月の国民年金保険料に400円の付加保険料を上乗せするだけで、将来もらえる年金額を増やせる制度です。具体的には「200円×付加保険料を納めた月数」の額が、毎年受け取れる年金額に加算されます。

 

付加保険料を20年間支払った場合、付加保険料の合計は400円×240カ月=9万6000円です。それに対し、増える年金額は200円×240カ月=4万8000円です。この増えた分は年金をもらい続ける限り、毎年受け取れます。つまり、わずか2年で元が取れて、3年目以降からはプラスになるのです。

 

付加年金はとてもお得な制度ですが、注意点もあります。

 

原則として、加入できるのは国民年金の第1号被保険者、任意加入被保険者のみです。会社員・公務員、その配偶者などは加入できません。また、老齢基礎年金の受給権(国民年金を10年以上納付していること)がない人、国民年金基金を利用している人も受給できません。とはいえ、お得であることには変わりませんので、要件を満たすならぜひ加入を検討してみてはいかがでしょうか。

年金を「繰り下げ受給」すれば、最大42%増やせる

年金受給の開始年齢は原則65歳からですが、60歳から70歳まで(2022年4月より75歳まで)の間なら、自分で受け取り開始のタイミングを選べます。年金の受給開始を早めることを「繰り上げ受給」、遅らせることを「繰り下げ受給」といいます。

 

年金の受給開始を1ヵ月遅らせるごとに、受け取れる年金額が0.7%ずつ増加していきます。70歳時点で受け取れる金額は、最大42%(2022年4月より、75歳まで繰り下げた場合84%)も増やすことができるのです。逆に、年金の受給開始を1ヵ月早めるごとに、受け取れる金額は0.5%ずつ減少していきます。60歳から受け取ってしまうと、最大30%も減る計算です。

 

いったん年金受給を開始すれば、年金額は生涯変更できなくなります。どの時点で年金を受け取り始めるのがトクになるかは、その人の寿命によって変わります。

 

たとえば、65歳で年金受給を開始した場合、77歳時点で60歳から受給した人の受給総額を上回ります。平均寿命の推移を考えると、老後を豊かにするために、もらえる年金が少しでも増える「繰り下げ受給」を選ぶことをお勧めします。

自分で老後資金をつくる「iDeCo」とは?

上述したように、自分でお得に老後資金を増やせる制度として「iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)」があります。

 

iDeCoは、毎月一定の掛金を自分で支払って自分で運用し、資産を増やしていきます。そのようにして、積み立てたり増やしたりしたお金を60歳以降に受け取ります。運用でお金を増やすことができれば、そのぶん老後資金をたくさん受け取ることができるのです。

 

iDeCoは毎月掛金5000円からスタートでき、掛け金は1000円単位で変更可能です。

 

原則として、20歳から60歳未満の方(2022年5月より65歳未満)なら誰でも加入できますが、掛金の上限額は働き方や会社の制度によって異なります。

 

iDeCoのメリットは、なんといっても圧倒的な節税効果です。まず、掛金はすべて所得控除の対象になるため、所得税や住民税を減らせます。たとえば、所得税率が5%の人が毎月2万円、年24万円の掛金を出した場合、所得税は掛金の5%にあたる1万2000円、住民税は10%にあたる2万4000円を差し引けるので、合計3万6000円の節税効果が得られるのです。さらには利益(運用益)が非課税で、年金を受け取るときにも税金の優遇が受けられます。