68の災害協定締結!「レスキューホテル」が評価された理由

ここ数年、大規模な地震、台風、水害などが頻発し、家屋損壊により、避難所や仮設住宅での暮らしを余儀なくされている人が急増している。その被災者のために安全・快適な居住空間の提供のために開発されたレスキューホテル。昨年のコロナ感染拡大で「レスキューホテル」が注目される出来事が起きた。その後、レスキューホテルの実用性、有用性を感じた自治体がデベロップと災害協定を締結している。いったい何が起きたのか、株式会社デベロップ営業部不動産事業統括、数野敏男氏が解説する。

長崎クルーズ船のコロナ対策に50室が出動

地震、台風、水害といった自然災害を想定して開発したレスキューホテルですが、昨年から思いもかけない事態が発生し、需要が一気に喚起されました。そう、新型コロナウイルス感染拡大です。

 

2020年4月、レスキューホテルは初めて有事の出動を行ないました。クルーズ船の新型コロナ感染拡大ですぐに思い出すのは横浜港に停泊していた「ダイヤモンド・プリンセス号」かもしれませんが、長崎市に停泊していたクルーズ船「コスタ・アトランチカ号」でも新型コロナウイルスのクラスター(感染拡大)が起きました。感染状況を把握するため、医療従事者や感染症の専門家が現地に派遣されました。

 

2020年4月、長崎に停泊中のクルーズ船でクラスター(集団感染)が発生したとき、岸壁に50戸のコンテナホテルが設置され、患者の経過観察や医療従事者の待機場所として活用されたという。
2020年4月、長崎に停泊していたクルーズ船でクラスターが発生したとき、岸壁に50戸のコンテナホテルが設置され、医療従事者の待機休憩場所として活用されました。

 

このとき、医療従事者の待機、休憩所として大活躍したのがレスキューホテルです。その数は実に50室。国および長崎県の要請を受け、千葉県と栃木県で稼働中のホテルから、50室の客室が長崎に急行したのです。初の有事出動は弊社デベロップにとっても想定外のものでした。

 

しかしこれが、「レスキューホテル」のデモンストレーションの機会となりました。客室の移動中に、現地での仮設電源の手配や給排水などのインフラ工事を同時に進めたため、要請を受けた日から3日後には客室が使用可能となり、レスキューホテルの最大の利点である迅速な移動性能を発揮することができたのです。

 

その活躍ぶりを多数のメディアに紹介されたこともあり、レスキューホテルは、全国の自治体の認知するところとなりました。

 

このように新型コロナの感染拡大が追い風となり、くしくも自然災害以外の有事における幅広い用途があることが証明されたのです。

 

国(国土交通省)や自治体と災害協定を締結

その後もコロナによる出動が続きます

 

レスキューホテルは病院や役場に隣接して設置できること、1棟・1客室の独立した構造による三密の回避、ニーズに応じて変更できる室内空間など、レスキューホテルは感染拡大防止の条件を満たしていました。

 

2020年6月には、東京都三鷹市および千代田区へ「PCR検査」体制強化のために出動しました。暑さや寒さに関係なく診療活動が行なえるため、医療従事者の負担が軽減されてよいと現在も活用されています。今年2月には都内民間病院からの要請があり、PCR検査施設として稼働しています。

 

有事にレスキューホテルのすみやかな出動が行なえるよう、デベロップは地方自治体との災害協定の締結に力を注いでいます。昨年来、新型コロナウイルス対策としての出動実績が高く評価され、自治体からの問い合わせは急増。2021年9月現在、協定を締結した市町村は千葉県の28を筆頭に、全国68市町村に及びます。

 

協定を結んだ市町村に対しては、平時の防災訓練に参加するなど、地域住民や地元協力企業との交流や相互理解に努めています。

 

また3月22日には、国土交通省関東地方整備局と災害協定を締結しました。一民間企業が国と協定を結ぶことは極めて異例で、有事におけるレスキューホテルの重要性、さらにはホテルを公益に活かすデベロップの企業理念に賛同が得られたものと考えています。

 

コンテナの開発からホテルのオペレーションまで

レスキューホテルの開発から運営まで、弊社デベロップはすべて自社内で完結しています。すなわち、建築用コンテナの製造から客室の内装、現地での据え付け、仮設電源の接続、水回りのインフラ工事、そしてホテルのオペレーションまで、すべてを弊社の管理下で行なっています。

 

一般にコンテナというと、海上輸送用コンテナや貨物コンテナをイメージされると思いますが、我々が使用しているのは「建築用コンテナ」です。ハードのコンテナ自体、弊社の厳重な品質管理のもと、関連会社で製造しています。

 

建築確認申請や旅館業の許可など、コンプライアンスを遵守したうえで「レスキューホテル」という新たなビジネスモデルに取り組む姿勢が、国や自治体からの信頼獲得につながっているといえるかもしれません。

 

数野敏男
株式会社デベロップ 営業部 不動産事業統括

 

株式会社デベロップ 営業部 不動産事業統括

慶應義塾大学卒業後、東京建物に入社 都市開発、ビル開発、住宅企画・販売に携わる。また子会社の代表取締役として、不動産業界向けITコンサル、デジタルマーケティング支援事業に従事。
その後、株式会社LIFULLにて、執行役員として不動産投資事業、分譲マンションの事業部長や子会社の代表取締役を兼任。楽天とのJV民泊事業会社の立上げ、クラウドファンディング、地方創生等の新規事業の立上げを行う。
近年は、TOB直後のマザーズ上場不動産会社の取締役COOとして、不動産再生、ホテル開発・運営事業を管掌しつつ、独立してITコンサル、地方創生、不動産再生、ホテル事業やコンサル事業に従事。
現在は、株式会社デベロップにて、次世代型建築として注目されている建築用コンテナモジュールを活用したホテル・住宅・店舗等の建築及び不動産投資商品の開発・企画・販売を担当。「レスキューホテル」仕入、開発、販売担当

【株式会社デベロップ】
2007年創業。トランクルーム事業、不動産開発事業、エネルギー事業、子育て支援事業を手掛けつつ、2017年よりホテル事業をスタート。「HOTEL R9 The Yard」をブランド名として、平時にはホテルとして運営される客室を、災害など有事の際に被災地などにすみやかに移設して地域の暮らしを守る、新しい公益のためのしくみであるレスキューホテルを拡大中。2021年9月現在、41拠点、1,370室を展開(開業準備中を含む)。68の自治体等がレスキューホテル出動要請のための協定を締結。年商約100億円(2019年度)、従業員数450名の規模で展開中。

著者紹介

連載デベロップ「レスキューホテル」が日本を元気にする

取材・構成/平尾 俊郎
※本インタビューは、2021年4月2日に収録したものです。

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