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新政権誕生…アメリカ不動産市場への影響は?
2020年のアメリカ大統領選挙は歴史的な接戦の末、民主党のジョー・バイデン氏の勝利。トランプ前大統領は「選挙結果は不当」と批判の声を上げ、泥沼化を懸念する声もありましたが、今年1月にはバイデン氏が正式に大統領に就任しました。
これにより、アメリカ不動産市場にはどのような影響があると現地では考えられているのでしょうか?
米国の不動産ニュースメディア「The Real Deal」がアメリカ国内の不動産関係者465人に行った「どちらの大統領候補が不動産市場により良い影響を与えるか?」というアンケートに対して、回答者のほぼ半数に迫る49%がトランプ氏と答えています。一方、バイデン氏と答えた回答者は29%にとどまりました(※1)。
このアンケートでバイデン氏を選んだ人の地域別の割合を見ると、ニューヨークとシカゴで34%、サウスフロリダで24%、ロサンゼルスに至ってはわずか15%程度(※2)。リベラルな気風で民主党支持者が多く、今回の選挙でもバイデン氏が勝利したカリフォルニア州のロサンゼルスでも低い数字なのは、興味深い結果だと言えるでしょう。
バイデン政権は不動産市場にどんな影響を与えるか?
こうした結果を示す大きな理由として、バイデン氏が社会的弱者を重視した政策にシフトすることを予想する人々が多いことが挙げられます。実際にバイデン氏は、低所得世帯向けの家賃補助プログラムの強化を提言するなど“持たざる人々”をサポートする方針をすでに示しています。
またバイデン氏は富裕層の優遇傾向を批判していることでも知られており、トランプ政権下の2017年に成立した税制改革法についても強く批判。法人税の引き上げなどにも積極的な姿勢を示しています。
バイデン氏が大統領に就任することで、富裕層を優遇するような政策や税制の大幅な見直しが予想されますが、とりわけ不動産業界人が特に気にしているのが「1031エクスチェンジ」と呼ばれるアメリカ独自の税制度の行方です。
バイデン大統領は「1031エクスチェンジ」廃止も検討
「1031エクスチェンジ」とは不動産投資にも大きく関わる税制度。通常、不動産を売却した際の差益にはキャピタルゲイン税が発生しますが、その売却益を同種の不動産に再投資することを条件に、キャピタルゲイン税の繰り延べができるという制度です。
一見、税の支払いを先送りしているだけのようにも見えますが、この制度には「税として収めるはずの金額も元本に含めて再投資できる」という大きなメリットがあります。つまり、レバレッジを効かせた運用ができるのです。
ミレニアル世代を中心とした需要増加や、住宅ローンの金利がかつてないほどに低くなっていること、また在宅時間が長くなったことで住居の品質を重視する人が増えたことなどが背景として考えられます。こうした地域では不動産需要はコロナ禍以前よりも高まっており、物件価格も上昇傾向にあるようです。
これは投資家にとって有利なことはもちろん、不動産市場全体にとってもプラスに働きます。税徴収を免れたキャッシュは、不動産市場にとどまるからです。しかし、バイデン氏はこの1031 エクスチェンジの廃止も視野に入れていると見られており、投資家や不動産業界団体のなかにはそれによって不動産市場全体がシュリンクしてしまうのでは……と心配している人も多いというわけです。
バイデン氏の大統領就任で、大きな変化が訪れるかもしれないアメリカ不動産市場。今後の動向にも要注目です。