多くの人が憧れるタワーマンション。年々増えてはいるものの、一般のマンションに比べれば数が少なく、新築・中古いずれの価格も上昇傾向にあります。今回は、都内で購入する場合に「狙い目」となるエリアを、複数のデータをもとに考察します。※本連載は、将来お金に困ることがないように、若いうちからできるライフプランニングに役立つ情報を紹介する「ライフプランnavi」の記事を抜粋、一部改変したものです。

タワマンの棟数が多い港区、戸数が多い江東区

現在、東京都内でタワーマンションが数多く建っているエリアはどこなのでしょうか。不動産調査会社の東京カンテイによれば、2018年10月現在、都内で20棟以上タワーマンションが建っているのは、以下の区です。

 

出典:東京カンテイ プレスリリース「タワーマンションのストック数(首都圏)」(2018年10月31日)
出典:東京カンテイ プレスリリース「タワーマンションのストック数(首都圏)」(2018年10月31日)

 

棟数では港区、戸数では江東区がそれぞれ最多です。1棟平均戸数から、江東区では比較的大型のタワーマンションが多いことがわかります。江東区内でも、亀戸などの内陸部ではなく、お台場など、いわゆる湾岸エリアにタワーマンションが多く建設されており、そういったエリアでは就学児童の数が一気に増えているというデータもあります。

 

江東区では湾岸部の地価がそこまで高くなくまとまった土地もあったために、タワーマンションが急増したと考えられます。

 

また、中央区はマンションの数は少ないながら戸数が多く、特に大型のタワーマンションが多く建てられていることがわかります。千代田区、中央区、港区の都心3区を比較すると、千代田区はタワーマンションの数がそこまで多くありません。これは大型マンションを建てられる広い土地の供給が少ないためだと推察され、逆にいうならば、千代田区のタワーマンションはそれだけ希少性が高いともいえます。

今後、多くのタワマン建設が予想される「中央区」

次に、2020年以降タワーマンションが建てられるとされている予定エリアを見てみましょう。

 

下記は2019年時点のデータです。このデータでは、港区で圧倒的にタワーマンション建設予定が多いことがわかります。

 

出典:株式会社不動産経済研究所「超高層マンション市場動向 2019」
出典:株式会社不動産経済研究所「超高層マンション市場動向 2019」

 

また、中央区では、2020年東京オリンピックの開催後、オリンピック選手村跡地に大型タワーマンション建設が予定されているため、港区にひけをとらない戸数の増加が見られそうです。中央区は湾岸地域に属するエリアもあり、千代田区や港区よりも比較的土地に余裕があります。そのため、大型のタワーマンションを建てやすいのです。

 

ちなみに、江東区での建設予定数は7棟とわずかです。理由は不明ですが、同区のタワーマンション建設はピークを過ぎたのかもしれません。

 

新宿や渋谷などの副都心は駅周辺などでの大型開発計画が複数進行しており、今後も居住需要が増えることが予測できます。その受け皿として、今後もタワーマンションが増えていきそうです。

 

同データでは、葛飾区がランクインしているのも目を引きます。葛飾区はいわゆる下町に属するエリアで、東京23区内における平均公示地価は下位です。そのため、販売価格も都心エリアに比べれば低くなると想定されます。

 

下町エリアにまでタワーマンションが増えるということは、富裕層以外においても居住需要が増えていることがうかがわれます。

 

いままで比較的地価が低かった江東区ですが、現在地価は上昇傾向にあり、同区のタワーマンションも中流層にはなかなか手を出しにくい価格帯になっています。今後は相対的に地価の低い、都心区以外の区でも建設が増えるのかもしれません。

 

タワーマンションの価格推移

東京都内のタワーマンションの平均価格は、ここ数年以下のように推移しています。

 

2014年…5,994万円
2015年…6,732万円
2016年…6,629万円
2017年…7,089万円
2018年…7,142万円

出典:全国マンション市場動向

 

2014年と2018年を比較すると、約20%も価格が上昇しています。2017年から2018年にかけての伸びは緩やかですが、それでも価格が上昇傾向にあることに違いはありません。

 

その要因として東京23区内の土地価格の上昇が挙げられそうです。主な区の公示地価平均は2014年から2019年の5年で以下のように変化しています。

 

出典:土地代データ ※数字は円/坪
出典:土地代データ
※数字は円/坪


渋谷区や中央区では上昇率が非常に高い一方、葛飾区では10%未満の伸び率です。

 

そのため、他の区と比べるとまだ安価で土地調達が可能であることが、タワーマンションの建設が進む要因のひとつとなっていると考えられます。江東区も、上昇率は20%を超えていますが、価格で見ると都心5区と比べてまだ低い水準にあります。

 

これからタワーマンションの購入を検討する場合、十分な余裕資産がある資産家のかたは別として、地価高騰が進んだ都心5区よりも、比較的地価の上昇率が低い葛飾区など、東京東部で建設される物件に注目するとよいでしょう。

タワーマンションが集まるエリアのメリット

タワーマンション1棟には300~600世帯、人口でいうと750~1500人程度(1世帯2.5人で計算)が暮らすことになります。何棟ものタワーマンションの密集は、当然のことながら大きな人口増加をもたらし、住民の消費行動等は周辺環境にさまざまな影響を及ぼします。

 

たとえば、多くのタワーマンションが建設された江東区の東雲エリアは、2005年から2020年までの期間において、約1万人から約2万6000人と、2.6倍もの人口増となりました(江東区Webサイトより)。

 

東雲周辺はお台場も徒歩圏内であり、観光地と新興住宅地が共存するエリアです。人口増加にあわせて、周辺には大型スーパーやショッピングセンターが建設され、生活の利便性は大いにアップしました。

 

タワーマンションを購入する層は比較的高所得であり、その層をターゲットとしたショップの増加がエリア全体の雰囲気づくりに貢献し、地価の向上にも影響しています。このような循環がタワーマンションの資産価値をますます高めているのです。

 

もちろん、タワーマンションの建設が土地価格の維持・向上に直結するわけではありませんので、その点を踏まえておくことが重要です。

まとめ

高価格な物件が多いタワーマンションですが、比較的手頃な価格を探すなら、葛飾区の物件に注目しておくとよいでしょう。また、江東区も都心区に比べれば比較的低価格であり、とくにタワーマンションが密集しているエリアであれば、資産価値の上昇も期待できます。

 

一方、手持ちの資金が潤沢で売却によるキャピタルゲインを狙うなら、地価上昇率が高い中央区のタワーマンションがターゲットになるでしょう。人気物件は購入も抽選になることが一般的ですが、中央区は建設予定が豊富にあり、購入機会にも恵まれています。

 

タワーマンションのエリア選びにおいても、自身の予算や目的に応じた選択が必要です。

 

 

 

※本連載は、『ライフプランnavi』の記事を抜粋、一部改変したものです。