以前は、管理が難しく人気がなかった「戸建」の運用
ご存じの方も多いとは思いますが、REIT(リート)とは、不動産投資信託を指し、不動産投資を行う業者に資金を提供し、利益を配当してもらうという金融商品です。一棟まるごと買う不動産投資などと比べると、より小口でも投資ができるという特徴があります。今回はこのREITの側面からアメリカの不動産投資を見てみましょう。
REITにも扱う不動産によって種類があります。アメリカでは、戸建の不動産運用は、1990年代までは敬遠されていました。人気があったのは、マンション・アパートの賃貸運用や学生/シニア向けのアパート運用などでした。
戸建の運用が敬遠されていた理由は、その建物の形態によるものでした。物件が1戸1戸散在しているので管理が大変だからです。マンション・アパートなら、ひとつの建物、あるいは複数の建物でも一箇所に何戸も設置されているので管理が容易です。なかでも特定の入居者をターゲットにした運営はやりやすかったため不動産投資として人気があったわけです。
とはいえ、戸建の賃貸は、もともと1件あたりの賃料は高く、借り手も比較的収入が安定しているので、家賃の滞納が少ないといったメリットはありました。
「IT技術の進歩」で戸建の管理が楽になった
この戸建運用の事情は、2000年代後半から変わってきます。2008年の金融危機は、資力が十分ではない人達にも融資をして安易に住宅を購入させたサブプライムローンの破綻が発端でした。それ以降、住宅ローンの審査が厳しくなり、以前ほど簡単には家を買うことができなくなったため、持ち家比率が低下していきました。特に若年層が家を買わずに、戸建であっても賃貸を好む傾向が出てきました。
一方IT技術が進み、物件が散在していても不動産の管理がしやすくなりました。遠隔操作で鍵を開けたりすることもできるようになったからです。それによってアパートと同じような一括運営が容易になってきました。そうなると戸建住宅のメリットも注目され、ポートフォリオ的に運用されるようになってきました。
物件管理ソフトウェアの会社で、2004年に設立された『Buildium』社(ボストン)や『AppFolio』(サンタバーバラ)は2012年頃から急成長を遂げています。この流れのなかで、戸建賃貸運用に特化した戸建REITが登場しました。