ネイチャーグループは、資産運用・資産承継の分野において、日本最大級のコンサルティングファームである。本企画では、代表税理士・芦田敏之氏へのインタビューを通じて、同グループが富裕層から圧倒的な支持を集める理由を探っていく。第1回のテーマは、「国際税務を巡る情勢」について。2020年度税制改正大綱において、禁止されることがほぼ確実となった「海外不動産を活用した節税スキーム」の話題を中心に、今後の展望を聞いた。

2020年度の「税制改正大綱」に、富裕層が震撼した

令和に元号が変わって最初の年の瀬に、政府与党(自由民主党・公明党)による2020年度税制改正大綱が公表された。これをベースとした税制改正法案が国会に提出され、2020年3月までには改正法が成立する見通しだ。主要なマスコミではさほどスポットが当てられなかったものの、実は大綱の中には海外に資産を所有している人たちを震撼させる改正案が含まれていた。

 

国際税務に特化して同分野で多大なる実績を誇るネイチャーグループの芦田敏之代表税理士は次のように述べる。

 

「私たちは税制改正大綱公表の翌日に、当社のホームページ上で速報版のポイント解説を配信しました。おそらく、世界最速の対応だったのではないでしょうか? いくつかの改正案の中でも、特に大きな影響が及ぶ可能性があるのは、海外で所有している中古不動産に関するものでしょう」

 

今回の税制改正に限らず、ネイチャーグループはつねに国内外の最新の税務情報をアップデートし、その対応力で顧客から絶大なる支持を獲得してきた。国内外の100を超える金融機関とも太いパイプを築き、多種多様な顧客のニーズに対応できるのも強みだ。

 

芦田氏率いるネイチャーグループは、税理士法人ネイチャー国際資産税と株式会社ネイチャーFASから構成されている。前者は国際資産税の総合コンサルティングを展開、後者は税務対策を加味した最適な資産運用・ポートフォリオ形成のサポートを行っている。

 

今回の改正では、海外で所有している中古不動産に関する税制がどのように変わるのか? まずは、改正前の現行の制度についておさらいしておこう。

 

海外中古不動産を活用した節税スキームとは?

海外で所有する不動産から得られた運用益には、必要経費を差し引いたうえで日本の税金が課されることになる。必要経費の中でも大きなウエートを占めるのが減価償却費で、不動産の場合は取得価額を法定耐用年数で割った金額となる。

 

法定耐用年数は建物の構造によって異なり、住宅用の木造建築は22年、レンガ造・石造は38年、鉄筋コンクリート造は47年となっている。だが、法定耐用年数を超えて現存している中古物件も多く、そういったケースでは「簡便法」を用いて耐用年数を見積もる。

 

その計算式は「法定耐用年数×20%(端数切り捨て)」。たとえば築後35年が経過している木造物件(法定耐用年数22年)であれば、「22年×20%=4年」となる。

 

つまり、法定耐用年数を超えている中古物件は、短期間のうちに多額の減価償却費を計上できるわけだ。海外には、日本よりもはるかに築古の中古物件が無数に存在している。

 

税理士法人 ネイチャー国際相続 代表税理士・芦田敏之氏
税理士法人 ネイチャー国際資産税
代表税理士・芦田敏之氏

「日本国内では新築物件と中古物件の価格差が大きいのに加え、相対的に土地の価値が高く、建物の価値は低い。これに対し、海外では新築物件と中古物件との価格差が日本と比べて小さく、土地よりも建物の価値のほうが高いのが一般的です」(芦田氏)

 

日本では新築がもてはやされ、中古になった途端に人気がガクンと下がる。こうしたこともあり、建築から解体までのサイクルも短い。しかし、海外ではかなりの築年数が経過しても中古物件の価値は安定的に推移している。

 

「海外で中古物件を取得して賃貸に回しておけば、家賃収入を上回る減価償却費を計上し、不動産所得で損失が発生しているという税務処理が可能でした。そして、他の所得と損益通算することによって所得税額を抑えられたのです」(芦田氏)

 

税制が変わる局面では「プロ中のプロの知見」が不可欠

先に述べたように、海外不動産を活用した節税スキームは封じ込められ、2021年分から新たな税制が適用される見通しだ。実は2016年の時点で会計検査院が海外中古不動産の耐用年数の判定を見直すべきだと指摘しており、水面下では検討が進められてきた税制改正だった。

 

では、具体的に何がどのように変わったのか? 芦田氏はこう説明する。

 

「海外で得た不動産所得の計算上において損失が生じた場合、簡便法によって導き出した耐用年数で計算した減価償却費は生じなかったものとみなされ、その部分を他の所得と損益通算できなくなります。この規定によって生じなかったものとされた減価償却費については、譲渡所得の計算上において取得費から控除しません」(芦田氏)

 

結論をいえば、2021年以降は海外で所有している中古不動産に対して新たなタックスプランニングが求められてくる。一方で、「2020年までに取得した海外中古不動産における減価償却費の経過措置や、法人名義で所有する海外中古建物における減価償却費の取り扱いに関しては税制改正大綱に明記されていない」(芦田氏)のも確かである。

 

今回のように、海外資産に関する税制が大きく見直される局面では、グローバルなネットワークを通じて国際税務に精通し、税務当局の見解などに関する最新情報にも敏感なプロフェッショナルの知見が不可欠となる。

 

国際税務を巡る情勢は刻々と変化しており、ネイチャーグループはフレキシブルで的確な対応を続けてきた。だからこそ、設立からわずか8年間で膨大な顧客を集め、極めて高い支持を獲得するに至っているのだ。

 

取材・文/大西 洋平 撮影(人物)/永井 浩
※本インタビューは、2019年12月9日に収録したものです。