独立・開業には様々な選択肢があるが、地域や社会に貢献できる事業として人気を博すのが「塾経営」である。親たちの教育熱は依然として高く、駅前や街中にはたくさんの学習塾が存在し、そこに通う子どもたちの姿を目にすることも多い。一方で少子化が進み、業界の衰退が始まっていることも事実である。厳しさ増す環境のなか、学習塾経営はこの先もビジネスとして魅力的なのだろうか。そして今後も勝ち続けるには、何が必要なのだろうか。関西を中心に学習塾を展開する、株式会社成学社FC事業部FC運営課長の小林大輔氏にお話を伺った。第2回目のテーマは、学習塾業界で個別指導が支持される理由である。

「オーダーメイドの対応」が可能な個別指導の学習塾

街を歩くと、個別指導塾の看板を見かけることが多くなった。よく見ると、名の知れた予備校の個別指導塾ということも珍しくない。ところで学習塾における個別指導とはどのようなものか、イメージはつくだろうか。

 

学校の授業のように何十人、あるいは100人以上もの生徒に対して、一人の講師が授業を行うのが集団指導。それに対し、講師と生徒が1対1、あるいは講師一人に対して生徒2〜3人などの少人数で行われるのが個別指導だ。講師が同時に2〜3人の生徒を指導していても同じ内容を教えるのではなく、あくまで指導はそれぞれの生徒に対して行われるのが特徴である。また、個別指導の学習塾の教室では一般的に、一人ひとりが集中して勉強に取り組めるようパーテーションのついた一人用の席が用意されており、その横で講師が指導をする。

 

このような個別指導を利用する最大のメリットは、子ども一人ひとりの学習レベルや目標、目的に合わせたオーダーメイドのカリキュラムに基づいて指導を受けられることである。

 

中学校や高校の授業、あるいは集団指導の学習塾では、30〜40人かそれ以上の生徒が一つの教室にいて、それぞれが違う高校や大学を目指しているのに、授業で教える内容は一緒である。生徒の一人ひとりが内容をしっかりと理解しているのか、確認しながら授業を進めることは事実上不可能だと、株式会社成学社のFC事業部FC運営課長の小林大輔氏はいう。

 

株式会社成学社FC事業部FC運営課長 小林大輔氏
株式会社成学社FC事業部FC運営課長 小林大輔氏

「個別指導の塾では、子どもの現在の学力に合わせることはもちろん、目指している高校や大学を狙えるだけのスケジュールやカリキュラムを組み、それに見合う水準の教材をそろえて、オーダーメイドの指導を行います。もし理解できていないところがあれば、そこを流してしまうのではなく、理解できるまで徹底的に指導するのです」(小林氏)

 

加えて、スケジュールに柔軟性があることや少人数のために質問がしやすいこと、講師の目が届きやすいというのも、個別指導の大きなメリットだろう。従来からの個別指導の代表的なものに家庭教師がある。同じように1対1で指導をするスタイルだが、個別指導の学習塾とは、大きな違いがある。その一つが、講師の質である。

 

「家庭教師の場合は、講師として派遣された大学生の実力や能力によって、指導の質が左右されてしまうという決定的なリスクがあるのです」(小林氏)

 

さらに、指導の内容にも大きな違いがあると小林氏は語る。

 

「家庭教師は、持っている教材を復習したり、学校の授業で理解できなかったところを教えてもらったりするには良いでしょう。しかし、目標の高校や大学を定め、それに合わせて年間のカリキュラムをしっかりと組んで進めていくというノウハウを持っていません。学校の予習と復習だけで、本当にその目標を達成できるのかというと、疑問が残るでしょう」(小林氏)

 

実際、家庭教師に進路相談をしたとしても、個人の主観が大きくなり、適切な指導をするのは難しい。また家庭教師の場合、基本的に学びの場は生徒の自宅となり、講師が来るのに合わせて保護者は在宅していなければならない。共働きが多くなっている今、家庭教師という選択は親にとって負担が大きいというのも現実だ。

個別指導の学習塾のデメリットとは?

一見、メリットばかりに見える学習塾の個別指導だが、集団指導のほうが優れている点はないのだろうか。

 

「集団指導の学習塾と比較したときの弱点の一つは、講師の質です」(小林氏)

 

集団指導の学習塾で指導をするのは、その多くがプロの講師であり、一般的には受験対策も視野に入れたレベルの高い授業が行われている。また、そのような学習塾では受験に対する情報やノウハウも豊富で、全国模擬試験も積極的に取り入れているので、生徒の相対的な立ち位置をつかむことも比較的容易だ。

 

「特に、歴史のある集団指導の学習塾は、指導に対して経験値が高いと言われています。そこには、授業構成や教材作成、受験指導などに、長年積み上げてきたノウハウがあるからです」(小林氏)

 

さらに、集団指導の塾は、高校や大学の受験を見据えて組み立てられたカリキュラムを、年間を通して着実にこなすので、一定のペースで学習を進めていきたい子どもに向いている。また大勢の仲間とともに学習するので、競争心や負けん気が強い子どもには、最適な環境ともいえる。そのため、集団塾に向いている子どもにとっては、学力の面でも、人間性の面でも、大きな成長が見込めるという。

 

「個別指導塾では、どこでもアルバイトの大学生が中心となって指導を行うので、学習へのモチベーションは、講師個人に左右されるところがあります。学力という面では、プロの講師と同レベルの優秀な学生はたくさんいるので問題はありませんが、進路指導や受験のノウハウという面では、弱いといえるでしょう。それらをどうやって補っていくのかが、個別指導の学習塾で結果を出していくためのポイントになります」(小林氏)

 

また、通塾にかかる費用にも、集団指導に分がある。1回の授業で多くの生徒に授業をすれば、それだけ効率が上がり、生徒一人あたりの経費は抑えられるが、個別指導では一度に教えられるのが1〜3人程度であり、効率が悪くなる。しかし、この点でも保護者の考えには変化が生じている。

 

「せっかく学習塾を活用する以上、たとえ費用が高くなっても、我が子に合った教育で確実に学力を伸ばしてほしい、と考えている保護者が増えているのです」(小林氏)

 

次回は、個別指導塾の弱点を克服することで、質の高い個別指導塾を実現している成学社の「個別指導学院フリーステップ」について、詳しく見ていく。

 

 

取材・文/関根昭彦 撮影(人物)/関根明生
※本インタビューは、2019年7月25日に収録したものです。