賃貸経営において、経年劣化に伴う資産価値の低下は避けられないリスクである。そんな中、常識とは相反する「経年優化」という考えにこだわり支持されているのが、三井ホームの賃貸経営である。本連載では、三井ホーム株式会社コンサルティング事業部の島﨑康弘氏、伊藤哲雄氏、同社営業推進部賃貸・用地グループの依田明史氏にお話を伺い、長期的かつ安定的な賃貸住宅経営を実現する「経年優化」の考えを紐解いていく。最終回は、実際に三井ホームで賃貸物件を建てたオーナーに「三井ホームを選んだ理由」を伺った。

供給過多エリアに新たな需要を見出す「提案力」

東京都心から30分圏内のベッドタウンに暮らすTさん。先祖代々の土地持ちで、父の代からその一部を賃貸経営に活用してきた。“初代”のアパートを皮切りに、少しずつ棟数を拡大。2018年には新たにメゾネットタイプの新築数棟が完成した。所有者は90歳を超える父親だが、将来的な相続を見越し、プランニングを含む実際のオーナー業はTさんが担っている。

 

 

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「もともと、このあたり一帯はどこも農地でした。それが、沿線の開発に伴って住宅需要が増え、地主の相続税対策も相まってマンションが増えていったんです。先祖代々の畑を所有していたうちにも、いろんなデベロッパーさんが話を持ち掛けてきましたよ」

 

そのなかからTさんがパートナーに選んだのは三井ホームだ。他社にはない提案力に魅かれた。


じつは三井ホームに依頼をするのは今回が二度目。2010年に建てた別のアパートも同社が手掛け、当時の仕事ぶりに満足していたという。

 

オーナーのTさん。時とともに少しずつ姿を変えていく物件を見るのが楽しいという
時とともに少しずつ姿を変えていく建物を見るのが楽しみだと話すTさん

「このあたりは一気にマンションが増えたため、すでに住宅が供給過多になりつつありました。そんななかで他と同じような物件を建てても、空室リスクや家賃下落リスクは避けられません。そこで三井ホームが提案してきたのが、メゾネットタイプの戸建て風アパートです。家賃は高くなりますが、借りる層が多いため、十分に需要が見込めるということでね」

 

続けてTさんは、建物が完成するまでの様子を、なんとも楽しそうに話してくれた。

 

「当時の担当者がとにかく一生懸命、かつ仕事が丁寧で、一緒につくったという感覚がありました。外構や管理会社も含め、チームとしての一体感があった。ですから、感謝のしるしとして関わった会社すべての名前をアパートの看板に刻んだんですよ。そこを通る人に向けて宣伝になればいいと思ってね」

 

 

賃貸のオーナー業は「街の景観をつくる」仕事

三井ホームの提案を受け、Tさんにはあるイメージが浮かんだ。かつてロンドン郊外で見た風景だ。

 

 

「昔、仕事でコッツウォルズという街に行ったとき、石造りの建物が並ぶ街の風景に感動しました。そんな、街の景観に馴染む美しい建物をつくりたかったんです。建物そのものや設備については三井ホームを信頼していますので、そこは専門家にお任せで。一方、外観の色合いや照明などは私の頭のなかにあるイメージをお伝えし、取り入れてもらいました。アンテナや電線も、通りからはなるべく見えない場所に配置し、駐車場も各戸に附属させるのではなく、敷地の奥に数台分をまとめて置けるようにしています。とにかく、“見え方”にはこだわりましたね」

 

実際、その一角は賃貸アパートというより、一つの街並みのように美しく調和がとれている。完成と同時に評判になり、立ち止まって眺める人も多いという。

 

とにかく景観にこだわったというTさん。敷地内に電線は見当たらず、気持ちのいい“抜け感”は周辺住民からも評判がいい
とにかく景観にこだわったというTさん。敷地内に電線は見当たらず、気持ちのいい“抜け感”は周辺住民からも評判がいい

「イメージのよい建物ができると、そこを人が通るようになるんですよ。まだ工事中のときに、ここの雰囲気を気に入って、入居を決めてくれた人もいるくらいですからね。せっかくなら、街行く人に素敵だな、住みたいなと思ってもらえるものにしたかったので満足しています。オーナー業ってただのビジネスじゃなくて、街の景観をつくるという意義もあると思うんですよ。ですから、外構や植栽にもこだわっていて、時間の経過とともに景観が育っていくような楽しみも取り入れています」

 

現在、管理業務は賃貸管理会社に委託しているTさんだが、毎日現場へ足を運び、植栽の手入れなどは自ら行う。アパートを美しく保つメンテナンスは、Tさんのライフワークとなっているようだ。

 

「植栽はバランスが大事なので、毎日の手入れは欠かせません。明るい雰囲気を保つために、季節ごとの花も絶やさないようにしています。あとは照明ですね。クリスマスの時期などはイルミネーションを入れたりもします。普段の照明とのバランスを考え、差し込みを調整するなど、あれこれ工夫するのが楽しいんですよ」

 

そうした努力も実り、Tさんのアパートは満室を維持。退去が出ても、すぐに新しい入居者が決まるなど好調だという。

 

人口減で賃貸物件が供給過多になっていくこれからの日本においては、他にはない魅力を持った“埋もれない物件づくり”が求められる。それにはオーナー自身の情熱はもちろん、その思いを叶えつつ適切に舵取りをするパートナーの存在が欠かせない。

 

 

 

取材・文/前田智行 撮影/押木良輔(人物)
※本インタビューは、2019年2月25日、27日に収録したものです。