賃貸経営において、経年劣化に伴う資産価値の低下は避けられないリスクである。そんな中、常識とは相反する「経年優化」という考えにこだわり支持されているのが、三井ホームの賃貸経営である。本連載では、三井ホーム株式会社コンサルティング事業部の島﨑康弘氏、伊藤哲雄氏、同社営業推進部賃貸・用地グループの依田明史氏にお話を伺い、長期的かつ安定的な賃貸住宅経営を実現する「経年優化」の考えを紐解いていく。第2回目のテーマは、「いま収益用アパートに求められるもの」である。

賃貸住宅にも「高性能」が求められる時代に

アパート経営において重要なことはいくつもあるが、近年注目されているのが「住宅性能」だ。従来の賃貸物件は持家に比べ、性能面で大きく遅れをとっていた。それでも、数年単位での住替えを前提とした賃貸の場合、割り切ってそこに住むのが普通だった。

 

 

ところが、近年では賃貸物件にも高い性能を求める傾向が見られる。その理由の一つが、若い世代の賃貸住宅に対するシビアな評価だ。住宅建築技術が進歩し、遮音性や断熱性に優れ、ハイグレードな設備を備えた「実家」で育った若い世代は、住居に求めるレベルが相対的に高い。そのぶん、初めて賃貸住宅で一人暮らしをしたときに、性能面でのギャップを感じやすいのだ。

 

リクルート住まいカンパニーの調査によれば、遮音性、断熱性・省エネ性のいずれも、20代以下の過半数が、賃貸住宅よりも実家のほうが「満足度が高い」「満足度がやや高い」と回答している(2016年度 賃貸契約者に見る部屋探しの実態調査 首都圏版)。

 

[図表] 賃貸契約者に見る「遮音性」に対する意識

出展:リクルート住まいカンパニー「2016年度 賃貸契約者に見る部屋探しの実態調査(首都圏版)」より
出典:リクルート住まいカンパニー「2016年度 賃貸契約者に見る部屋探しの実態調査(首都圏版)」より

 

[図表] 賃貸契約者に見る「断熱性・省エネ性」に対する意識

出典:
出典:リクルート住まいカンパニー「2016年度 賃貸契約者に見る部屋探しの実態調査(首都圏版)」より

 

依田
三井ホーム株式会社 営業推進部 賃貸・用地グループ グループ長 依田明史
 

依田氏「断熱性や耐震性、遮音性は、住んでみて初めて違いがわかります。それらが実家に比べて明らかに劣るようでは、せっかく入居者がついてもすぐに退居してしまうかもしれません。逆に快適であれば、長く住んでもらえる可能性も高くなるはずです」

 

空室リスクや家賃の下落リスクを回避するためにも、同じ入居者になるべく長く暮らしてもらえたほうがオーナーとしては安心だ。そのためには、ある程度のコストをかけ「選ばれる賃貸住宅」をつくる必要がある。

 

島崎
三井ホーム株式会社 コンサルティング事業部 営業グループ兼特建グループ 営業グループ長 島﨑康弘 

島﨑氏「私たちもお客様から『性能はそこそこでいいから、できるだけ建築費を抑えたい』といったご相談をいただくことはあります。しかし、入居者に長く暮らしてもらうためには最低限担保すべき品質がありますので、そこはお客様にも丁寧に説明し、ご納得いただいています。たとえば、サッシは遮熱・断熱性の高いアルミクラッド樹脂サッシを標準仕様とし、屋根には優れた断熱性能と高い構造耐力を両立させたオリジナル部材を採用しています。また、遮音性やシックハウスへの対策も万全です。決して、安ければいいというものではない。我々はそう考えています」

 

賃貸経営は、何十年と続くものだ。最終的に満足のいく結果になるのは、目先のコストにこだわった場合か、それとも長期的な視野で入居者ニーズに応えていける住宅をつくった場合か、容易に想像できるのではないだろうか。

 

 

遮音性や断熱性…進化した「木造の優位性」

三井ホームが得意とし、メインで取り扱うのは「木造」だ。従来の木造アパートには、鉄筋コンクリート造に比べて遮音性や耐震性・耐火性で劣るイメージがあった。しかし、昨今では、木造の優れた性能が見直されつつある。

 

 

伊藤さん
三井ホーム株式会社 コンサルティング事業部 営業グループ長 伊藤哲雄
 

伊藤氏「多くの方が、木造は災害時に壊れやすい、燃えやすいといったイメージをお持ちなのではないでしょうか? しかし、三井ホームの木造賃貸住宅には『プレミアム・モノコック構法』という独自技術を採用しており、震度7の実大振動実験に60回も耐え抜くなど、高い耐震性が特徴です。耐火性についても、鉄よりも木のほうが火に強いことが、実験によって証明されています。また、音に関しても、標準仕様で新築分譲マンション並みの遮音性を実現しており、従来の木造住宅における課題はすべてクリアできていると考えています」

 

RC 造や鉄骨造のマンションの大半は耐震等級1。一方、三井ホームの賃貸住宅は、消防署など、災害時の支援拠点となる建物の耐震性能に匹敵する耐震等級3※1に対応している。国土交通省の調べによると、耐震等級3に対応する共同住宅は日本全体で1.7%※2に過ぎないというから、三井ホームの賃貸住宅の耐震性能がいかに優れているかが想像できるだろう。

 

※1 住宅性能表示制度における等級。三井ホーム自社評価による。一部エリアや商品タイプによって対応しない場合がある

※2 国土交通省「建設住宅性能評価書(新築)データ」(平成25年度)による。共同住宅等で「構造躯体の倒壊等防止(地震に対する構造躯体の倒壊、崩壊等のしにくさ)」の等級3は1.7%、85.5%は等級1。

 

[資料]実大振動実験の様子

 

さらに、木造ならではのこんなメリットもある。

 

依田氏「木造は鉄骨住宅に比べて空間づくりの自由度が高く、敷地の形状による間取りの制約を受けづらいのも特徴です。オーナーのこだわりが強ければ強いほど、その希望に合わせた建物を具現化することができます。また、木造住宅は減価償却期間(法定耐用年数)が短い点も大きなメリットです。鉄筋コンクリート造の47年、重量鉄骨造の34年に対し、木造住宅(枠組壁工法)は22年。同じ建築費でもより多くの経費(減価償却費)を計上できるため、キャッシュフローの面でも優位性があります」

 

[図表]木造とRC造の減価償却期間の比較

 

もちろん鉄筋コンクリート造や重量鉄骨造にもそれぞれのよさがあり、どれが最も優れているかを一言で語ることはできない。だが、少なくとも木造をひとくくりにして「壊れやすい」「うるさい」などと決めつけるのは早計であるといえそうだ。

 

現在、賃貸住宅への入居世帯は増加しており、かつてのような「仮住まい」といったイメージは薄れつつある。家を購入せず、生涯賃貸という選択肢が珍しいものではなくなっている今だからこそ、長く快適に暮らせる「良質な賃貸住宅」が求められている。

 

 

取材・文/前田智行 撮影/押木良輔(人物)
※本インタビューは、2019年2月27日に収録したものです。