大手オークションハウスとして知られる「サザビーズ」の不動産仲介部門である「リスト サザビーズ インターナショナル リアルティ」が日本人向けのテキサス不動産販売に参入する。日本人向け×テキサスという分野では後発となるだけに、地域をヒューストンに絞り込み、これまでにないサービスも取り入れる予定だ。その詳細を、リスト サザビーズ インターナショナル リアルティの大橋登シニアマネージャーに伺った。今回のテーマは、アメリカ不動産投資の出口戦略である。

不動産投資の成否は「出口」にかかっている

本連載で取り上げている「ヒューストン不動産プロジェクト」は、減価償却メリットによる税効果を主眼としたアメリカ不動産投資に、サブリースによる固定収入システムを組み合わせることによって、不動産投資というよりも「パッケージ化された金融商品」に近い感覚で利用できると述べてきました。

 

とはいえ、基本的には不動産投資ですので、さまざまなリスクが存在します。前回では、為替リスクと売却リスクについて投資シミュレーションを見ながら解説しました。

 

為替リスクについては、売却時の譲渡所得課税額に一定の影響を与えます。ただし、家賃収入や売却金額については、現実的に大きな問題になることはないと思われます。というのも、サブリースによる家賃収入や、物件の売却金額については、預金口座にドルのまま預け入れておき、海外旅行などの際の支払いに利用したり、別の物件への投資に使ったりする方が多いからです。ドルのまま使うのであれば、為替リスクを考える必要はありません。

 

売却リスクについては、どうでしょうか?

 

 

出口における懸念事項は、2つあります。1つめは、そもそも売りたい時期(一般的には償却メリットの終わった5年後)に、都合よく買い手が見つかるかという点です。2つめは、売却時の中古不動産相場と比べて、適正な価格で売却できるかどうかです。

 

前者については、第1回でも触れたように、全米に張り巡らされたサザビーズネットワークとその高い信頼性が非常に役立ちます。アメリカにおける複数のフランチャイジーが抱える数多くの顧客、多くのアメリカ人が持つ「サザビーズブランド」への信頼感から、買い手をつけることは難しくありません。これこそ、サザビーズブランドで物件を購入する大きなメリットです。

 

また確実なことはいえませんが、近年、テキサス州を含めた全米の不動産価格は年平均で4%以上の上昇を示しており、特別な要因がない限り、この傾向は続くと思われます。人口増加が続くアメリカでは、2008年のサブプライムショックのような異常事態がない限り、都市部の不動産相場の大きな下落は考えにくいでしょう。

購入から売却まで、契約はすべて日本国内で可能

リスト サザビーズ インターナショナル リアルティ シニアマネージャー大橋 登氏
リスト サザビーズ インターナショナル リアルティ
シニアマネージャー 大橋 登氏

第2回でも触れたように、本プロジェクトの販売価格は低~中価格帯に限定しています。これがもし、200万ドルを超えるような高価格物件であれば、売りたい時期にタイミングよく買い手が見つかるかどうかは、予想が難しいところです。しかし10万~80万ドル程度の価格帯は、需要のボリュームゾーンである中所得者層が購入対象となり、買い手が見つかりにくいという心配は軽減されます。もちろん、出口における売却をスムーズにするためには、そもそも物件の立地や建物の品質が一定以上のものを購入するというのは大前提です。

 

以上によって、売却リスクがゼロになるわけではありませんが、小さくすることはできるでしょう。とはいえ、売り急ぐと足元を見られて買い叩かれやすくなるのはどこでも同じですから、購入の段階で出口についても想定しておき、一定の計画、準備をしておくことが重要です。

 

本プロジェクトでは、購入から売却まで、契約はすべて日本国内で可能です。日本にいながらにして、すべての手続きを完了させ、税メリットを享受するだけです。そのため、現地に行っていただく必要は特にありませんが、宇宙センターなどの観光を兼ねて現地視察をしてみるのもよいのではないでしょうか。

 

 

取材・文/椎原芳貴 撮影(人物)/永井浩
※本インタビューは、2018年11月19日に収録したものです。