大手オークションハウスとして知られる「サザビーズ」の不動産仲介部門である「リスト サザビーズ インターナショナル リアルティ」が日本人向けのテキサス不動産販売に参入する。日本人向け×テキサスという分野では後発となるだけに、地域をヒューストンに絞り込み、これまでにないサービスも取り入れる予定だ。その詳細を、リスト サザビーズ インターナショナル リアルティの大橋登シニアマネージャーに伺った。今回のテーマは、「ヒューストン」に取り組む理由である。

全米第4位の人口を誇る「ヒューストン」

ご存じの方もいらっしゃると思いますが、リスト サザビーズ インターナショナル リアルティでは、長年、ハワイ不動産を日本人向けに販売してきました。しかし、ハワイは日本で非常に人気のあるエリアということもあって、一種の「ハワイプレミアム」が存在し、価格が高止まりしていると感じるお客様も増えてきました。リゾートのセカンドハウスとしての魅力があるため、ハワイの物件価値が下がることは考えにくいですが、インカムゲインやキャピタルゲイン狙い、減価償却による税効果などを目的とした、純粋な投資対象としてだけ考えた際にメリットが大きいといえる物件は少なくなっています。

 

そのなかで、「ハワイだけなく、アメリカ本土の物件も扱ってほしい」というご要望を数多くいただいていたことが、今回の「テキサス州・ヒューストン不動産プロジェクト」へとつながりました。

 

なぜ、アメリカ本土のなかでも、ヒューストンなのでしょうか。

 

 

ヒューストンは、日本人にはあまりなじみがなく「ジョンソン宇宙センター」くらいしか知らない方も多いかもしれません。しかし、実は200万人以上の人口を抱える全米第4の巨大都市であり(2010年国勢調査より)、また、テキサス医療センターや名門・ライス大学、多くの博物館などを擁しており、アメリカのなかでも文化・教育水準の高い街として知られています。

 

アメリカでも、不動産価格は立地の影響を大きく受けます。ただし、日本と違って自動車社会なので、日本の都市部で重要な「駅からの距離」は不動産価格にほとんど影響を与えません。その代わり、大きな影響を与える要素が「エリアの教育水準」なのです。

 

アメリカは、世界中から優秀な学生が集まって激しい競争をしている「超学歴社会」です。そのため、一定の所得水準の家庭では、居住地域も子供によい教育を受けさせることができるエリアを選びます。

 

アメリカにも日本と同じように「学区」がありますが、その地区に属する学校によって教育レベルにかなりの開きがあるといわれています。そこで、教育レベルの高い学校がある地区は人気となり、不動産価格も上昇します。そのため、教育水準の高い学区には、ますます高所得者層しか住まなくなるというわけです。

 

隣接したエリアでも学区が異なれば、道路を挟んだだけで不動産価格水準がまったく異なる、といったことも普通にあります。このように、アメリカの居住用不動産の価値は、なによりも立地によって左右されるので、物件購入の際、エリアの教育水準を知るのは欠かせないポイントとなります。

未曾有のハリケーン被害から急速に復興が進む街

リスト サザビーズ インターナショナル リアルティシニアマネージャー大橋 登
リスト サザビーズ インターナショナル リアルティ
シニアマネージャー 大橋 登氏

いま投資先としてのヒューストンに注目したい点が、実はもうひとつあります。ご記憶の方も多いかと思いますが、2017年8月、100年に一度ともいわれる巨大ハリケーン「ハービー」がテキサス州を襲いました。ヒューストンでは、都市の広域が浸水し、数万人が避難を余儀なくされるなど、大きな被害を受けました。

 

被害を受けた地域では急速に復興が進んでいますが、やはり本来の価値よりも不動産価格が安くなっている、いわゆる「価格の歪み」が生じている物件が散見されるのも事実です。こうした、いわば不当に安くなっている物件の建物検査を丁寧に行い、躯体や建物自体に問題ないものを仕入れていくことで、街の復興のお手伝いになりますし、投資としても大きな妙味がでてくると考えています。

 

 

具体的には、エリアの教育水準や価格、品質などの点から見て優れていると思われる物件を、前回ご紹介したサブリースシステムを整えた上で取り扱っています。当初ご用意している物件数は約70戸で、約12万~79万ドルといった価格帯になります。海外不動産としては、比較的投資しやすい価格帯であるかと思います。

 

ただし、低価格帯の物件となると、その分、減価償却できる金額も小さくなります。正確な額は、個々の物件の建物評価割合によっても異なります。実際にご購入を検討される場合には、税効果を最大化させるために必要な償却額から逆算して、物件を選定するというプロセスを踏むという手もあります。必要な償却額によっては、複数物件の購入も選択肢のひとつとなるでしょう。

 

取材・文/椎原芳貴 撮影(人物)/永井浩
※本インタビューは、2018年11月19日に収録したものです。