超高齢化、人口減少が問題となっている日本で、年々増え続けているのが障害者の数。それらの人々を受け入れる施設は圧倒的に不足しており、早急な対策が必要とされている。本連載では、同じように社会問題となっている保護犬・猫の殺処分問題の解決に取り組んでいる株式会社ケアペッツ代表取締役の藤田英明氏に、「ペットと暮らす障害者グループホーム」事業の可能性について伺った。第3回目のテーマは「ペットと暮らす」福祉施設の具体的収支。

入居者が9名なら、毎月200万円以上の売上

現在、株式会社CARE PETSでは千葉県を中心に4ヵ所の「わおん」の他に関連会社で通常のグループホームや障害者のデイサービス(生活介護)、訪問介護などを直営で運営していますが、今後は投資家の方々を募って全国に増やしていきたいと考えています。

 

すでに今年7月からオーナー募集を開始しており、私たちの趣旨に賛同して「わおん」の運営に携わる投資家の方々が着実に増えています(9月は20人・社)。

 

「ペットと一緒に暮らす障害者グループホーム」というコンセプトに共鳴していただいていることはもちろん、ビジネスとして始めやすく、十分な収益が見込めることも、多くの投資家の方々が「わおん」に関心を寄せている理由ではないでしょうか。

 

下の表1は、「わおん」の初期投資の一例です。このケースは、千葉県にある空き家2棟を賃貸し、リフォームや備品の購入、立ち上げの費用などをすべて合わせたものですが、トータルで420万円となっています。小売店や飲食店のFC(フランチャイズ)契約などに比べると、かなり安上がりであることがおわかりいただけると思います。

 

【表1】

 
 

1棟当たり4~5名、2棟では8~10名の入居が可能ですが、仮に入居者が9名の場合、月々200万円以上の売上が見込めます。表2は実際の収支例です。

 

【表2】

家賃滞納リスクは極端に少なく、補助金活用もできる

このケースでは、月々の売上が約220万円に対し、人件費が約115万円、販管費が56万円で、これらの費用を差し引いた営業利益は49万円となります(人件費、販管費共に実際より高額に設定)。

 

前回も説明したように、ペットと一緒に暮らせる「わおん」は人気が非常に高いので、開所から1~2ヵ月で満室になり、黒字化します。ですから、単純計算すると420万円の初期投資が9~10ヵ月ほどで回収できるわけです。

 

表2の収支例では、スタッフの人数を4名として計算しています。スタッフの内訳は、グループホームに配置が義務付けられてサービス管理責任者が1名、生活支援員、世話人、夜間職員がそれぞれ1名です。

 

サービス管理責任者になれるのは、介護福祉士などの資格を持っていて、法律に定められた一定年数以上の経験を持っている人材のみです。そのため、個人で人材を探すのは難しいですが、採用から研修まで全面的に支援しています。

 

ちなみに、サービス管理責任者は30人まで1人で兼務することが認められています。1人の責任者に6棟(1棟5人として)を兼務してもらうと人件費がもっとも安上がりになり、収益も最大化します。

 

【図】

それでも初期費用は約1,000万円ですから、最初から6棟を取得して「わおん」の運営を始めるオーナーさんもいらっしゃいます。

 

ペットと一緒に暮らせる「わおん」は、人気が高いので満室になりやすく、入居者に長く住んでもらえるので長期安定収益が期待できることが大きな魅力です。それに加え、入居者は障害者総合支援法に基づく介護給付金と、大半の入居者は生活保護を受給しているので、賃貸住宅のような家賃滞納リスクもありません。また、グループホームの入居者に対しては、自治体から月々1万円程度の補助金が支給される場合もあります。

 

さらには、事業者も敷金・礼金やリフォーム費用などに対する補助金を受けられます。グループホームを増やすことは国の施策であり、その方針に沿って公的支援が得られることも安定経営の大きな支えとなるはずです。

 

また「わおん」では、入居した障害者の方々に就職をあっせんする取り組みも行っています。自立を応援したいという気持ちによるものですが、これによって入居者の方々の収入が安定することも、事業収益の安定化に結び付くはずです。

 

 

取材・文/渡辺 賢一 
※本インタビューは、2018年9月7日に収録したものです。