超高齢化、人口減少が問題となっている日本で、年々増え続けているのが障害者の数。それらの人々を受け入れる施設は圧倒的に不足しており、早急な対策が必要とされている。本連載では、同じように社会問題となっている保護犬・猫の殺処分問題の解決に取り組んでいる株式会社ケアペッツ代表取締役の藤田英明氏に、「ペットと暮らす障害者グループホーム」事業の可能性について伺った。第2回目のテーマは「ペットと暮らす」福祉施設の魅力。

毎年35万頭も殺処分されるワンちゃん、ネコちゃん

「わおん」は、飼い主がいなくなったワンちゃん(保護犬)を預かり、ワンちゃんと障害者が一緒に暮らすユニークな障害者グループホームです。

 

千葉県を中心に4ヵ所の直営ホームを展開しており、今年7月から投資家の方々によるホーム運営も開始しました。今後、より多くの投資家の方々に「わおん」の趣旨にご賛同いただき、ネットワークを全国に広げていきたいと思っています。

 

私が「わおん」を始めようと思ったのは、障害者の方々の受け皿となる施設を1ヵ所でも多く提供したいという理由の他に、もうひとつ、動物を愛する者として見過ごせない大きな問題を何とかしたいという思いがありました。

 

それは、飼い主を失い、行き場をなくしたペットの殺処分の問題です。

 

いま、全国では毎年約35万頭ものワンちゃん、ネコちゃんが殺処分されているといわれてます。ブリーダーなどが安易に繁殖させて売れ残ったペットが増え続けているのが大きな原因のひとつですが、急速な高齢化とともに、飼い主が亡くなったり、施設に入ったりして飼えなくなるペットの数も年々増えているのです。そして、飼い主を失った多くのペットたちが殺処分という悲しい末路を迎えています。

 

そうしたワンちゃん、ネコちゃんたちを受け入れる施設があれば、施設が1ヵ所できるごとに1つ以上の命が救われる。そう考えて、「保護犬と暮らす障害者グループホーム」という「わおん」のコンセプトを生み出したのです。今後5年間で「わおん」を1万ヵ所に増やしたいと考えていますが、これで少なくとも1万頭のワンちゃんが救われるはずです。

動物と一緒に暮らすことで障害者も元気に

「動物と一緒に暮らす」ことは、障害者にとっても大きなメリットがあります。

 

たとえば、IAHAIO(人と動物の関係に関する国際組織)のレベッカ・ジョンソン教授が2010年に行った報告によると、介護・福祉施設に入居する高齢者を犬と散歩させる実験を行ったところ、高齢者と犬それぞれの運動の機会が増え、それまでのQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)が明らかに向上したとのことです。

 

実際、「わおん」に入居する障害者の方々にも、ワンちゃんと散歩することで運動をしたり、地域と交わったりする機会が増え、心身のコンディションが改善される効果が表れています。知的障害や精神障害を持った方は自室にこもりやすい傾向がありますが、共有スペースにワンちゃんやネコちゃんがいると、部屋から出て、ペットやほかの入居者の方々と交わりやすくなります。ペットと一緒に暮らすことは、入居者の療養や自立に対する明らかな効果があるのです。

 

また「わおん」には、入居者が飼っていたペットを連れて入居することもできます。通常、障害者が施設に入る際にはペットを手離さなければなりませんが、その悲しみによって抑うつ状態が高まり、障害がさらに重くなってしまうことも珍しくありません。ペットと一緒に入居できる「わおん」なら、こうした課題も解決できます。

 

いまのところペットと一緒に暮らせる障害者ホームはほかにありませんので、「わおん」の人気は非常に高く、入居率はつねに100%です。しかも早い場合は開所から1ヵ月足らず、遅くとも2ヵ月で満室になります。障害者の方は長く入居するケースがほとんどですので、長期的に安定した収益が期待できるのも大きなメリットだといえます。
 

取材・文/渡辺 賢一 
※本インタビューは、2018年9月7日に収録したものです。

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