超高齢化、人口減少が問題となっている日本で、年々増え続けているのが障害者の数。受け入れ施設は圧倒的に不足しており、早急な対策が必要とされている。本連載では、同じように社会問題となっている保護犬・猫の殺処分問題の解決に取り組んでいる株式会社ケアペッツ代表取締役の藤田英明氏に、「ペットと暮らす障害者グループホーム」事業の可能性について伺った。第1回目のテーマは「建築基準法の緩和で…保護犬殺処分と障害者施設問題が解消へ」。

約4万事業所も不足する障害者グループホーム

身体障害や知的障害、精神障害など持つ人は全国に約930万人もいます(平成28年度、厚生労働省調べ)。日本の総人口の約7%に当たる人々が何らかの障害を抱えており、その数は年々増え続けているのです。

 

それに対し、残念なことに障害者の受け入れ施設が著しく不足しているのが、わが国の現状です。いわゆる「障害者グループホーム(共同生活援助)」は全国に約7,000ヵ所ありますが、1ヵ所当たりの入居者数はせいぜい4~5人ですから、合わせても2万8,000~3万5,000人分のキャパシティしかありません。しかも歴史的な経緯もあって、障害者グループホームの入居者は知的障害者が大半を占めており、身体や精神に障害を持つ人の受け皿は圧倒的に不足しています。女性障害者に関しても難しい状況があります。

 

おそらくこの傾向は、今後ますます深刻化するでしょう。なぜなら今年4月に精神病院の診療報酬が改定され、これまで病院に長期入院していた精神疾患患者の多くが退院を余儀なくされることになったからです。

 

国は増え続ける医療費を減らすため、病院に入院している患者さんたちを在宅や施設によるケアなどの地域医療にシフトする動きを強めています。これを「地域移行」といいます。これまで精神病院はある意味“聖域”扱いされてきましたが、国は今回の改定によって、精神疾患患者についても地域医療へのシフトを促すことにしたのです。これによって、現在全国で入院している約31.7万人の精神疾患患者のうち、約20万人が退院を迫られていくと予想されます。

 

仮に1グループホーム当たりの入居者が5人だとすると、約4万事業所(約20万人分)に相当する新たな受け皿が求められることになるわけです。

障害者がペットと一緒に暮らすユニークな施設

そのため、障害者グループホームの需要は、今後ますます高まっていくことが確実視されています。約20万人分もの事業所が不足しているのですから、受け皿づくりは急務です。

 

国はこれを後押しするための法整備も実現しました。今年6月に改正した建築基準法に、「戸建住宅等の福祉施設等への用途変更を伴う制限の合理化」という内容を加えたのです。

 

戸建住宅を福祉施設するには「用途変更」が必要ですが、これまでは面積100㎡までの建物であれば変更手続きが不要でした。法改正によってこの制限が緩和され、200㎡まで用途変更なしで福祉施設にできるようになったのです。改正法は1年以内に施行されるので、2019年5月までには制限が緩和される見通しです。

 

国にすれば、この制限緩和によって障害者の受け皿が増えれば、膨張する医療費を少しでも減らせますし、放置されたままの戸建住宅がより多く活用されることで、“空き家問題”の対策にもなります。一石二鳥の効果が期待できるわけです。

 

一方、福祉事業者にとっても、今回の法改正は大きなビジネスチャンスです。より多くの空き家を障害者グループホームに転用して、需要に応えられるようになるからです。私たちはこれを機に、投資家の方々を募って5年後までに1万ヵ所の障害者グループホームを立ち上げたいと考えています。私たちが運営するのは、飼い主がいなくなったワンちゃん(保護犬)を預かり、ワンちゃんと障害者が一緒に暮らすと共に、入居者は自分のペットと一緒に入居できる「ペット共生型」障害者グループホーム「わおん」です。

 

「わおん」のコンセプトは、いままでの障害者グループホームにはない斬新なもので、ペットと一緒に暮らすことが入居した障害者の療養や自立にも大きな効果をもたらしていることから、新聞や雑誌にも数多く採り上げられています。保護犬の殺処分を減らすことにも貢献しています。

 

現在、急速に事業拡大をしていますが、約20万人に及ぶ障害者の方々の受け皿には、十分ではありません。殺処分される保護犬も、悲しいことにまだまだ多くいるのが現状です。そこで本連載を通じ、読者のみなさんで興味を持たれた方にぜひ参画いただきたいと考えています。
 

 

取材・文/渡辺 賢一 
※本インタビューは、2018年9月7日に収録したものです。