「人口減少時代」に突入しても、増え続ける都心の人口
日本の人口減少ペースは年を追うごとに加速しています。日本の総人口は、2010年の1億2,806万人から2016年には1億2,693万人と113万人も減少しました(総務省調べ)。国立社会保障・人口問題研究所の予想によれば、日本の人口は2055年までに1億人を割り込み、2065年には約8,800万人まで落ち込むとのことです。
一方、総務省が5年に一度行っている「住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家の数は1993年の調査で400万戸を突破し、2013年の調査では820万戸に達しています。今年(2018年)は5年ぶりの調査年にあたりますが、空き家の数はさらに増えていることでしょう。ちなみに、空き家全体に占める共同住宅の割合は4割を超えており、賃貸住宅の「空室問題」もかなり深刻になっていることがうかがえます。
人口が減っているのに、空き家の数は増えているのですから、需要と供給のバランスが大きく崩れていることは明らかです。インカムゲイン(家賃収入)を目的とする不動産投資は、今後ますます難しくなっていくことでしょう。
しかし、そうした状況にもかかわらず、年々賃貸ニーズが高まり続けているエリアがあります。それは、東京都心です。
「都心5区」と呼ばれる千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区の人口は、減少するどころか、年々増加の一途をたどっています。仕事の少ない地方から職を求めてやってくる若者や、生活に便利な都会で老後を過ごしたいという高齢者などが、東京に集まってくるからです。
しかも東京都心では、外国人居住者の人口も、ここ数年で急増しています。後述するように、政府が外国籍のビジネスパーソンや労働者を積極的に受け入れる政策を打ち出しているからです。こうして、東京の人口や経済の「一極集中」はますます進み、賃貸需要を長期にわたって支え続けることになるでしょう。
インカムゲイン目的の不動産投資を成功させるためには、安定的な賃貸需要が見込めて、空室リスクや家賃下落リスクの小さいエリアを選ばなければなりません。東京都心は、その数少ない選択肢であるといえるでしょう。
東京五輪後も賃貸需要を下支えするプロジェクトが続々
ところで、ここで気になるのが「2020年問題」です。
2018年現在、2年後に控えた東京オリンピックに向けて、新しいビルや住宅の建設が盛んに行われています。これが「呼び水」となり、ますます多くのヒト・モノ・カネが東京に集中し、経済を盛り上げています。
しかし、東京オリンピックが終了してしまうと、経済は大きく冷え込み、東京への人口流入がペースダウンしてしまうのではないかと懸念する人は少なくありません。実際にそうなった場合、賃貸需要が落ち込むのですから、インカムゲインを目的とする不動産投資にも少なからず悪影響が出ることでしょう。
けれど、それは杞憂にすぎないでしょう。なぜなら、東京ではスポーツイベントの終了後も、経済をさらに盛り上げるためのプロジェクトが次々と繰り広げられるからです。
たとえば、2011年に東京は「国際戦略総合特別区域(特区)」のひとつに指定されました。これによって、外国企業のアジア地域における業務統括拠点や研究開発拠点を東京に集積させることを国は目指しているのです。
この取り組みによってアジアにおける東京の競争力が高まれば、ますます多くの外国人がやって来ることになります。それを後押しするように、外国人ビジネスパーソンや外国人労働者の受け入れ条件を緩和する動きも見せています。外国企業の増加によって雇用機会が広がれば、地方からもより多くの人材が押し寄せることになるでしょう。
外国企業の誘致を促すため、国際線の「空の玄関口」を成田空港から羽田空港に移転させる取り組みも進んでいます。これは、訪日外国人旅行者数を2020年までに4,000万人、2030年には6,000万人とする国の観光政策に沿った取り組みでもあります。「観光立国」政策は、成熟した日本経済が成長力を取り戻すための起爆剤のひとつです。これによって、東京を訪れる外国人がさらに増えれば、経済はますます発展するはずです。
こうした動きは、2020年で終わる一過性のものではありません。国際化や一極集中によって東京の成長は持続的となり、安定的な賃貸需要をもたらすことでしょう。都心の不動産はまだまだ「買い」だといえそうです。