親事業者の資金繰りが厳しくなる理由
小倉 サプライチェーン全体のキャッシュコンバージョンサイクル(以下CCC)をマネジメントするという点では、下請法の対象となる中小零細企業と取り引きしている親事業者はいま、待ったなしの対応を求められています。サプライヤーが大企業ばかりの企業にとって、下請法はほとんど関係ありません。
問題は、中小企業や零細企業に発注している大企業です。自動車業界であれば、トヨタの1次下請はほとんど下請法対象企業ではない大企業なので影響はほとんどありません。しかし、資本金が3億円以上の1次下請、2次下請企業は下請法で保護されませんので、自社の売上サイトは長いまま、自社の下請企業へは早期の支払いを求められることになります。そのため、資金繰りが厳しくなるので、なんらかの対策を講じなければなりません。
野間 おっしゃる通り、下請法改正の影響を受ける親事業者企業は、支払期間が短くなるので仕入債務回転日数が短くなります。それに合わせて、売上債権回転日数も短くしないと、CCCが伸びることになります。資金繰りが厳しくなって銀行からの借入などの手当てが必要になりかねません。
バランスシートでは、買掛金が小さくなると、借入金が増えることになります。それを避けるには、売上債権を圧縮する必要があります。
CCCの改善=バランスシート全体の改善
小倉 ぜひ考えてもらいたいのは、受け身の姿勢で仕方なく対応するのではなく、むしろこうした環境変化をチャンスととらえ、CCCの改善に戦略的に取り組むことです。売上債権を圧縮するには、電子記録債権を活用した一括ファクタリングや当社の「サプライチェーン・ファイナンス」が役に立ちます。
野間 仕入債務回転日数が短くなる分だけ、売上債権回転日数も短くできれば、運転資本が圧縮され、バランスシート全体が改善します。CCCの改善に取り組むことは、バランスシート経営の実践につながります。
小倉 今、日本は超低金利が続いており、多くの企業はあまり財務戦略を真剣に考えなくなっているような気がします。しかし、この超低金利は日本企業にとっては非常に大きなアドバンテージです。これを利用して新しい財務戦略を考えたり、国際競争力につなげるきっかけとしてほしいですね。
[図表] CCCの改善とバランスシートの関係