まずは「オファーシート」の提出からスタート
ここでは、売買契約が成立するまでの一般的な流れを説明します。公開された情報の中から目星をつけた物件に対し、オファーを入れるところから交渉がスタートします。アメリカの不動産取引では、買い手、売り手それぞれに仲介者、すなわちエージェントがつきます。そのため、売り手側のエージェントに対し、購入希望額、引き渡し希望日、そして融資が希望か、現金で購入するのかといった支払い条件を記載したオファーシートと呼ばれるものを提出して意思表示をします。
物件に人気があり、複数のオファーが寄せられた場合は、売り手がその中からベストと考える買い手を選択する(日本でいう)「入札スタイル」にて取引が進められていきます。公示から1週間程度の受付期間を設けるのが一般的ですが、金額や引き渡し期限などで好条件となるオファーが入れば、売り手の判断により数日で受付を終了するというケースもあります。現金購入で、なおかつ引き渡しまでの期間が短いほど、売り手が好む条件である傾向は日本での取引と同じです。
もちろん、オファーを入れるプロセスにおいて、条件交渉は可能です。買い手側が入れた指値に対して、「(買い手の指値を満額受け入れることはできないが)この価格であれば売り渡して良い」と、売り手がそれより高めの価格を提示するカウンター・オファーを返すケースもあります。当然、こうしたやり取りをしている段階でも、物件自体はフリーな状態なので、他の購入希望者が高値でオファーを入れてきたとしたら、そちらに決まってしまう可能性もあります。
当初の設定価格よりも高値で売買されるケースも
このように入札スタイルで取引が進められる場合、人気物件は当初の公開価格よりも高値で売買されるケースもあり、この点、日本の不動産取引とは大きく異なります。これは、双方の消費マインドの違いによるものです。デフレマインドが身に沁みついている日本の消費者は、不動産購入時には「いかに安値で購入するか」を考えますが、インフレ状態にあるアメリカでは、「自分がほしいものは高値のオファーを入れてでも購入したい」という消費マインドが浸透しています。特に、現地(アメリカ)で居住用に物件を購入検討される方は、その物件を投資対象として考えているのではなく、「自分のライフスタイルに合致している良い物件だから、何としてでもそこに住みたい」と考える方も多くいます。
売り手側にも当然エージェントが付いていますから、購入オファーが多く集まれば、彼らは売り手の利益を極大化させる使命のもと、売値を吊り上げようと画策します。アメリカの不動産を購入する際には、こうしたエージェントとの駆け引きが重要で、交渉力はもちろん、引き際の判断も取引内容を左右します。オープンハウスが物件を購入する際には、投資対象としてのシミュレーション(収益還元の考え方に基づき、想定家賃や修繕等含めた利回りを設定しています。)を行い、「これ以上の価格ではオファーは出せない」というラインを設定して、交渉に臨んでいます。その上で、物件の仕入れにあたり、現金取引かつ引き渡しの期間を短く設定しているため、多くのケースで売買契約を優位に進めております。
契約条件交渉の折り合いが付き、売り手が買い手を指定した時点で、売買契約が成立。実際の決済手続きへと進んでいきます。