余裕資金のない方には勧められないアメリカ不動産投資
――どんな人に『戦略的アメリカ不動産投資』を読んでもらいたいと考えていますか?
井上 もちろん、多くの人に読んでもらって、アメリカ不動産投資に興味を持ってもらえたらありがたいです。ただ、実は我々、オープンハウスのウェルス・マネジメント事業部では、すべてのお客様に対してアメリカの不動産を紹介しているわけではありません。お客様によっては「お勧めできません」とアドバイスさせてもらうこともあるのです。
――紹介できる物件があまりないとか?
井上 そういうことはありません(笑)。リスクを許容できないと思われる方には、物件を紹介しないようにしているのです。まず、余裕資金のない方には投資を控えるようにキッパリとアドバイスをしています。
そもそもアメリカの銀行で融資を受けるのは簡単ではありませんが、仮に融資が利用できたとしてもフルローンは組めません。融資対象の不動産とそこから得られる家賃収入のみを返済原資とするノンリコースローンが一般的だからです。返済が滞った場合には対象不動産を売却して融資金を回収するので、融資の上限は不動産価格に対して7掛けと見ておいたほうがいいでしょう。5,000万円の物件の購入する際には、1,500万円を自己資金で賄わなければならないのです。高額な出費となりますので、アメリカ不動産投資については慎重に検討しましょう。
また、年収が1,000万円に満たない人にも、あまりお勧めはしていません。バブル崩壊とサブプライムショックと、不動産を取り巻くショックを経験してきたこともあって、私はかなり、保守的に収益予想を立てています。そのため、我々が紹介している物件の実質利回りは1~3%程度です。実際には、ここに値上がり益が加わることで、より大きなリターンが期待できるのですが、相場は水物であり、楽観的に見積もってはいけないものなのです。
もちろん、アメリカの不動産市況は今後も明るいと見ていますが、数年後、価格動向が横ばい程度の状況になる可能性もあります。それでも私が今、自信を持ってアメリカ不動産投資をお勧めしているのは、税効果が期待できるからです。具体的には、減価償却制度によって課税所得を減らすことができます。日本の税法では課税所得が695万円以下で20%の所得税率となり、900万円以下で23%、1,800万円以下で33%、4,000万円以下で40%、最高で45%となります。さらに、別途10%の住民税も課せられます。つまり、高額所得者ほど税効果が大きくなるわけです。逆にいえば、あまり大きな税効果が期待できない方には、慎重に投資するようにお願いをしています。
資金調達コストが抑えられるなら、利回り狙いの投資も
――利回り狙いの投資はダメ?
井上 アメリカ不動産投資の魅力は税効果だけではありませんから、収入が一定額に達していなくても、潤沢なキャッシュをお持ちの方ならいいでしょう。キャッシュで購入すれば、金利負担もありませんので、利回り狙いの投資も十分に旨味があります。
もしくは、住宅ローンを繰り上げ返済している方も、利回り狙いの投資は可能かもしれません。一般に日本の金融機関はアメリカの不動産を購入するためのお金を貸してくれません。アメリカの物件を担保に取ったとしても、モニタリングができないからです。しかし、住宅ローンの返済を前倒しして融資枠に空きができている方には低金利でお金を貸し付けてくれるケースがあるのです。実際、当社のお客様のなかにも、融資枠の空きを利用して0%台の利率で資金を調達して、そのお金でアメリカの不動産を購入された方がいらっしゃいます。資金調達コストがほとんどかからないのであれば、大きな税効果がなくても利回り狙いでアメリカの不動産を購入するのも手ですね。