今回は、相続人に「家族以外の人」がいる場合の権利調整について見ていきます。※本連載は、税理士・田中潤氏著『きっと今までになかった相続の権利調整を考える本』(メディアパル)から一部を抜粋し、相続を円滑に進める「権利調整」について、分かりやすく解説します。

父親が生前に遺産の相続方法を「明示」しておく

亡くなった人が昔、今の妻とは別の人と結婚していて子がいる場合、その子は今の妻や子と同等の相続人となります。先妻は離婚しているので全く権利はありませんが、その子は今の家族の子とまったく同じ立場の相続人なのです。

 

通常、それぞれの交流はほとんどないことが多いので、遺産分割は非常に大きなトラブルを抱える可能性があります。先妻の子からすれば、既に様々な形で今の家族に財産が移転してしまった後の相続財産なのではないかと疑問を持つでしょう。

 

一方、自宅が相続財産の大きな部分を占めている場合、現在の妻や子の立場からすれば、もし法定相続分を主張されたら、それを売ってお金に換えて分配しなければならなくなるという懸念があります。1次相続(夫の相続)は相続税が掛からない可能性の強い配偶者に財産の多くを移転する、という家族ならではの方法も通用しません。

 

このように、それ迄当たり前だった家族の財産のバランスを大きく崩す可能性が生じ、更に財産が多い場合には、相続税の課税リスクも大きくなるのです。

 

こうしたことへの対処方法は、父親が生前に遺言を書いて自分の考えとそれに伴った遺産の相続方法を明示しておくことに尽きます。相続は配偶者を除けば被相続人の血縁関係(養子も含む)の中でしか生じません。従って、複雑な血縁関係を築いた人は自らの責任で幸せな相続の形を作らなければなりません。

 

父親が先妻の子に他の人より余分に財産を譲りたいと遺言を残せば、今の家族はそれに従うのも一つのさだめです。但し、その判断の根底にすべての相続人への思いやりがなければならないのです。

夫婦で遺言を書く場合に必要な「配慮」とは?

もう一つ、別の形での危機管理を見てみましょう。

 

子供のいない夫婦はお互いに全財産を相続させるとの遺言を書くことは、非常に多くあります。この場合、先に夫が亡くなり、次に妻が亡くなればほとんどの場合、夫婦の全財産が妻の兄弟姉妹に相続されます。

 

ということは例えば、代々引き継がれてきた夫の財産は完全に他人の家に移転してしまうわけです。家督相続制度の完全崩壊とも言える事態です。

 

こうしたことを踏まえ、夫婦で遺言を書く場合、二人が亡くなった後にそれぞれの一族にバランス良く財産を引き継がせるような配慮も今後必要度を増してくると思われます。

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