安定のイメージが強い公務員。なかでも国家公務員は、現役時代の給料や退職金額も高く、ひと昔前までは「絶対安泰」といったイメージがありました。しかし現在では、意外にも定年後になって生活が苦しいと訴える人も多いようです。本記事では、Aさんの事例とともに国家公務員の定年退職後について、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
「どうぞ一人で生きていってください」…退職金2,700万円、“老後資金潤沢な61歳・元エリート国家公務員”を妻が見放したワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

60歳で国家公務員を定年退職

老後の生活に不安はなくても、離婚の危機を迎えてしまったご夫婦のケースをご紹介しましょう(プライバシーを考慮してアレンジしてご紹介しています)。

 

部長職(行政事務)まで勤めて1年前に国家公務員を定年退職したAさん(61歳)。Aさんは、役職を外されることが悔しく、暫定再任用制度は希望せずに仕事には就かず、定年後は自由に過ごしていました。退職時は、約2,700万円の退職金のほかにAさん自身の預貯金等の資産も3,000万円を超えて所有していましたので、生活にも困ることはありません。

 

2人の子供はすでに独立して別居しており、現在は定年退職後にリフォームした家で私立高校で化学の教師をしている53歳の奥さんと暮らしています。お互いに仕事が忙しかったこともあって、ここ数年はあまり話もしない関係になっていました。

 

家でもワンマンなAさんは、「定年後しばらくは好きなことを思いっきりやろう!」と、この1年間はゴルフに出かけたり、買い換えた車に乗って一人でドライブに出かけたりと好き放題でした。一方で、この夫の行動を間近で見てきた奥さんの不満は増すばかりでした。

 

妻が残業で遅く帰ってきても家事を一切やらないAさんは、夕方になるとコンビニで自分の分だけ好きなものを調達し、ビールを飲みながらテレビを見て奥さんの帰りを待っている毎日です。Aさんは自分の蓄えから小遣いを出していましたし、65歳になれば公的年金も個人年金も受け取れるようになることから、お金については奥さんには気を遣うこともなく無頓着です。

 

しかし、奥さんから見ると、家の改築や車の買い替え、子どもの結婚資金援助など大きな支出が続いたのに、現役時代と生活レベルを落とさずに無職の立場で遊びまわっている夫の姿は腹立たしく感じるばかりです。

 

奥さんが「ハローワークでも行ったら? 働きに出たほうが健康的にも精神的にもいいんじゃない?」と言っても、Aさんは「民間は自分とは合わないよ。そんなに言うならスポーツジムでも通おうかなぁ」と軽く受け流していました。