富裕層が多く暮らす高級住宅街として知られる東京都港区。一方で、生活に苦しむ1人親世帯や貧困層も多く存在していることはあまり知られていません。本記事では、Aさんの事例とともにシングルマザーの実態と住まいについて、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
生活保護でやっとの暮らしだが…高級住宅街「港区」在住の元経営者妻・31歳シングルマザーが“引っ越さない”ワケ【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

賃貸物件の入居審査のポイント

やはり、貸す側からすると、「家賃をきちんと支払い続けてくれるかどうか」が一番の重要ポイントです。そのため、「年収がどのくらいか」という点がまず見られるポイントですが、ほかにも次のような点がチェックされます。

 

・職業/勤務先
・保証人/保証会社の有無
・子どもの年齢
・入居者の人柄

 

賃貸物件の家賃の目安は、一般的に月収の3分の1といわれています。上述の平均年間収入を考慮し、お子さんを抱えながらの生活を考えると、シングルマザーの生活は決して豊かなものではないケースも多いでしょう。希望の物件に入居できるのも難しいこともあります。

 

賃貸物件を借りる際の初期費用の目安は、家賃のおよそ5ヵ月分といわれています。つまり、6万円の物件を借りる場合に不動産会社へ支払う初期費用の目安は約30万円になります。しかしほかにも、引越し費用や保証会社への保証料などがかかります。そうなると、40~50万円はかかると見積もって準備する必要があるでしょう。

シングルマザーにお勧めの物件

以上のように、シングルマザーには一般の賃貸住宅を借りるにはハードルが高い場合があります。シングルマザーには家賃や初期費用が低い下記のような物件もお勧めです。

 

1.公営住宅

公営住宅は、地方公共団体が建設・運営している賃貸住宅です。低所得者層向けの住宅ですから、家賃が低いことが最大のメリットになります。居住者にはファミリー世帯も多いため、シングルマザーには心の支えになる環境にあるのも魅力でしょう。

 

ですが、公営住宅は抽選で入居が決定するため、抽選に当たらなければ入居できる物件ではありません。

 

2.UR賃貸住宅

UR賃貸住宅は、都市再生機構(UR都市機構)という独立行政法人が管理している賃貸住宅のことです。昔ながらの団地をリノベーションして貸し出していますから室内は綺麗です。

 

敷金はかかりますが、入居時に必要な礼金・仲介手数料・更新料・保証人が不要なので、初期費用を抑えたい人向けになります。

 

3.公社賃貸住宅

公社賃貸住宅は、地方自治体の出資によって設立した住宅供給公社(JKK)が管理している住宅です。

 

こちらも礼金・仲介手数料・更新料が不要で初期費用が大幅に抑えられますが、入居の際には連帯保証人を立てる、もしくは保証会社と契約をする必要があります。敷金は賃料の1~3ヵ月分と、賃貸物件によって異なります。18歳未満の子供がいる家庭やシニアの方がいる家庭などは優先的に申し込みが可能です。

 

UR賃貸住宅も公社賃貸住宅も、初期費用は抑えられますが、家賃は安いとはいえませんし、収入基準などの審査も容易ではありませんので、事前にホームページ等で確認しておきましょう。