老後への不安や寂しさ……単身者であれば、より強く思うもの。そこで「健康で若いうちに老人ホームに入居」という決断をする人が増えているといいます。ただ健康でも入居できる老人ホームは、少々高め。色々と苦心して組み立てたマネープランが、あえなく崩壊というケースも珍しくないようです。みていきましょう。
まずいことが起きたわ…69歳・おひとり様の伯母、一時金3,000万円・月額25万円の「老人ホーム入居」を決断も、まさかの大誤算

憧れの老人ホームに入りたい!完璧だったはずの「伯母のマネープラン」崩壊のワケ

ほかの老人ホームよりも高い「自立型(健康型)有料老人ホーム」。そんな選択をしたという、69歳の伯母について投稿をした40代男性。親戚のなかでは唯一の独身者で、男性の祖父母も「あの子だけ結婚もしないで……」と不安をこぼしていたといいます。

 

「結婚とか、向いていないから」と、独身を貫く理由を何度も口にしていた伯母でしたが、70歳を前に今後の生活に不安を覚えたといいます。そこで「自立型(健康型)有料老人ホーム」への入居を決めたといいます。

 

ネックになったのは、入居一時金3,000万円、月額費用25万円という費用。

 

――もう少し安いところにしたら

 

相談を受けた男性は、そうアドバイスしたといいますが、介護や医療体制が充実し「終の棲家」としても申し分のないこのホームに決めたいと伯母。結局、入居一時金は「いま伯母が住んでいるマンションの売却(1,500万円)と貯蓄(1,500万円)で解決。月額費用は、「月12万円強の年金に、月13万円の貯蓄からの取り崩し」で20年は暮らしていけると算盤を弾き、入居を決断したといいます。

 

しかし、入居から1年ほど経ったある日、「まずいことが起きたわ」「何かの間違いじゃないのかしら」と伯母が困惑気味に男性に相談してきたといいます。その内容というのが「元々非課税だったのにホームに転居したら税金がかかるようになった」というもの。

 

――ほんの誤差程度でしょ

 

と男性がなだめると

 

――その誤差が老後の命取りになる!

 

と、なぜか怒られたといいます。

 

これはいわゆる「年金211万円の壁」というもの。年金のみで生活する65歳以上の夫婦2人世帯が「住民税非課税世帯」になるかどうかのボーダーラインで、65歳以上の年金生活者である世帯主の非課税限度額は、「(基礎控除)35万円×(世帯人数)2+(所得金額調整控除)10万円+(被扶養者がいる場合に加算できる金額)21万円=101万円」、これに公的年金控除110万円を足して211万円となるというものです。さらに配偶者が「(基礎控除)35万円+(所得金額調整控除)10万円=45万円」と公的年金控除110万円を足して、155万円以下であれば、住民税非課税世帯となり、住民税がかからないほか、社会保険料が軽減されたり、高額医療費自己負担限度額が低く設定されていたりと、さまざまなメリットがあります。

 

非課税上限の年金収入は、夫婦で211万円の場合は単身者では155万円となります。ただしこの夫婦であれば「211万円」、単身者であれば「155万円」というのは1級地とされる大都市の場合で、中核都市などの2級地は夫婦で「201.9万円」、単身者で「151.5万円」、それ以外の3級地は夫婦で「192.8万円」、単身者で「148万円」となります。

 

老人ホームへの入居の際に級地が変わり、住民税非課税世帯から外れたり、逆に住民税非課税世帯になったりすることは、年金額がボーダーライン付近の場合はよくあること。また年金給付額は毎年変わるものなので、それによっても住民税非課税世帯になるかどうかは左右されます。伯母の場合も、再び住民税非課税世帯に該当するようになる可能性はあると考えられるでしょう。

 

[参考資料]

内閣府『令和4年版 少子化社会対策白書』