「ワンオペ介護」は回避すべきだが…
介護には身体的な介助と、精神的な介護があります。では、実際のところどちらが大変なのでしょうか?
もしも親が認知症になってしまい、ひとり暮らしが難しくなったときのことを想像してみてください。親と同居し、介護を行うという選択をする人も多いでしょう。そうした親との同居、親への介護を自分ひとりで行うのは、非常に苦しいことです。
自分ひとりで行う介護を「ワンオペ介護」と呼びますが、ワンオペ介護が悲惨な結末にいたったことをニュースなどで見聞きしたことのある人もいるのではないでしょうか。介護する人にとって、認知症やうつ病などの精神的な介護は、特に大きな負担となるのです。
ワンオペ介護により、親と壮絶な時間を過ごすことになる人は少なくありません。介護から解放される時間がないのです。休日はもちろん休憩さえ取れなければ、心身ともに疲れ果てて介護する側の子供が体調を崩しても仕方ないでしょう。
以下のように考えている人は、楽観的すぎるかもしれません。
年金は月6万円、ひとりで暮らす母…80歳を過ぎたけど親は自由気ままが一番
子が親を気にかけすぎて、親の行動を制限してしまうのはよくないと考える人もいるでしょう。たとえば、80代の高齢両親について。父が先立ち、ひとりになった母が気が付くと認知症に。父が亡くなったことにより年金収入が減ってしまっていて、母は家計も困窮していた……。このようなケースは、女性のほうが平均寿命の長い日本ではよくあることです。
親の「大丈夫」を信じて、放っておいて年2回(盆暮れなど)だけしか帰らないのでは、認知症やうつ病などを発症する危険性があります。
老夫婦でも2人暮らしなら大丈夫
では、ひとり暮らしでなければ大丈夫かというと、そうではありません。老々介護の場合は生活が単調になりやすいため、脳への刺激が不十分になる可能性があります。ここでも、配偶者がワンオペ介護になる危険性があります。
子供と同居なら大丈夫
それならば、「子供と同居している親はさすがに大丈夫なのでは?」と考える人もいるでしょう。常に子供が親と一緒にいる状態ならば、十分な刺激のある生活を送れるかもしれません。しかしながら、そうした状況をつくることが本当にできるのでしょうか? 子供も日中は仕事があるなら、親はひとりという状態ではありませんか? 1日8時間以上ひとりならば、生活環境はひとり暮らしとあまり変わりません。
それに対して親子3世代で子育てしている世帯などには十分な刺激があるように見受けられます。結局、昔ながらの人間の営みには自助作用があり、我々は近年、単身世帯で暮らすようになったことにより、いろいろな問題が噴出しているのです。
「大丈夫」を信じた結果、認知症やうつ病などを発症した親を介護することになるかもしれません。ひとりっ子や独身というケースも多い現代においては、高齢となった両親の介護を1人で担う可能性も高いでしょう。きょうだいがいてもさまざまな事情により介護に携われないことも多く、1人に負担が集中してしまう、つまり「ワンオペ介護」になってしまうのです。