住宅ローンの顧客獲得競争が激化するネット銀行を中心に、「フルローン」の提案をする金融機関が増えているといいます。自己資金がない分、返済総額が増え、将来の金利上昇によるリスクも高まりますが、「マイホームが欲しいときに買える」というのは大きなメリットかもしれません。今回は、フルローンを利用して土地+建物で7,000万円の注文住宅を購入した40代“勝ち組”夫婦のローン返済をシミュレーションしていきましょう。
世帯年収1,200万円・40代“勝ち組”夫婦、「7,000万円」の注文住宅購入…〈頭金ゼロ〉の住宅ローン返済プランに潜むリスクとは? (写真はイメージです/PIXTA)

「欲しいとき」にマイホームを買えるフルローン

日本では、住宅購入に際しては物件価格の2~3割に相当する頭金を入れるケースが多いようです。実際、国土交通省『令和4年度住宅市場動向調査』で新たに注文住宅を購入した世帯の、「購入資金」の項目をみてみると、総額4,713万円のうち、自己資金(頭金)は941万円。物件価格の19.9%にあたります。

 

とはいえ、建築資材の高騰や現場の人手不足などを背景に物件価格は高騰を続けており、2~3割もの頭金を用意することは容易ではなくなっています。

 

仮に土地も合わせて7,000万円の注文住宅を購入する場合、その2~3割といえば1,400万~2,100万円。コツコツと貯蓄に励んでいる間に「転職した」「子供が増えた」というようにライフスタイルが変わり、志向するマイホームの形も変わってしまうかもしれません。

 

また、直近では固定金利を中心に利上げの動きがみられるとはいえ、変動金利についてはまだまだ超低金利といわれる水準を維持しており、ネット銀行のなかには「利下げ」に踏み切るケースもあるようです。また、万一に備えてある程度の資金は手元に残しておきたいという理由から、「フルローン」を利用してマイホームを実現するケースも少なくないといいます。

 

フルローンを利用する最大のメリットは、「欲しいときにマイホームを買える」ということ。理想像に近い物件に出会ったとき、十分な自己資金がなくても、すぐに物件を購入できます。極端にいえば「貯蓄ゼロ」でもマイホームを実現できる可能性があるということです。

 

一方、頭金を入れた場合に比べて借入額・利息が増加することは避けられません。そのため、なんらかの理由で将来マイホームを売却せざるを得ない状況に陥ったとき、物件価格がローン残債に満たない「オーバーローン」に陥るリスクも高まります。オーバーローン状態にある自宅を売却するには自己資金で差額分を差し入れる必要があるため、最悪の場合、銀行にローンの一括返済を求められて自己破産……という結末を迎えることも考えられます。