公的年金に加入し保険料を支払わないと、老後に「老齢年金」がもらえなくなるだけでなく、家族を残して亡くなったときの「遺族年金」や障害を負って働けなくなったときの「障害年金」ももらえなくなります。しかし、何らかの事情で年金保険料を支払えなくなることはあり得ます。どうすればいいのでしょうか。経済ジャーナリスト荻原博子氏の著書『年金だけで十分暮らせます』(PHP研究所)より、一部抜粋してお伝えします。
公的年金の「保険料」が支払えなくなった…それでも「年金」を受け取れる方法【経済ジャーナリストが解説】

保険料が支払えない場合に利用すべき「保険料免除制度」

公的年金をもらおうと思ったら、最低でも10年間の国民年金保険への加入が必要です。

 

その点、サラリーマンや公務員は、保険料を給料から天引きされるので、入らないというわけにはいきません。

 

けれど、自営業者の場合には、自分でお金を納めなくてはならないので、ついうっかりして保険料を支払い忘れ、督促状が来たという人も少なくありません。それだけ、加入もれも多く発生しています。

 

国民年金の保険料の納付率は、2021年度で73.9%。年代別に見ると、45歳以上は平均を上回る納付率ですが、20歳から24歳が77.91%、25歳から29歳が68.98%、30歳から34歳が71.58%と、20代から30代にかけての納付率が下がるようです。

 

フリーで収入が少なくて、国民年金の保険料が支払えないという人もいることでしょう。国民年金の保険料は、月1万6,520円(2023年度)。バイトで月10万円前後しか稼げない人に1万6,520円の保険料を支払えというのは酷な話で、それではとても食べていけません。

 

もし、収入が少なくて保険料が支払えないなら、「保険料免除制度」を使えないか市役所や区町村役場の国民年金窓口に聞いてみましょう。保険料免除の申請さえしていれば、自分では保険料を1円も支払わなくても、将来、年金がもらえるのです。

免除された人がもらえる年金額

国民年金の納付が免除されると、保険料を支払わなくても年金に加入しているという扱いになり、免除された期間の分の年金額は、保険料を納めた時の半分の額となります。

 

なぜ全額納付した場合の年金額の半分かというと、前述したように、年金で支給される額の半分は国庫が負担しているからです。この国庫負担分は、誰でももらえるということです。

 

さらに、免除の手続きをしていれば、遺族年金、障害年金の対象にもなるので、残された家族の生活費や、自分が病気やケガで働けなくなった時などに年金が受け取れます。特に、うつ病のように治療に長期間かかる精神的な病気の場合には、障害年金がもらえると助かります。

 

免除には4段階あって、独身者なら全額免除は年収67万円以下、つまり、月収が5万円くらいの人だと、全額免除の対象になります。2023年度で見ると、国民年金を40年間支払った人の年金は年額79万5,000円ですが、40年間全額免除で1円も保険料を支払っていない人でも年額39万7,500円もらえます。

 

また、障害者になった場合には、1級で年99万3,750円、2級で年79万5,000円と、年金をきちんと支払っている人と同じ金額が支給されます。

 

より現実的な例を挙げれば、独身で月収が10万円くらいの人なら、半額免除になります。半額免除というのは、納めるべき国民年金保険料1万6,520円の半額にあたる月8,260円を支払えば、年金に加入し続けられるということ。将来もらえる年金額は、通常支払われる年金の4分の3になり、40年間保険料を支払ってきた人が79万5,000円もらえるのに対し、半額免除の人は年59万6,250円となります。

 

さらに免除には、全額免除と半額免除だけでなく、「4分の3免除」、「4分の1免除」があり、独身世帯だけでなく、2人世帯、4人世帯など、家族構成によって対象となる収入は変わってきます。収入が低いので該当するのではないかと思う人は、ねんきんダイヤル(0570−05−1165または03−6700−1165)で尋ねてみましょう。