前回は、「プライベートな品物」の中のひとつ、デジタルデータの処分について説明しました。今回は、デジタルデータの消去を「死後事務委任契約」に含める理由について見ていきます。

故人のデジタルデータの完全消去は不可能に近い!?

ソフトや各事業者のサービスに頼るのもよいですが、確実性という面ではやはり少し不安が残ります。パソコンのハードディスクに入っているデータは、消したつもりでも特別な手順を踏むとかなり高い確率で復元できます。

 

完全に消去するには物理的に破壊しなければダメと言われており、もし遺族が本気でデータを見たいと考えるようだと、こういったソフトのもたらす安心感はそれほど高くありません。

 

実際に故人のパソコンデータの復旧をする事業者もいます。相続人がネットバンクのアカウントを知りたがって依頼するケースや、相続でもめた場合に遺言書の信頼性を検証するためにデータの復旧を依頼するケースなどがあるようです。

 

遺族がこういったサービスを利用すれば、データは簡単に復旧されてしまうでしょう。フリーメールなどは、妻にアカウントを探し当てられたら、メールの内容などを読まれてしまうことになります。

細かくデジタルデータの処理を指示・依頼しておく

確実を期すためには、死後事務委任契約にデジタルデータの処理や利用していたサービス全般への対応を依頼しておきましょう。

 

【図版】デジタルデータは死後事務委任契約で消去

【依頼する事柄の例】

 

①メール
 プロバイダメール、フリーメールともにアカウントとパスワードを送っておき、データの消去とアカウントの消去、プロバイダ契約の解除などを行ってもらう。また死亡したことをメールで知らせたい人がいる場合は、その旨を伝えておく

 

②社長が運営するサイト
 閉鎖する場合は、利用者への通知やサイトの消去、サービス提供会社への連絡と契約解除。発信する情報を購読する読者がいる場合は、契約の解除と代金の返金や精算をしてもらう

 

③ネット通販
 利用しているネット通販のIDとパスワードを送っておき、退会や会員情報の削除、購入履歴の抹消などをしてもらう

 

④SNS
 アカウントを送っておき、退会手続きをしてもらう。交流のあった人にメッセージを送りたい時には、その旨も依頼する

 

【まとめ】
・ 認知症やがん、心臓病などの大きな病気になると、法律的な行為や自由に行動することが難しくなる。

・ 病気が進行してしまうと、安心して暮らせるよう手配することや、相続対策を講じることができなくなるので、早めに対処することが大切。

・ 認知症と診断されたら、家族との間で「家族信託契約」を結び、財産を託しておくと、安全かつ効率的に管理してもらえる。

・ 信託契約書は紛失したり内容を巡ってトラブルになったりしないよう、公正証書にしておく。

・ 信頼して財産を託せる家族がいない場合は、判断力が残っているうちに「財産管理委任契約」と「任意後見契約」を結んでおくのがおすすめ。

・ 事業については事業承継税制や信託を利用して後継者に託す他、M&Aや廃業などの決定をしておくことが大切。

・ 領収書を残すと家族に隠しごとが発覚しやすくなるが、税法で7年間の保存が義務づけられているので、顧問税理士などに処分を依頼しておく。

・訴訟や賃貸物件の未収金などのもめごとはなるべく生前に処理しておく。

・遺品の処理は遺品整理の専門業者に依頼しておく。

・ デジタル情報の処理は専用ソフトやインターネット上のサービスの利用や、死後事務委任契約の中で処理を依頼しておく。

 

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本連載は、2015年10月27日刊行の書籍『妻に隠しごとがあるオーナー社長の相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

妻に隠しごとがあるオーナー社長の相続対策

妻に隠しごとがあるオーナー社長の相続対策

佐野 明彦

幻冬舎メディアコンサルティング

どんな男性も妻や家族に隠し続けていることの一つや二つはあるものです。妻からの理解が得にくいと思って秘密にしている趣味、誰にも存在を教えていない預金口座や現金、借金、あるいは愛人や隠し子、さらには彼らが住んでいる…

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