前回は、節税だけでないクルーザー取得のメリットについて解説しました。今回は、減価償却の活用において「中古木造アパート」が有効な理由を見ていきます。

多額の減価償却費を短期に計上することが可能

減価償却を活用した節税に使える中古資産として、中古アパートが人気です。企業のオーナー社長などの資産家には、不動産投資を行っている人も多くいらっしゃいます。不動産投資による所得が黒字化してくると、当然その分の税金が発生します。そのため、減価償却で赤字を出せる物件を新たに取得して、黒字を相殺するという手法もよく見られます。

 

不動産のなかでも、減価償却でおすすめなのは中古の木造アパートです。なぜ新築でなく中古、RC造でなく木造がよいのでしょうか。それは、より短期に多額の減価償却費を計上可能だからです。

 

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まず中古資産の耐用年数については、見積法が原則であり、見積法の適用が困難な場合に簡便法を使うことができます。簡便法を使うことができれば、耐用年数を短縮して、建物について早期に減価償却を終えることができます。個人の不動産所得が赤字になった場合には、事業所得や給与所得等と損益を通算することにより、課税の繰延を図ることが可能です。

 

次に、構造についてです。鉄筋コンクリート造の住宅用建物の法定耐用年数が47年であるのに対し、木造の住宅用建物の法定耐用年数は22年と半分以下です。そのため、木造のほうが簡便法を使った耐用年数の短縮に適しているのです。

 

節税の基本的な仕組みは、中古自動車と同様ですが、投資額が大きい分、単年度の節税効果も大きくなります。また、不動産の売却時に売却益が生じる場合、売却した年の1月1日時点でその不動産を5年超保有していると、その売却益は長期譲渡所得になり、20.315%(地方税と復興税を含む。以下同じ)の税率が適用されます。不動産所得の赤字で相殺される他の所得に適用される税率(最高55%(平成27年分以降。地方税を含む。復興税を除く。以下同じ))と20.315%の差が、節税になるのです。

同じ不動産価格なら「建物割合」が大きいほうが得

具体例をもとに見てみましょう。

 

【設例1】

手持資金:4000万円
取得物件:築23年の中古木造アパート(土地2000万円、建物2000万円) 
賃貸収入:年間320万円 必要経費:年間120万円(減価償却費を除く) 
保有期間:5年間 
売却価額:3000万円 

 

このケースでの1~4年目の不動産所得を計算してみます。

 

賃料収入320万円−減価償却費500万円(2000万円×0.25) −その他必要経費120万円=▲300万円 

 

300万円の赤字となり、事業所得や給与所得等の黒字と相殺することができ、課税の繰延を図ることができます。最高税率55%が適用されると仮定すると、節税額は、660万円(=300万円×55%×4年)になります。 

 

では、5年目はどうなるでしょうか。5年目の不動産所得は、

 

賃料収入320万円−減価償却費0円−その他必要経費120万円=200万円

 

で200万円の黒字となり、最高税率55%が適用されると、税額は110万円になり、課税の繰延が終了しています。

 

さらに、6年目には、

 

売却価額3000万円−約2000万円(土地+建物1円)=約1000万円

 

の譲渡所得が発生し、所得に対して20.315%の税率で課税され、税額は約204万円になります。節税の合計額は、660万円−110万円−204万円=約346万円になります。

 

続けて同額で別の物件を取得した場合の例です。

 

【設例2】

手持資金:4000万円 
取得物件:築23年の中古木造アパート(土地1000万円、建物3000万円) 
賃貸収入:年間320万円 
必要経費:年間120万円(減価償却費を除く) 
保有期間:5年間
売却価額:3000万円 

 

1~4年目の不動産所得は、次のとおりです。

 

賃料収入320万円−減価償却費750万円(3000万円×0.25) −その他必要経費120万円=▲550万円 

 

550万円の赤字となり、課税の繰延を図ることができます。最高税率55%が適用されると仮定すると、節税額は、1210万円(=550万円×55%×4年)になります。

 

そして5年目の不動産所得は、

 

賃料収入320万円−減価償却費0円−その他必要経費120万円=200万円

 

で200万円の黒字となり、最高税率55%が適用されるとすると、税額は110万円になり、こちらも課税の繰延は終了しています。6年目には、売却価額3000万円−約1000万円(土地+建物1円)=約2000万円の譲渡所得が発生し、20.315%の税率で課税され、税額は約407万円です。

 

節税の合計額は、1210万円−110万円−407万円=約693万円になります。 

 

設例1と設例2を比較すると、2の場合のほうが4年目までの赤字額が大きくなることにより、節税額の差が347万円も生じており、節税効果が高いことがわかります。

 

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両者の違いは何かというと、取得した不動産に占める建物価格の割合です。土地と建物を合わせた不動産価格が同じでも、土地は減価しませんので、建物の金額が大きいほうが多額の課税の繰延ができます。大きな節税のメリットを得るには、不動産の取得において、建物割合を大きくとることがポイントなのです。

 

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本連載は、2014年4月25日刊行の書籍『スゴい「減価償却」』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。
本連載の内容に関しては正確性を期していますが、内容について保証するものではございません。取引等の最終判断に関しては、税理士または税務署に確認するなどして、ご自身の判断でお願いいたします。

スゴい「減価償却」

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杉本 俊伸+GTAC

幻冬舎メディアコンサルティング

「減価償却で節税」とはよく聞きますが、課税と節税の仕組みを十分に理解して使いこなせている人は多くありません。 減価償却を活用するポイントは、タックスマネジメントです。タックスマネジメントとは、税額や納付のタイミ…

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