銀行預金が「投資」手段の1つといえる理由

私たちにとって最も身近な「投資」は銀行預金です。今回は、銀行預金が投資につながる仕組みについて見ていきます。

あなたは銀行に「お金」を貸している?

実はほとんどすべての日本人は、お金でお金を生む「投資」をそれとは気づかずに行っています。私たちにとって最も身近な「投資」は銀行などの金融機関です。

 

銀行の口座を持っていない社会人は、存在しないといってよいでしょう。実は、銀行にお金を預けるという行為は、あなたが銀行にお金を貸していることなのです。その証拠に、銀行は預金利息という名目で、利子をつけてお金を返してくれているでしょう。預金利息とは、ひらたくいえばお金のレンタル料です。これが、お金を使ってお金を生む「投資」の日常的なかたちになります。

 

銀行が私たちに対して、預金をしてくださいと広告やキャンペーンを行うのは、お金を貸してください、と言っているのです。なぜ銀行は、そこまでしてお金を集めたがるのでしょうか。それは、銀行自身が「ベニスの商人」に出てくるシャイロックのように金貸し(金融業)を営んでいるからです。

 

金貸し、というとネガティブなイメージになってしまいますが、そもそも金融業は、必要としている人にお金を融通する仕事で、世のため人のためになる大変立派な職業です。なぜなら世の中には、お金を必要としている人がたくさんいるからです。その筆頭が、事業主(会社経営者)です。

 

何らかの事業を起こそうとするときには、初めにお金が必要です。例えば、あなたが「ドラえもん」のタケコプターの原理を思いついたとしましょう。それを実際に製作するためには、試行錯誤の時間だけでなく材料費と工具費が必要です。試作品が完成したとしても、量産するためには工場をつくったり人を雇ったりで、さらに多額のお金が必要になります。あなたが発明したタケコプターを欲しい人に届けたいと思ったら、最初の1台を売る前に何千万円ものお金を調達しなければなりません。

 

工芸品や衣服を製作するような個人事業でも事情は同じです。かつてバングラデシュでは、お金のない貧困層の女性が小作人や下請け労働者として、まるで奴隷のような労働に従事しているという事情がありました。その実態を憂えた経済学者のムハマド・ユヌス氏は、自らグラミン銀行を設立し、彼女たちに無担保でミシンや裁縫道具などを購入する事業資金を貸すことで自立を支援しました。融資によって貧困層を減らしたユヌス氏の功績は高く評価され、2006年にノーベル平和賞が授与されています。

貸し出しにリスクがあればあるほど金利は高くなる

銀行のように、とりあえず使い道のないままに余っているお金を預金として集めて、お金を必要としている人に貸す仕事は世の中には欠かせないものです。そして、銀行業務も仕事であり、人手と時間がかかっている以上、利益を上げなければなりません。どのようにして利益を上げるのかといえば、お金を貸すときに金利(利息)を取ることです。この貸出金利と預金金利との差額が、銀行の利益になります。

 

例えば、私たちが銀行に100万円の定期預金をすると年間で0.1%の金利がつくとしましょう。銀行が100人からそれぞれ100万円を集めると、合計で1億円になります。この1億円をまとめて企業に貸し出します。貸出金利を3.1%とすると、預金金利との差の3%(300万円)が銀行の利益となります。

 

それならば、私たちも銀行を通さず、直接、企業に貸したほうが儲けられるではないかと考えられますが、個人で1億円を用意するのは大変です。また、たとえあなたが1億円を持っていたとしても、それを本当に企業に貸してもいいと思えるでしょうか。相手先企業の業績によっては、返済が滞るかもしれませんし、運が悪ければ事業に失敗して倒産してしまうかもしれません。そうなれば、あなたの1億円はゼロになってしまいます。

 

銀行は、そのようなリスクを背負って資金の貸し出しを行っているために、高い金利を取ることができるのです。一般に金融業界では、貸し出しにリスクがあればあるほど金利が高くなります。なぜなら、リスクの高いところには誰も資金を融通したがらないからです。そのため、相手は金利が高くてもいいからお金を借りたいと思うのです。

 

こうして金利が高くなると、リスクがあっても利益が上がるのでお金を貸してもいいと考える人が出てきます。これを「ハイリスク・ハイリターン」と呼びます。ですから、あなたがこの先何らかの金融商品を見たときに、相場と比較して金利が高いようであれば、それは何らかの理由でリスクの高い商品であると考えることができます。

 

逆に、リスクの低い商品は、まず間違いなく低金利です。これを「ローリスク・ローリターン」と呼びます。私たちが日本国内の銀行に円預金をする場合は、ほぼリスクがゼロとなっています。なぜならば、日本国内の銀行に限っていえば、日本政府が1000万円までの預金は必ず返済すると保証しているからです(正確に言えば、そのような保険をつくって、銀行に加入させています)。

 

ですから、銀行が企業に対する投資に失敗して、貸出資金を回収することができなくなって経営が危うくなり、破綻や倒産の憂き目にあったとしても、日本という国が存続している限り、元本で1000万円までの預金は必ず戻ってくるものと考えていいでしょう。その代わり、預金金利が雀の涙程度のものに抑えられていることは、皆さんご存じの通りです。

本連載は、2014年7月29日刊行の書籍『インフレ時代の投資入門』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載インフレ時代の投資入門

パインブリッジ・インベストメンツ株式会社 代表取締役社長

学習院大学経済学部卒業後、1985年に野村證券投資信託委託入社。日本株式運用、総合企画、秘書室勤務を経て野村アセット・マネジメント・シンガポール、野村ブラックロックで幅広い資産運用ビジネスを経験。その後、メリルリンチ・インベストメント・マネジャーズのディレクターを経て、2002年5月に投資信託本部長としてAIG 投信投資顧問(現 パインブリッジ・インベストメンツ)入社、その後、常務執行役員投資信託本部長を経て、2011年6月から現職。日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介

パインブリッジ・インベストメンツ株式会社 執行役員 グ ローバル・マルチアセット運用部長

慶應義塾大学商学部卒業後、1987 年に三井生命保険入社。1993年より同社英国投資顧問現地法人に勤務し、ロンドン・シティからグローバルな株式・債券投資を行う。その後、スカンディア生命保険、三井住友海上シティインシュアランス生命保険を経て、2004年にAIG 投信投資顧問入社。その後、執行役員 運用本部長兼グローバル・バランス運用部長を経て、2013 年1 月より現職。日本証券アナリスト協会検定会員およびCFA 協会認定証券アナリスト。

著者紹介

インフレ時代の投資入門

インフレ時代の投資入門

杉浦 和也・前野 達志

幻冬舎メディアコンサルティング

仮に今、あなたに1000万円の預金があるとしましょう。安倍内閣が掲げるインフレ目標2%が今後毎年達成された場合、その預金の価値は毎年2%、つまり20万円ずつ目減りしていくことになります。預金の金利はもちろんつきますが、現…

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