「投資に縁のない人はいない」といえる理由

今回は「お金とはそもそも何か」を考察し、私たちが「投資」というサイクルの中にいることを改めて考えてみます。

生活が豊かになったのは「お金」のおかげ!?

そもそも「お金」とは、私たちの生活になくてはならない便利なツール(道具)です。大昔、お金がなかった頃、私たちの祖先は必要なものはすべて自給自足するか、あるいは物々交換で手に入れるしか方法がありませんでした。

 

しかし、物々交換だけの世の中では、商談が成立する可能性がとても低くなってしまいます。例えば、あなたが魚を持っていて、肉と交換したいとしても、肉を持っている人があなたの魚を欲しがっていなければ交換してもらえないのです。そうこうしているうちに魚が腐ってしまっては元も子もありません。

 

そこで、いつでも誰もが欲しがるもので、なおかつ腐らずに保存ができるものが、とりあえずの交換物として使われるようになりました。日本の場合は米が使われました。さて、この場合、あなたの魚を欲しいという人があなたの欲しいものを持っていなくても、とりあえず米と交換しておいて、その米とあなたの欲しいものを交換することができます。これがお金の始まりです。

 

やがて、お金には金(ゴールド)が使われるようになりました。金は安定した金属で、腐食しないので保存がききますし、軽くて持ち運びに便利ですし、光が独特で偽物との判別が容易だったからです。

 

このように、お金というものはまずモノの価値をはかり、流通を助けてくれるツールとして登場しました。お金が誕生したことで、モノとモノを交換するのが容易になり、流通を生業とする商人が現れて、私たちの生活は豊かになりました。私たちがフランスのチーズやブラジルのコーヒーを楽しむことができるのは、お金があるからなのです。

私たちは無自覚のうちに「投資」行動をしている

しかし、お金のもう一つの側面は、私たちの世界に貧富の差をもたらしました。それは貯蔵性です。お金というものは、肉や魚と違って、その価値を減ずることなく貯めておけるものでした。ですから、同じようにお金を稼いでも、さっさと使ってしまう人と、使わずに大事にとっておく人とで、だんだんと手持ちのお金の量が違ってきたのです。

 

そのうちに貯めたお金を有効利用して、さらに大きな富を生み出す人が現れました。有効利用とは例えば、お金の必要な人に貸して利息を取るとか、川に橋をかけて通行料を取るとか、人を雇って畑を耕して生産性を上げるとかです。このようなお金の有効利用を「投資」といいます。「投資」によってお金はさらにお金を生み出すようになりました。

 

ちなみに、「投資」の反対語は「消費」になります。この場合の「投資」とは「お金を生むためにお金を使うこと」で、「消費」とは「ただお金を使うこと」です。

 

ですから、あなたが会社で行っている労働もまた「投資」の一種になります。なぜならば、あなたはあなた自身の身体を資本とする労働力を、会社に提供して給料を受け取っているからです。その労働力は、あなたがお金を使って、食事をしたり英気を養ったり気分転換をしたりして、自分自身の健康状態や精神状態を整えて、初めて提供可能になっているものです。

 

もしお金がなくなったとしたら、私たちは食事にもありつけず、ゆっくりと身体を休める寝床も見つけることができなくなってしまうでしょう。そうなると、労働力を提供してお金を得ることも難しくなります。

 

あなた自身やあなたの家庭を、利益を生み出す会社のようなものであると考えてみれば、住宅の購入もまた「投資」であることが分かります。会社にとって「投資」とは「資本」の購入ですから、あなたが住宅や車を購入することは、会社にとっての設備投資とイコールになります。住宅や車の購入によって、生産性が上がってより大きな利益を生み出すことが期待されているからです。

 

住宅や車というものは、通常は、借金をして(ローンを組んで)購入するというところも「投資」によく似ています。なぜ人が借金をしてまで住宅や車を購入するのかといえば、お金が貯まるまで待つよりも、ローンを組んで先に買ったほうが、支払う金利を上回るほどのメリットが得られると考えるからです。このように、将来のより大きな利益(メリット)を期待して、お金を投じることを「先行投資」と呼びます。

 

以上から分かるように、好むと好まざるとにかかわらず、私たちは自分自身に「投資」をして、そこから得た利益をまた自分自身を活かすための「投資」に回すという、「投資」のサイクルから逃れることはできません。自分は「投資」には縁がないと思っているあなたは、そのつもりはなくても、無自覚のうちに投資行動をしている自分の姿に気づくことから始めましょう。

本連載は、2014年7月29日刊行の書籍『インフレ時代の投資入門』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

パインブリッジ・インベストメンツ株式会社 代表取締役社長

学習院大学経済学部卒業後、1985年に野村證券投資信託委託入社。日本株式運用、総合企画、秘書室勤務を経て野村アセット・マネジメント・シンガポール、野村ブラックロックで幅広い資産運用ビジネスを経験。その後、メリルリンチ・インベストメント・マネジャーズのディレクターを経て、2002年5月に投資信託本部長としてAIG 投信投資顧問(現 パインブリッジ・インベストメンツ)入社、その後、常務執行役員投資信託本部長を経て、2011年6月から現職。日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介

パインブリッジ・インベストメンツ株式会社 執行役員 グ ローバル・マルチアセット運用部長

慶應義塾大学商学部卒業後、1987 年に三井生命保険入社。1993年より同社英国投資顧問現地法人に勤務し、ロンドン・シティからグローバルな株式・債券投資を行う。その後、スカンディア生命保険、三井住友海上シティインシュアランス生命保険を経て、2004年にAIG 投信投資顧問入社。その後、執行役員 運用本部長兼グローバル・バランス運用部長を経て、2013 年1 月より現職。日本証券アナリスト協会検定会員およびCFA 協会認定証券アナリスト。

著者紹介

連載インフレ時代の投資入門

インフレ時代の投資入門

インフレ時代の投資入門

杉浦 和也・前野 達志

幻冬舎メディアコンサルティング

仮に今、あなたに1000万円の預金があるとしましょう。安倍内閣が掲げるインフレ目標2%が今後毎年達成された場合、その預金の価値は毎年2%、つまり20万円ずつ目減りしていくことになります。預金の金利はもちろんつきますが、現…

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