投資目標によって融資を受けるべき金融機関が異なる理由

前回は、いわゆる「融資に強い」不動産業者の選び方について説明しました。今回は、不動産投資における「アパートローン活用」「法人設立」のメリットと、金融機関との付き合い方について見ていきます。

人によっては利用価値が高い「アパートローン」

一部の富裕層の方や賃貸業として実績がある方以外は、パッケージ型のアパートローンを使うケースが多くなります。アパートローンとは不動産投資におけるサラリーマン向けの融資商品で、住宅ローンのように返済比率や年収の何倍までの融資枠など、一定のルールに基づいて融資が出ます。

 

融資の種類にはもう一つ、プロパーローンという形態もあります。これは不動産投資を事業としてとらえ、物件担保評価、属性、金融資産などを総合的に判断して融資の可否が決まります。金融機関固有の融資でもあり、条件は借り手の属性や各金融機関で異なります。

 

私が不動産投資を始めた平成20年頃、不動産投資家の傾向は、「家賃収入○千万円!」「総借入額○億円!」「メガバンク・地銀でフルローン!」といったように規模を競う傾向が強くありました。目標はサラリーマンをハッピーリタイアし、不動産投資で得た利益で悠々自適の生活を送る、そんな感じです。

 

しかし、当社に相談に来られる方の話を聞いていると、最近の傾向は様子が違ってきました。早期リタイアを目指す人は少数派で、本連載のテーマと同じように「私的年金の構築」「経済的不安の払しょく」「本業への集中」などの目的で収益物件を購入したいというニーズがほとんどです。

 

このようなニーズの場合、目指すべきキャッシュフローは本業の年収を基準に考える方が多いです。そして目標キャッシュフローから目標投資金額を決めるわけですが、本業で一定の収入がある方で投資金額が3億円以下であれば、アパートローンを活用するのが有効です。

 

アパートローンのメリットは、「審査スピードが速い」「法定耐用年数を超えた物件の融資が可能でキャッシュフローが得やすい」などです。年収が500万円以上あればアパートローンを利用できるので、サラリーマンの方をはじめ多くの人にとって利用価値は高いでしょう。

プロパーローンは所有金融資産などのハードルも高い

不動産投資を目的に融資を利用する場合、投資目標によって取引する金融機関を変える必要が出てきます。年間キャッシュフロー目標が300万円の投資家と1000万円の投資家では、金融機関を変えたほうがよいということです。

 

これには投資家の属性(個人なのか法人なのか)が関係しています。よくある例でご説明しましょう。

 

<設定条件>

Aさん 45歳 会社員

年収:1000万

自己資金:1000万

投資目標:50歳までに年間500万円の手残り(税引後キャッシュフロー)を得たい

 

Aさんのように比較的短期に一定のキャッシュフローを得たいという投資家は多いです。かなり大雑把に見積もって投資金額の3%が手残りとすると、Aさんの目標の場合、投資総額は1億5000万円程度となります。

 

この前提で不動産ポートフォリオを組むと、1億5000万円という投資総額に向けて、5年間で数回に分けて投資していく戦略が立ちます。たとえば、5000万円のアパートを3棟、もしくは7000万〜8000万円のアパートを2棟、といった感じです。この場合、どのような金融機関から融資を受けるのがいいでしょうか。

 

Aさんの投資目標金額および属性をふまえると、アパートローンを利用して物件を購入していくのが合理的です。Aさんの属性では2億〜3億円の借入は可能となるため、アパートローンによる融資のみで投資総額まで到達できるからです。

 

最近は、優良物件は購入希望者同士の獲得競争に勝ち抜かなければ手に入れることができませんが、審査スピードの速いアパートローンであれば、その点でも有利といえます。

 

では、年間キャッシュフローを1000万円以上、投資規模で3億円以上を目指す方にとって、アパートローンは有効なのでしょうか。アパートローンは個人の年収によるところが大きく、一定金額以上の借入をしてしまうと、それ以上の追加融資を受けることができなくなります。よって、早い段階で地方銀行・信用金庫などのプロパーローンを利用することが必須となります。

 

プロパーローンの良いところは融資金額の上限がない点、物件・属性によってフルローン・オーバーローンが出る点などですが、不動産投資・賃貸経営の経験がない方や、属性が低い方にとってはハードルが高くなります。

 

プロパーローンで融資を受けるには、金融資産、とりわけ現預金をどれだけ保有しているかが一つの評価になります。また、1億円を超える借入の際には、多くは法人融資が前提となります。

 

このように、投資家の方それぞれの目標によって最適な金融機関を選定し、融資を受けることで、目指すべき地点まで最短で到達できるようになります。

融資引き出しの面でもメリットがある「資産管理法人」

地方銀行・信用金庫などでプロパーローンを利用する場合は、法人を設立する必要が出てくるのは先ほどご説明した通りです。これは、多くの金融機関が法人向け貸し付けを融資の原則としているからです。

 

個人向け貸し付けには、住宅ローンやマイカーローン、消費者ローンなどがありますが、やはり主力は法人貸し付けとなります。とくに、アパート・マンション向けの融資は、一回あたりの金額が大きいこともあり、当社がある関西圏でも積極的な金融機関が多くあります。

 

さて、事業法人を持っていない方の場合、資産管理法人を作り融資を受ける必要がありますが、融資の面以外でも法人設立のメリットがあります。一番は税金面です。

 

個人の場合、所得1800万円以上の所得税・住民税率は50%、平成27年度からは所得4000万円以上は55%となります。一方、法人の場合、詳細は省きますが実効税率は約36%となります(資本金1億円以下の普通法人の場合)。よって、もともと個人の給与所得が高い方であれば不動産所得を得ることで、すぐに最高税率に到達してしまうことになりかねません。

 

個人所得が高い方や、不動産投資規模を大きくしていきたい方は、資産管理法人を設立することで、節税を図りながら、事業の拡大を目指すことが大切となります。

 

その他、個人で収益物件を所有している方でも、法人を設立し、その方自身が代表の法人に賃貸管理を任せて、一括借り上げ(サブリース)をする仕組みを作ることで、個人の不動産所得を法人に一部分けることができるため、トータルで節税を図ることも可能です。

 

また、法人で決算を行うことができ、将来の法人所有で融資を受ける下準備をすることも可能です。税金の面や融資の面でも、法人を上手に活用することが不動産投資を行う上で、今後より大切になっていくことでしょう。

本連載は、2014年11月4日刊行の書籍『はじめての不動産投資 成功の法則』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

藤原 正明

大和財託株式会社 代表

昭和55年生まれ。三井不動産レジデンシャル株式会社を経て、収益不動産に特化した事業を展開する武蔵コーポレーション株式会社で収益不動産の売買仲介および賃貸管理業務についての実務経験を積む。
平成25年に独立して大阪市内に大和財託株式会社を設立。
収益不動産を通じて、購入から運用・売却まで一貫した資産形成をサポートしている。
特に、物件情報をすべて数値化し、資金調達、物件購入、管理運用から売却までを視野に入れた収支シミュレーションに定評がある。
管理物件の平均入居率は98パーセントを誇る。

著者紹介

連載「中古一棟買い」で成功する不動産投資

はじめての不動産投資成功の法則

はじめての不動産投資成功の法則

藤原 正明

幻冬舎メディアコンサルティング

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